蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

あるじは秀吉

2014年08月11日 | 本の感想
あるじは秀吉(岩井三四二 PHP文芸文庫)

秀吉の縁者や部下の視点から、秀吉が権力を握っていく過程で、人格や態度が変わっていく様を描いた連作集。

「堀尾茂助は秀吉に鬼とよばれた」がよかった。
中国攻めの途中、秀吉軍は別所氏の寝返りにあって苦戦を強いられる。別所氏の支城をせめるが、小規模なのに池や沼に囲まれた城に手こずる。何度も撃退されて味方についていた地元の土豪たちの士気は落ちる。弱気が充満した軍議の中で、部下からは「仏の茂助」とよばれていた堀尾茂助は、秀吉の腹を読んであくまで力攻めの続行を主張する・・・という話。
秀吉の土壇場でのリーダーシップが、「きっとこうだったんじゃないか」と思わせるようにうまく描かれていた。

他の6編は、いずれも中盤までのストーリー展開はとても面白いのだけど、どういうオチになるのかな・・・と楽しみにしていると、ラストはあっけないというか、あまりヒネリが効いているとは言いがたいような終わり方のものが多かった。
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子どもの心のコーチング

2014年08月11日 | 本の感想
子どもの心のコーチング(菅原裕子 PHP文庫)

①子どもは、叱られたり、命令されることに慣れてしまうと、主体的に人生を切り開いていく能力が身につけられない。

②子どもを叱りつけるのは、教育やしつけというより、親が子どもが自分の思い通りに動いてくれないこと等に対して怒りをぶつけているにすぎない。子どもに指示や命令をすることはやめ、子どもを観察し、方向づけの枠組みを作り、その枠組みに沿った行動をした場合に、(単に褒めるのではなく)共感、あるいは子どもの貢献に対する感謝を伝えるべき。

③「きき耳をたてる」技術が大切。これは、子どもの発言に対してまずはそのまま繰り返すことにより、子どもの真意を引き出し、問題の解決案を子どもに出させ、比較検討させ、対策を決めさせるプロセスを言う。
(読んだのは、2012年6月)

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姉川の四人 信長の逆切れ 

2014年08月11日 | 本の感想
姉川の四人 信長の逆切れ (鈴木輝一郎 毎日新聞社)

読んだのは約一年前。実家へ帰省する新幹線の中で読んだ。すらすらと楽しく読めた。


タイトルには「信長」が入っているが、実質的な主人公は家康。
日頃、心身の鍛錬を怠らず、家中の統率に絶えず気を配る典型的戦国武将である家康に対して、戦をやる気がない秀吉とその配下たち、神出鬼没で何を考えているのかわからない信長を、対照的なエキセントリックな人物として描くというのは、ステレオタイプといえばそれまでだが、かなりオーバー目にキャラを立てることで面白く読ませている。

本書の中で披露される、次のような家康の死生観はなかなか興味深い。
昔の人からみれば王侯貴族のような生活を誰もがしている現代日本人はただひたすらに「死」が怖いが、生き続けることが苦しみの連続であったかもしれない戦国時代にあっては、「死」も悪いものではない、と考える人が多かったのかもしれない。

***
命は「なにかのために使うもの」という道具であって、守り通すものだという発想そのものが、家康にはなかった。ふつうの戦国武将にとってもそうだろう。
――――要するに、根本的に秀吉は武将ではないのだ―――
とは、おもうものの、どう説明したらいいのか、家康にはわからない。
「死んだら死んだで楽でよかろう」
「そんな・・・」
「死んだら明日の心配をせずにすむ。税もない。空腹もない。病気もない。死んでしまえば死ぬ心配もない。死んだ奴が生き返った話を聞いたことがないんで、極楽浄土はよほどいいところなんだろう」
***

一方、敵役の浅井長政はやたらとカッコ良く、理想の武将として描かれる。長政を主人公にした小説もあったように思うので、著者の好みの人物なのかも。

あと、歴史的薀蓄を傾ける箇所がけっこう多いのに、ストーリー(や信長・長政の行動)があまりにも現実離れしているので、ちょっとアンマッチな感じがした。
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