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偏愛と放浪の記録

「the TEAM ザ・チーム」(著:井上 夢人)

2013-09-20 22:03:58 | 【書物】1点集中型
 装丁が眼に留まり、井上夢人作品ということで気になってあらすじを見てみると、わりに軽いタッチの作品のようだったので、久々にそういうのも読んでみるかと思って借りてみた。
 TV番組で自身のコーナーを持ち相談も受けている「霊導師」能城あや子――の能力を卓越した調査能力によって支える3人のスタッフ――の物語。調査チームは相談者の抱える悩みの原因を、アウトローな方法も辞さない徹底的な調査であぶり出し、気づけば最後には「能城あや子」の力でひとつの事件が解決されるような格好になる。結果的には一風変わった探偵事務所のお仕事みたいなものだ。そんな事件の短編集である。

 能城あや子は「霊導師」を名乗りつつ、実は霊能者でもなんでもない。それどころか、霊の存在すら本人は信じていない。ただ、相談されたことは結果的に(世に出ない)チームとしてきっちり解決している。その傍ら、そんな能城あや子の「能力」をインチキだと直感して身辺を探り、化けの皮を剥がしてやろうとする「敵」もいる。でも「チーム能城あや子」は、そんな敵の動きも視聴者の悩み相談と同様におまけをつけて返してやる。
 ただ、能城あや子の過去を知る人物が現れるに至り、最後は「潮合い」とばかりにチームはあっさり姿を消してしまう。まるで最初から存在しなかったかのように痕跡を拭い去って。

 個々のストーリーは家族の人間関係が中心になっていて、調査の過程で、ある事件によってすれ違ってしまった感情や、逆に愛憎が引き起こした事件が見えてくる。それを見つめるチームの眼がとても人間らしいし、それが読者の気持ちを代弁するものにもなっていると思う。悩みや躓きは多かれど、せめて心だけは平穏に生きていきたいという願望。私だけか?(笑)
 だからどちらかというと勧善懲悪もの。義賊ものかな? チームがなくなってしまって寂しさは残る結末だけど、後味はすっきり、楽しく読める作品。シリーズとしては短いのだが、B級ドラマに仕立てると面白そう。


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