高倉健が死んだ。
この人の映画では、僕は「駅」が一番好きだった。
今でもそのDVDを大切に持っている。
「駅」の最後のほうで、大晦日、飲み屋のカウンタで、健さんと、女将の賠償千恵子が、2人っきりで、テレビで紅白歌合戦を見るシーンがある。僕にとっては、一生忘れられないシーンだ。
2人のあいだに言葉はない。堅物(かたぶつ)で不器用な健さんが、賠償千恵子の肩をそっと抱きながら、じっとテレビの紅白歌合戦を見ている。あの、まったく台詞のない、長い長いシーンは、僕は、たぶん日本映画の中でも、最高の名シーンの一つではないかと思っている。
その映画の中の紅白歌合戦には、八代亜紀の「舟歌」やジュディオングの「魅せられて」、小林幸子の「おもいで酒」などが出ていた。その頃の映画だった。
本当によかったなぁ あの映画。