電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

桐山勝『万年筆国産化100年』を読む

2012年12月28日 06時05分15秒 | -ノンフィクション
図書館で、偶然に桐山勝著『万年筆国産化100年』(三五館刊)を見つけ、借りてきて読みました。「セーラー万年筆とその仲間たち」という副題を持つ単行本で、セーラー万年筆が1911(明治44)年に創業してから100年になるのを記念して、同社の歴史を中心としながら、他社をも含めて万年筆の歴史や魅力を紹介したものです。本当はビジネス書ということになるのでしょうが、当方はほぼ完全に万年筆に関するうんちく本として読み、じゅうぶんに満足することができました。
本書の構成は、次のようになっています。

第1章:行列ができる匠たち
第2章:有田焼万年筆の衝撃
第3章:万年筆の歴史をつくった人びと
第4章:万年筆国産化前夜
第5章:国産万年筆誕生
第6章:国産万年筆の伝説を追う
第7章:販売現場の熱風録~三位一体の精神
別章:全長14センチの小宇宙~万年筆の基礎知識

第1章は、ペン先職人親子やペンドクター、インクブレンダーなどの紹介です。田舎暮らしの当方にはご縁の薄い方々ながら、へぇ~、ほぉ~と感心することしきりです。
第2章では、洞爺湖サミットにおける有田焼万年筆とその開発の経緯を紹介しつつ、万年筆と国際会議等のうんちく話を盛り込んでいます。
第3章から第6章までは、万年筆の歴史と国産化以降の隆盛と退潮、そして最近の復活の機運などが語られます。ここは、読んでいてたいへんおもしろいところで、とくに戦後の製品やコマーシャルなどは、まさに同時代に生きてきただけに、けっこう見覚えのあるものがあります。
第7章は、現代の販売をめぐる状況を中心に、愛好家たちの交流や工場見学プログラム、ショップの特色なども紹介されます。
最後の別章は、万年筆の構造と名称を中心とする基礎知識です。本書の性格からか、インクの充填のしかたや水洗いのしかた、保管時の留意点などは割愛されていますが、口絵の図解を参照しながら、おもしろく読みました。

万年筆についての実用的な知識を求めるには不向きですが、万年筆の歴史とその周辺に興味を持つ人には有益な、得がたい良書であると感じます。セーラー万年筆の製品は、あいにく学生時代にキャンディの茶色を一本購入し、ブルーブラックで使っていただけですが、それでも面白く興味深く読みました。


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2 コメント

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お尋ねします。 (山猿おばさん)
2013-01-26 13:24:35
その本に国産で「モリソン」という万年筆の事はのっていましたか?
常に利用している図書館にも蔵書と検索しました。

古いガラスペンとインクビンを集めています。
ガラスペン先の万年筆もあるそうです。

万年筆は集めている訳ではありませんが。
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山猿おばさん 殿 (narkejp)
2013-01-27 06:59:16
お尋ねの件、はて、細部は記憶にありません。セーラー、パイロット、プラチナ以外にも、国産万年筆メーカーがあったことは紹介されていましたが、具体的なことは忘れてしまいました。図書館等で見つかるといいですね。
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