電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第297回定期演奏会で芥川也寸志、シベリウス、ブラームスを聴く

2021年11月22日 06時45分54秒 | -オーケストラ
晴天に恵まれ雪囲いに精を出した日曜の午後、山響こと山形交響楽団の第297回定期演奏会に出かけました。今回のプログラムは、

  1. 芥川也寸志:弦楽のための三楽章「トリプティーク」
  2. シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 二短調 作品47 辻彩奈(Vn)
  3. ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 作品98
     阪 哲朗 指揮 山形交響楽団

というものです。会場に到着してホールに入ると、西濱秀樹事務局長と指揮者の阪哲朗さんのトークが始まっていました。それによれば、コロナ前の予定ではペーター・ヤブロンスキーさんのピアノでチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番がプログラムされていたのでしたが、新型コロナウィルス禍の影響で来日が困難となり急遽プログラムを変更することになりましたが、そこで名前があがったのが辻彩奈さん。まだ記憶に新しい今年の1月、第289回定期演奏会でプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番の素晴らしい演奏を聴いたばかり(*1)でした。同じ年の内にもう一度ぜひ!ということで実現したのだそうです。

さて、ステージ上には山響の弦楽セクションが勢揃いです。向かって左から、第1ヴァイオリン(10)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、第2ヴァイオリン(8)の対向配置で、コントラバス(4)は左後方、第1ヴァイオリンの奥になります。コンサートマスターは髙橋和貴さん。作曲者の芥川也寸志さんは、昔、NHKテレビのN響アワーの名司会者としての印象が強く、とてもオシャレでダンディな紳士と記憶していますが、実は作家の芥川龍之介の三男なのだそうですね。
その芥川也寸志作曲:弦楽のための三楽章「トリプティーク」は、第1楽章:アレグロ、ダイナミックで活力ある音楽です。第2楽章:アンダンテ、叙情的な音楽ですがいろいろ面白い効果もあって、例えばヴィオラの胴をたたくことで和太鼓のバチで胴を打つような効果を出しています。第3楽章:プレスト、再び速いテンポで始まります。山響の弦楽セクションの魅力をいっぱいに開いたような演奏でした。芥川也寸志さんの曲も、いい曲ですね!

続いて、シベリウスのヴァイオリン協奏曲です。ステージ上には、10-8-6-6-4 の弦楽5部に加えて、正面中央奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その後方にクラリネット(2)、ファゴット(2)、最奥部にトランペット(2)、トロンボーン(3)、右側奥にホルン(4)、左奥にはティンパニという配置です。20世紀初頭という作曲の年代から、楽器は現代のものを使用しているようです。
指揮の阪哲朗さんとヴァイオリン独奏の辻彩奈さんが青緑色のドレスで登場、聴衆も大きな拍手で迎え、期待の高さがうかがえます。第1楽章:アレグロ・モデラート。ほんとに充実した音楽、演奏です。オーケストラのシンフォニックな響きの中に独奏ヴァイオリンが凛として立つ、そんなイメージ。とりわけ中ほどのカデンツァ部の見事さは感嘆するばかり! 第2楽章:アダージョ・ディ・モルト。瞑想的な楽想が印象的な緩徐楽章、きわめて集中力に富んだ演奏で、思わず聴き入ってしまいました。第3楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ。ティンパニと奏者を絞った低弦がリズムを刻む中、独奏ヴァイオリンが「天馬空を駆けるように」見事な演奏を展開します。聴いている方も、一体となったオーケストラの響きの中でしだいに鼓動が高まるような高揚を覚えました。素晴らしかった!

熱狂的とも言える拍手の後で、アンコールはヴァイオリンとチェロ(矢口さん)のピツィカートで、シベリウス「水滴」を。これはまたさらりとした終わり方で、オシャレ〜(^o^)/

休憩後はブラームスの交響曲第4番です。楽器配置は大きな変更はありませんが、ティンパニの手前にトライアングル、ファゴットの右にコントラファゴットが加わり、フルートはピッコロ持ち替えとなる模様。指揮者が登場、音楽関係者がよく「ブラ4」と略称する第4番の演奏が始まります。好きなんですよ〜、この曲。第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ。哀切な表情でありながら、どこか決然とした佇まいを見せるところがブラームスだなあと感じます。第2楽章:アンダンテ・モデラート。冒頭のホルンの主題が弦のピツィカートの上に変奏され、美しい弦楽合奏の後にまた帰ってくるところなど、実に魅力的。第3楽章:アレグロ・ジョコーソ〜ポコ・メノ・プレスト。曲の表情が明るく代わり、トライアングルやティンパニが活躍するスケルツォ楽章。若い頃この曲をはじめて聴いたときに、これが終楽章だと勘違いしてしまったのはナイショです。第4楽章:アレグロ・エネルジコ・エ・パッショナート〜ピウ・アレグロ。仕切り直して力強く始まる終楽章は、古風なスタイルの中に圧倒的なエネルギーを持った音楽ですが、実際に響く音のエネルギーも十分に力強いものがあり、しかも響きは透明感があります。大都市の巨大な箱を満たすことを求められる四管編成の大オーケストラと、2階席からも奏者の表情が見える800席程度のよく響くホールでの2管編成のオーケストラとは、求める方向性が幾分か違ってくるだろうし、それが自然なことではないかと感じました。

今回のプログラム冊子の中で、常任指揮者の阪哲朗さんの「最近ハマっていること」と題する文章〜カブトムシやクワガタを育てる話〜が面白かった。また、楽員インタビューで1st-Vnの石井万里子さんのお父さんが巌本真理弦楽四重奏団のファンで、高校の音楽の先生が巌本真理弦楽四重奏団のチェロ奏者・黒沼俊夫さんのお弟子さんで、などという話に驚きました。山形大学で教えていた黒沼俊夫さんのご縁で開かれていた巌本真理弦楽四重奏団「山形定期演奏会」の看板を、当時高校生だった私は帰り道に羨ましく眺めていた記憶(*2)があります。つながりをたどっていくとびっくりするようなことが多いと感じるのは、ある程度の年齢を経て得られる感慨なのかもしれません。

(*1): 山響第289回定期演奏会で芥川也寸志、プロコフィエフ、ベートーヴェンを聴く〜「電網郊外散歩道」2021年1月
(*2): 巌本真理弦楽四重奏団と山形〜「電網郊外散歩道」2008年3月


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4 コメント

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Unknown (azumino)
2021-11-22 08:32:41
はじめまして

山形交響楽団の演奏会について、詳しく、わかりやすく記述されていて、とても参考になります。私はジャズを中心に音楽全般が好きで、クラシックも好きなのですが、演奏会によく出かけるようになったのは、ここ2~3年です。

辻彩奈さんの演奏が、素晴らしいようですね。まだ先ですが、来年9月に群馬交響楽団の演奏会で、サン=サーンスを弾くことになっているので、楽しみです。引き続き貴ブログの記事楽しみにしています。
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azumino さん、 (narkejp)
2021-11-22 12:59:21
コメントありがとうございます。当方、クラシック音楽愛好歴だけは50年を越える素人音楽愛好家です。若いうちに関東某県からUターンして、山響はじめ様々な演奏会に通えるようになりました。東京に出ないと聴けなかった演奏会が地元で楽しめるようになり、ありがたい限りです。辻彩奈さんの演奏、素晴らしかったです。地方オーケストラの先達である群馬交響楽団とのサン=サーンスは楽しみですね。こちらこそ、今後ともよろしくおねがいします。
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Unknown (吞む気オヤジ)
2021-11-22 17:49:53
こんにちは
宮城蔵王在住の吞む気オヤジと申します。
クラシックは大好きで、最近定年で暇になったもので仙フィルや山響を聴きに行っています。
山響も良いオケですね。そして、チョー羨ましいのがやまぎん県民ホールです。なんで楽都仙台にああいう音楽専用ホールがないんでしょう。楽都なんて気取っているけど、自治体も県民市民も文化的レベルが決して高くないんじゃないの⁉️なんて、最近卑下してしまいます。
山響・仙フィルの合同演奏会も楽しいです。今週末は石巻の新しいホールに合同演奏会聞きに行きます!
山形市は我が家から1時間弱で行けるので、コンサートも蕎麦も温泉もしょっちゅう行っています。寒河江も天童も鶴岡も、山形良いなぁ〜笑。
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呑む気オヤジ さん、 (narkejp)
2021-11-22 19:38:16
コメントありがとうございます。また、仙フィルばかりか山響への応援もありがとうございます(^o^)/
やまぎん県民ホールのオープンはありがたいですね。おかげで昨年のプッチーニ「トゥーランドット」や今年の「魔笛」など、オペラ公演を楽しめます。
仙台市は学生時代を過ごした街で、宮城県民会館や電力ホール、東北大学川内記念講堂などの旧称のほうが懐かしく思い出されます。足の便の関係で仙山線沿線のほうに親しみましたが、結婚してから子供連れで釜房ダム等に何度か遊びに行きました。
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