電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山本一力『牛天神』を読む

2018年04月15日 06時01分54秒 | 読書
文芸春秋社の単行本で、山本一力著『牛天神』を読みました。『損料屋喜八郎始末控え』シリーズ中の一冊のようですが、第何作目になるのかは不明です。2018年1月刊の第1刷と奥付にありますので、最新刊であることは間違いありません。



大事に育てられ、性根も悪くないのですが、質屋の小島屋の跡取り息子はどうも今一つ物足りず、遊郭遊びが過ぎるのです。小島屋は、背中合わせで損料屋を営む喜八郎のところに相談、別々に調理することで素材の味を引き出すという潮汁の味がヒントになり、小島屋の与一朗を二年間だけ喜八郎が預かり、その後、小島屋に返すということで話はまとまり、与一郎は損料屋の一員として働き始めます。このあたり、どうも子供を大事に育てることの良い面と物足りない面を表しているようですが、ご当人のボンボン与一朗の目は必ずしも節穴ではなかったようで、佃町の二千坪の広大な火除け地を買った問屋・堂島屋の二番番頭・伊五郎の横柄な注文を断ります。その後の成り行きを見ると、どうも与一朗の判断こそが正解だったみたい。

堂島屋を動かした黒幕は実は別にいて、その男・鬼右衛門こそ、深川に恨みを残す福太郎の別名でした。鬼右衛門の執念は、いったんは深川っ子たちの結束の前に敗れ去りますが、鬼右衛門らは筋書きを描いた者として喜八郎、喜八郎に思いを寄せる秀弥、北町奉行所の秋山順生とのつながり等をつかみ、復讐のために動き出します。はたして防ぐことはできるのか、というミステリー風仕立ての物語となっています。なかなかおもしろく楽しみました。

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