蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ファイナル・ターゲット

2015年02月05日 | 本の感想
ファイナル・ターゲット(トム・ウッド ハヤカワ文庫)

遠距離狙撃でも近接戦闘でも爆発物取扱いでも何でもござれという、ジェイソン・ボーンやデューク東郷も真っ青のスーパー暗殺者ヴィクターは、CIAから仕事を請け負わざるを得ない状況にある(その理由は前作「パーフェクト・ハンター」に書かれているらしいが未読)。CIAは不可解な命令を次々にヴィクターに下すが・・・という話。

登場人物の感情はほとんど描かれず、ストーリーは単純で、アクションシーンの連続。かなり複雑なアクションであるにもかかわらず、かつ、武器等の薀蓄が滔々と語られるにもかかわらず、乾いた客観的筆致が心地よくて、最後まで楽しく読めた。(多少、訳がこなれていない感じはあるが・・・)

強烈な自己保存本能を持つ殺人マシーンのようなヴィクターが、終盤でなじみのコールガールにちょっとだけ情けをかけてしまうシーンが唯一の心暖まる?場面。
この設定自体はありきたりだが、自分の生存のためには一切の妥協も隙も許さないはずの男:ヴィクターに、ついには迷いが生じてしまう、という心理描写が(心理や感情の直接描写は一切ないのに)うまく表現されていて感心した。

コメント
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