久しぶりに泣いた。
両親に残した郵便貯金通帳に走り書きされた「遺書」、そして高知市長宛の戦没者通知のページを見たときだった。
これまで残酷な戦場をリポートした本を何冊も読んできた。
映像でもみることがあった。
悔しさや、憤りや、虚しさや、恨めしさや、さまざまな感情が渦巻くことはあっても、涙はこぼれなかった。
ところが、可愛らしい兵隊さんの訓練や日常を丁寧に描いた『まんが少年、空を飛ぶ』ページを一枚ずつめくりながら、優しい気持ちになっていただけに、突きつけられた現実の死に、全ての感情が停止して、ただ涙がボロボロとこぼれたのだ。
8月15日数日前に、 NHKニュースでこの本のことを知った。
著者は大戦末期に特攻隊員だった山崎祐則さん。100通を越す絵手紙を実家や親族宅に送った。
その手紙をまとめた本である。
遺品や漫画や手紙を展示公開する催しが、15日まで高知市で開かれていることも知った。
実際に、この目で確かめたかった。
飛行機の予約状況を検索した。三席空席ありを見つけた。
しかし、折から台風が接近している。もしかすると高知に直撃か、というような進路予想だった。
お盆ということもあって、泊まるところもないかもしれない。
泣く泣く諦めた。
でも、気持ちはおさまらない。
鬱憤を晴らすために、鰻の蒲焼でも食べに行こうか、などと思いもした。
「待てよ!」
アマゾンを検索。
ようやく、一週間以上が過ぎた、昨日、本が届いたのである。
予想をはるかに超えた素晴らしい出来栄えである。
丁寧に、心を込めて、抜かりなく、隅から隅まで配慮された一冊である。
これほど魂がこもった本を今まで手にとったことはない。
何千語、何万語を費やしても伝えきれない出来栄えである。
「見ていただくしか、あるまい」
本日、朝日カルチャー「野口体操講座」に持参します。
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