電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

アンチェル指揮のスーク盤でブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」を聴く

2010年12月01日 06時02分22秒 | -協奏曲
ブルッフのヴァイオリン協奏曲という曲は、たしかチョン・キョンファ(鄭京和)のデビュー盤か、あるいはデビューの頃の録音だったのではないかと思います。当方がまだ若い頃、元気な女性ヴァイオリニストを、キングレコードがずいぶん力を入れてプロモーションしていた記憶があります。当時は NHK-FM で耳にしたくらいで LP を購入するまでには至りませんでした。近年になって CD で入手、昨年あたりに一度記事に取りあげました(*)が、あらためて1972年の録音を堪能しております。それともう一つ、たまたま某中古書店で入手した全集分売もので、ヨセフ・スークのソロで、カレル・アンチェル指揮チェコフィルの録音、こちらも実はお気に入りのものです。

Wikipedia によれば、マックス・ブルッフは1838年生まれのドイツの作曲家で、戦前は合唱曲などで有名だったとのことですが、私はブルッフの声楽曲などにはまったくなじみがなく、この曲と「スコットランド幻想曲」くらいしか知りません。没年が1920年といいますから、野次馬根性ではありますが、プロコフィエフやストラヴィンスキーのような音楽をどんなふうに受け止めたのか、むしろ興味深いところです。ともかく、この曲は1864年に着手され、1867年に完成しているということですので、ブラームスが「ドイツ・レクイエム」や「アルト・ラプソディ」などを書いて、注目されつつあった頃でしょうか。

第1楽章:前奏曲。アレグロ・モデラート、ト短調、4分の4拍子。ティンパニのトレモロ、木管に続き、独奏ヴァイオリンがレチタティーヴォ風に登場します。オーケストラが力強い楽句を奏すると、ソロ・ヴァイオリンがスケールの大きい演奏を聴かせます。アタッカで第2楽章へ。
第2楽章:アダージョ、変ホ長調、8分の3拍子。いかにもロマン的な緩徐楽章です。緩やかですが、力強く魅力的な旋律が展開されます。実演ならば、思わずため息が出そうな音楽です。
第3楽章:終曲、アレグロ・エネルジコ、ト短調、2分の2拍子。弱音から次第に盛り上がるオーケストラに乗って、独奏ヴァイオリンがリズミカルに登場、躍動的で情熱的な第1主題と、叙情的な第2主題とが展開されるソナタ形式。ほんとに絢爛豪華な、という形容がよくあてはまる、ロマン派協奏曲の典型のような音楽です。

恐れを知らない若さが可能性を拓いて行ったようなチョン・キョンファ盤は、ルドルフ・ケンペ指揮のロイヤル・フィルのバックも見事なもので、1972年、DECCA によるアナログ録音全盛期の収録です。型番は F28L-28003 というもので、音も充分に鮮明です。

もう1枚、DENON My Classic Gallery シリーズ の GES-9240、ヨセフ・スーク(Vn)、カレル・アンチェル指揮チェコフィルという懐かしい録音のほうは、1963年のスプラフォン録音です。年代相応に、ややテープヒスが目立つようになり、最高音部は澄んだ音とは言い難いのですが、でも演奏はまた違った魅力があります。チョン・キョンファ盤が力感あふれるダイナミックな演奏としたら、アンチェル指揮スーク盤は、ゆったりと流麗でよく歌う演奏とでも言えばよいのでしょうか。ダイナミックな力感よりは音楽の流れを重視した演奏と言ってもよいかもしれません。ふだんPCオーディオで聴くときは、実はあまり気負わなくてもよいスーク盤をクリックすることが多い、というのは内緒ですが(^_^;)>poripori

参考までに、演奏データを示します。
■チョン・キョンファ盤
I=8'14" II=8'37" III=7'17" total=24'08"
■スーク盤
I=8'22" II=9'30" III=7'44" total=25'36"

(*):ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」を聴く~「電網郊外散歩道」2009年6月
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