羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

山の霊気

2005年10月13日 07時51分27秒 | Weblog
 会場まで車で20分ほど。
 市内を抜けると、田畑が広がっている。
 しかし、山が接近しているので、専業農家は少ない様子が、窓から見える。
 近年、このあたりは大阪のベッドタウンとして開発され、ますます田畑が失われているという。
 
 確かに、家並みをみると、みごとにつくりが分かれている。
 古い家は重厚な瓦屋根に、塀にまで瓦を載せ、庭には松や柘植、山茶花や椿、実のなるもの等々、植栽されている樹木はみな一様に手入れが行き届いている。
 とりわけみごとな懸崖の松ノ木が門の脇に張り出している家があった。
「造園」と看板が出ている。
「なるほど」と、合点がいく。
 
 新しく建てられた家々は、それとは反対に庭木もなく、瓦もなく、東京近郊のベッドタウンの町にある家のつくりとまったく変わらない。

 そうこうするうちに小さな川をわたると、曲がりくねった山道にさしかかる。
 「高岳館」と呼ばれるセミナーハウスは、山の中腹にある。
 ここは、霊仙寺という地名だ。
 日光の「いろは坂」とまでは行かないが、右に左にカーブを切って、数分で目的の会場に到着した。

 降り立つと山の霊気が、からだを包んでくる。
 秋のひんやりした空気は、湿気がなく、さらりとしている。

 会場は昨年同様に、会議室である。床はフローリング。天井も高く、左右に開放された黒枠のサッシュは大きい。部屋の広さは200畳はゆうにある。

 東京を発つときからイメージしていた使い方をしたい。
 現実に部屋の真ん中に立ってみると、より一層その思いが強くなる。
 昨日から、細やかな配慮をしてくださる関西大学の田村典子先生が近寄ってきた。
「おはようございます。打ち合わせ通り、椅子を並べてよろしいですね」
「立ったり腰かけたりもしますから、すこしゆったりと間を空けて、円形に並べてていただきたいの」
 
 すでに会場に到着している参加者も加わって、椅子が運び込まれた。
 開け放たれた空間には、山の木々の香が風によってほのかに運ばれてくる。

 準備は、完了。

「椅子に座るの?」 
 参加者が、遠巻きに部屋の隅に腰をおろして資料を読んだり、ストレッチをしたりしながら、時間をやり過ごしている。
 表情は、皆、穏やかだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 透かされる雲 | トップ | もののけ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事