蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

引かれ者でござい

2015年02月18日 | 本の感想
引かれ者でござい(志水辰夫 新潮文庫)

時代劇ものはほとんど読んだことがないのだが、飛脚を主人公にしたシリーズというのは珍しいのではないかと思う。
本書は「蓬莱屋帳外控」というシリーズの第二弾で3つの独立した短編が収められている。蓬莱屋というのは飛脚の元締のようなもので、三編ともに主人公は蓬莱屋に雇われた飛脚である。飛脚だから武器は持っていない。従って時代劇に付きものの悪役が登場しても対抗する方策はひたすら逃げることのみで、アンチクライマックスなことこの上ない。
それでも本書を読んで楽しかったのは、テーマが勧善懲悪ではなくて、江戸時代の旅行を描くことにあると思えたからだ。
特に「旅は道連れ」の、吊り橋を懸ける場面が興味深かった。

「行きずりの街」をはじめ志水さんが書いたミステリ系の著作はほとんど読んでいるが、時代劇は初めて。
どんなジャンルを書いても「うまいなあ」と思わせてくれるテクが、かえって仇になっているような気もする。技巧のレベルが高すぎると、どうしても「ウケ狙いなのかな」なんて邪推してしまうので・・・


コメント
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