11月9日の朝日カルチャー「野口体操講座」のテーマは「世界の砂」だった。
世界地図の上に1・5センチ四方の袋に砂を入れた標本を貼付けたもの。 海砂、川砂、宝石砂、火山の砂等々で、全部で50カ所ほどになる。
日本の宝石学を代表する故近山晶先生にいただいた砂も多く入っていて、ご指導もいただいて作り上げた。制作したのは芸大の油絵科卒の美術家・鳥山晃さんによる。
砂から始めた「石」のテーマ、二回目の昨日11月16日は、「こんにゃく体操」と呼ばれる野口体操に因む「こんにゃく石」をテーマにした。
控え室のロッカーにしまってある”双眼実体顕微鏡”を準備して、二種類の「こんにゃく石」と「白砂」と「白い鳴き砂」を見てもらった。砂の大きさとの比較で、数百ミクロンのこんにゃく石の粒子の細かさが比較できる。クラックがなんとなく見える、という方までおられた。
この双眼実体顕微鏡は、ズームに拡大しても8倍程度だが、それでも肉眼で見る世界とはまったく異なった空間へと人の感覚を運んでくれる。
では、ここに用意した「覚え書き」を記録しておきます。また、本日の朝日カルチャーの「野口体操講座」日曜クラスでも、見ていただこうと思っています。
********
「こんにゃく石」の正式名称は、「イタコルマイト(itacolmite)。
名前の由来は、ブラジルのミナス・ゲライス州イタコルミ(itacolmi)山から産出したことによる。
17世紀にはヨーロッパに持ち込まれた記録がある。
石の性質は、数百ミクロンの石英粒子とマイクロクラック(隙間)が、三次元的に絡み合う微構造、つまりジグソーパズルのような状態である。このクラック(隙間)は、体積の10%もあり、数百ミクロンの二酸化珪素・石英質の粒が移動することができ、そのことで「こんにゃく」を思わせる“撓み・曲がる”という可撓性を見せる。別の言い方をすると「フレキシブル・ストーン」とも呼ばれる。日本名は、「白雲母石英砂片岩」。
このことによって、石としての加工のしやすさから、壁材、屋根瓦などの建材としても古くから使用されてきたらしい。
次に産地はだが、ブラジルの他にアメリカのアパラチア山脈、インド、ロシアが挙げられている。
インドのものは石英質砂岩、ブラジルとアパラチアは変成作用を受けた石英岩(雲母石英片岩)といった違いがある。因みに、光に輝く雲母が、美しいのである。
「積水化学工業」のホームページによると、この「こんにゃく石」の構造をヒントにセラミックがつくられることが書かれていた。一部を抜粋しておきたい。
《熱膨張率の高い鉱物と低い鉱物を粉にして焼き固め、冷却、その膨張差からこんにゃく石同様のクラックをつくり出すことに成功し、ついに曲がるセラミックが誕生した。現在では、クラック部分を柔らかなポリマー樹脂で埋めて、柳のようにしなやかさと強靭さを併せ持つ「人工靭(じん)性セラミック」へと発展しようとしている。地球創成のメカニズムから学んだ新材料は、のこぎりで切ることもでき、気孔構造により熱伝導率も高く、保温性に富む。木材を代替えする床材や浴室のタイルへの活用、内部クラックが外部からの応力も緩和するような地震などに強い建物の基礎や建築材料としても、さらなる改良と活躍が期待されている。(名古屋工業大学セラミック基盤工学研究センター 太田敏孝教授)》
現地ブラジルのオルト・プレート地区の地下の大部分を構成する石は「こんにゃく石」である。
この石は建材として広く利用されるので、この地域の産業を支える重要な資源となっている。
また、この街では厚さ2センチほどの石を積み重ねた壁や屋根瓦、加工しやすく柔らかい特性をいかして窓枠のアーチ部分など、古くから建材として利用されてきたという。近隣の街では、このような特徴的な建物をあちこちでみることができる、と書かれている。
で、この地域では「街が光る」という不思議な現象が起こると囁かれていた。
この現象は「こんにゃく石」が原因と判明した。つまり、「ルミネッセンス現象」というわけだ。
《石に強い力で圧を加えると、石の主要構成物質でもある水晶の帯電しやすい特徴によるものと言われている。(積水化学 自然に学ぶ研究事例より)》
ルミネッセンス現象には、生物発光あり、紫外線による光ルミネッセンスあり、その他に鉱物の摩擦ルネッセンス等が知られている。たとえばメキシコとアメリカ南西部をまたがって流れるリオ・グランデ上流に暮らすプエブロ・インディアンは雨乞いの祭の期間、雷をまねて太鼓を打鳴らし、白色石英の切れ端を擦り合わせて電光に似た光を出して祈りを捧げたという。
人間と鉱物は古くから深い関係を築き、そして現代ではその構造をヒントに新しい素材がつくられている。
私たちの暮らしの中には、気づかぬうちに鉱物が形を変えて役立ってくれているのかもしれない。
「こんにゃく体操」という別名を持つ「野口体操」は効果目的はうたわないが、きっと誰かのもとで大切に育てられ、活かされ、その人の生きる支えになっているかもしれない。そうあってほしいなぁ~、と願っているのは、私だけではないと思うのだが……。
「石は語り 石に貞く」お話でした!
世界地図の上に1・5センチ四方の袋に砂を入れた標本を貼付けたもの。 海砂、川砂、宝石砂、火山の砂等々で、全部で50カ所ほどになる。
日本の宝石学を代表する故近山晶先生にいただいた砂も多く入っていて、ご指導もいただいて作り上げた。制作したのは芸大の油絵科卒の美術家・鳥山晃さんによる。
砂から始めた「石」のテーマ、二回目の昨日11月16日は、「こんにゃく体操」と呼ばれる野口体操に因む「こんにゃく石」をテーマにした。
控え室のロッカーにしまってある”双眼実体顕微鏡”を準備して、二種類の「こんにゃく石」と「白砂」と「白い鳴き砂」を見てもらった。砂の大きさとの比較で、数百ミクロンのこんにゃく石の粒子の細かさが比較できる。クラックがなんとなく見える、という方までおられた。
この双眼実体顕微鏡は、ズームに拡大しても8倍程度だが、それでも肉眼で見る世界とはまったく異なった空間へと人の感覚を運んでくれる。
では、ここに用意した「覚え書き」を記録しておきます。また、本日の朝日カルチャーの「野口体操講座」日曜クラスでも、見ていただこうと思っています。
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「こんにゃく石」の正式名称は、「イタコルマイト(itacolmite)。
名前の由来は、ブラジルのミナス・ゲライス州イタコルミ(itacolmi)山から産出したことによる。
17世紀にはヨーロッパに持ち込まれた記録がある。
石の性質は、数百ミクロンの石英粒子とマイクロクラック(隙間)が、三次元的に絡み合う微構造、つまりジグソーパズルのような状態である。このクラック(隙間)は、体積の10%もあり、数百ミクロンの二酸化珪素・石英質の粒が移動することができ、そのことで「こんにゃく」を思わせる“撓み・曲がる”という可撓性を見せる。別の言い方をすると「フレキシブル・ストーン」とも呼ばれる。日本名は、「白雲母石英砂片岩」。
このことによって、石としての加工のしやすさから、壁材、屋根瓦などの建材としても古くから使用されてきたらしい。
次に産地はだが、ブラジルの他にアメリカのアパラチア山脈、インド、ロシアが挙げられている。
インドのものは石英質砂岩、ブラジルとアパラチアは変成作用を受けた石英岩(雲母石英片岩)といった違いがある。因みに、光に輝く雲母が、美しいのである。
「積水化学工業」のホームページによると、この「こんにゃく石」の構造をヒントにセラミックがつくられることが書かれていた。一部を抜粋しておきたい。
《熱膨張率の高い鉱物と低い鉱物を粉にして焼き固め、冷却、その膨張差からこんにゃく石同様のクラックをつくり出すことに成功し、ついに曲がるセラミックが誕生した。現在では、クラック部分を柔らかなポリマー樹脂で埋めて、柳のようにしなやかさと強靭さを併せ持つ「人工靭(じん)性セラミック」へと発展しようとしている。地球創成のメカニズムから学んだ新材料は、のこぎりで切ることもでき、気孔構造により熱伝導率も高く、保温性に富む。木材を代替えする床材や浴室のタイルへの活用、内部クラックが外部からの応力も緩和するような地震などに強い建物の基礎や建築材料としても、さらなる改良と活躍が期待されている。(名古屋工業大学セラミック基盤工学研究センター 太田敏孝教授)》
現地ブラジルのオルト・プレート地区の地下の大部分を構成する石は「こんにゃく石」である。
この石は建材として広く利用されるので、この地域の産業を支える重要な資源となっている。
また、この街では厚さ2センチほどの石を積み重ねた壁や屋根瓦、加工しやすく柔らかい特性をいかして窓枠のアーチ部分など、古くから建材として利用されてきたという。近隣の街では、このような特徴的な建物をあちこちでみることができる、と書かれている。
で、この地域では「街が光る」という不思議な現象が起こると囁かれていた。
この現象は「こんにゃく石」が原因と判明した。つまり、「ルミネッセンス現象」というわけだ。
《石に強い力で圧を加えると、石の主要構成物質でもある水晶の帯電しやすい特徴によるものと言われている。(積水化学 自然に学ぶ研究事例より)》
ルミネッセンス現象には、生物発光あり、紫外線による光ルミネッセンスあり、その他に鉱物の摩擦ルネッセンス等が知られている。たとえばメキシコとアメリカ南西部をまたがって流れるリオ・グランデ上流に暮らすプエブロ・インディアンは雨乞いの祭の期間、雷をまねて太鼓を打鳴らし、白色石英の切れ端を擦り合わせて電光に似た光を出して祈りを捧げたという。
人間と鉱物は古くから深い関係を築き、そして現代ではその構造をヒントに新しい素材がつくられている。
私たちの暮らしの中には、気づかぬうちに鉱物が形を変えて役立ってくれているのかもしれない。
「こんにゃく体操」という別名を持つ「野口体操」は効果目的はうたわないが、きっと誰かのもとで大切に育てられ、活かされ、その人の生きる支えになっているかもしれない。そうあってほしいなぁ~、と願っているのは、私だけではないと思うのだが……。
「石は語り 石に貞く」お話でした!
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