電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

遊学館ブックス『小説にみる山形』を読む

2018年04月11日 06時02分15秒 | 読書
遊学館ブックスで、『小説にみる山形』を読みました。平成29年12月15日発行と奥付にありますので、ほんとに出たばかりの最新刊です。遊学館というのは、山形県立図書館などが入っている建物のことで、ここで「山形学」だとか「小説になろう」講座などがずっと開催されてきました。今回の『小説にみる山形』は、平成28年度の「山形学」講座やフォーラム等のテーマに基づき編まれた冊子で、次のような構成になっています。

フォーラム「文学にみる山形」 鼎談:佐伯一麦、小池昌代、池上冬樹
講座「小説にみる山形」
1. 語られた人物  髙橋義夫、鈴木由紀子
2. 藤沢作品に描かれた舞台を歩く  松田静子、中里健
3. 「怪異と伝承」の謎  黒木あるじ、佐藤晃
4. 作家はふるさとの山形をどう描いたか  石川忠司、森岡卓司
5. 井上作品・浜田作品の原点を訪ねる  阿部孝夫、樋口隆



今回、とくに興味深かったのが、「ないた赤おに」の作者・浜田廣介が、晩年になって色紙によく書いていたという言葉、

強くやさしく男の子、やさしく強く女の子

あるいは、

ほしいもの 冬の炉ばたのあたたかさ もうひとつ 人の心の温かさ

など、この年齢になってしみじみといい言葉だなあと感じられます。あるいはまた、晩年の詩

 道ばたの石

道ばたの石はいい
いつも青空の下にかがみ
夜は星の花をながめ
雨にぬれても風でかわく
それにだいいち
だれでも腰をかけてゆく

などという境地に、思わずほっとしたりします。

童話的などと軽々しく言うことはできません。藤沢周平と同様に、浜田廣介もまた不幸な厳しい前半生を過ごした人でしたから、人のあたたかみに感じるところが大きかったのでしょう。

コメント