電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

五日市哲雄・久保田博南『おもしろサイエンス・大豆の科学』を読む

2024年04月18日 06時00分54秒 | -ノンフィクション
先日、図書館から借りてきた本で、五日市哲雄・久保田博南著『おもしろサイエンス・大豆の科学』を読みました。若い頃に岩波新書で中尾佐助著『栽培植物と農耕の起源』を読み、興味を持っていたこともあり、岩波新書で山本紀夫『ジャガイモのきた道〜文明・飢饉・戦争』(*1)を面白く読みましたが、今回は「大豆」の話です。

大豆は、たぶん豆腐や納豆などと一緒に、中国から渡ってきた食べ物なのだろうと漠然と考えていましたが、本書のカバーを見たらどうも違うらしい。そこで内容に興味を持ち、借りてきて読み、備忘録ノートに気づいた点をメモしてみたという次第。本書の構成は、次のようになっています。

第1章 大豆っていったいどんなもの?
第2章 大豆と栄養素のすばらしき関係
第3章 ちょっと驚く大豆の食品としての機能性
第4章 大豆を発酵させれば日本伝統の食品になる
第5章 大豆を加熱する、搾る、添加物を使って加工する
第6章 これからの大豆食品

内容的には、「おもしろサイエンス」というシリーズ名のとおり一般向けに書かれたもので、専門的なレベルの高いものとは違いますが、最近の知見を加えながら上手にまとめていると感じます。以下、私が興味を持った内容です。

  • 青森県の「三内丸山遺跡」で大豆栽培が判明して以降、日本各地の縄文遺跡で1万数千年前から大豆が食べられていたことがわかった。
  • 日本の大豆の自生種子の存在が確認され、大豆の野生種としてツルマメの自生も確認された
  • 自生ヤブツル小豆やツルマメ等の豆類は、縄文人の大事な食料資源、クリの栽培だけでなくマメの縄文農耕の存在
  • 大豆は自家受粉できる。雄しべと雌しべを持つ両性花で、虫媒花でも風媒花でもない
  • 品種として(1)夏大豆(2)中間大豆(3)秋大豆の3種類あり、寒冷地では春に種まき、夏に育ち、秋に収穫する早生種の夏大豆が適する
  • 大豆と枝豆の違いは、大豆の成長過程で枝豆が収穫できる。枝豆は未成熟な大豆のことで、栄養面では大豆が優れるが、枝豆は葉酸が豊富で緑黄色野菜の特徴も持つ
  • 大豆の加工食品(1)蒸す・煮る(発酵させて味噌、醤油、納豆、そのまま煮て煮豆)、(2)しぼる(豆乳、おから、加熱し固めてゆば、豆腐、揚げて厚揚げ、がんもどき、油揚げ)、(3)炒る(炒り大豆、きなこ)、(4)油を搾る(大豆油、大豆ミール)
  • 大豆は根粒菌と共生、窒素固定を行い、タンパク質が豊富、必須アミノ酸を全部含む食品
  • 大豆の種類は(1)黄大豆(味噌、納豆などの原料)、(2)緑大豆(山形県の秘伝など寒冷地に)、(3)黒大豆(煮豆、丹波黒など)、(4)赤大豆(煮豆、旨味)、(5)紅大豆(山形県、希少種)、(6)茶大豆(山形県のだだちゃ豆など香り、枝豆に適する)、(7)白大豆

なるほど、縄文時代から自生している豆を利用していたのですね。そう言えば、白米に大豆を入れて炊く豆ごはんは個人的に大好物です。グリーンピースではなく、やっぱり大豆がいいですね。そして麹さえ入手できれば手作り味噌は作りやすく美味しい。しかし醤油は難しいと感じます。工程が多く、また複雑です。そう簡単なものではないようです。

(*1): 山本紀夫『ジャガイモのきた道』を読む〜「電網郊外散歩道」2020年11月


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数理軸受設計 (グローバルビジネスマン)
2024-04-20 16:09:40
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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