電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

「JIN~仁~レジェンド」を見る:その2

2010年12月31日 06時03分28秒 | 映画TVドラマ
ディレクターズ・エディションという形で再放送された「JIN~仁~レジェンド」第2夜、「人の章」では、幕末の江戸にその驚異的な医療技術で知名度を高めた南方仁先生が、歴史を変えてしまうことを恐れながらも、献身的に活躍する姿が描かれます。とくに印象的なのは、金八先生じゃなかった、武田鉄矢が演ずるところの(^o^)緒方洪庵が結核でなくなる最後の場面。緒方洪庵先生の治療にも回せるほどの大量製造はできていなかったということなのかと思っていましたら、「庄内の笛吹き」こと実は脳外科医 balaine 先生のご指摘によれば、ペニシリン(*1,*2)は結核には有効ではないのだそうです(^o^;)>poripori
な~んだ、そうだったのか!そういえば藤沢周平が苦労したように、ストレプトマイシンやカナマイシンなんてのができて普及するまで、結核は治療が難しい病気だったのでした。なるほど~。

ところで、興味深いのが江戸時代におけるペニシリン製造及び精製の可能性です。前夜は、たしか次のような原理で精製していたと思います。



ところが、今回はペニシリンの製造及び精製法にさらに工夫と改良を加えている点が注目されます。

(1) まず、青カビを大量に培養できなければ、有効な製造法とはなりませんので、効率の悪い表面培養法をやめ、ヤマサの醤油職人の技術と経験を生かし、桶を用いて攪拌しながら行う形で、通気深層培養法に近い方法をとっておりました。これは、1940年代の米国ファイザー社の製法に近いもので、なるほど、です。
(2) 薬効検定を経てペニシリンを含有することがわかっているカラム留分をそのまま使用するのでなくて、和紙を用いたペーパークロマトグラフィで濃縮し、活性の高い部分を蒸留水に溶かして用いるというふうに改良していました。数十倍に濃縮され、より効果が高まるというわけです。

なるほど、なるほど。注射液に使えるほどの精製であれば、大量の蒸留水が必要だと思われますが、そのあたりは描かれず、まあ時間枠のあるSFドラマでは、話の都合上しかたがないところでしょうか(^o^)/

後半は、燦然と輝くペニシリンや医療技術の光があれば、その影もまた暗く生じるはず、という坂本龍馬の予言どおり、様々な悪意と妨害が噴出して、ドラマを盛り上げます。一方で、火消の新門辰五郎親分との対決と火事場の手術シーンはなかなか緊迫感がありますし、婚約者だった未来とそっくりな花魁の野風の乳ガンの診断と手術には、有吉佐和子の『華岡青洲の妻』に描かれた、仙通散による全身麻酔が登場するなど、日本医学史的にも興味深い設定です。

結局、野風の手術は成功し、橘咲の縁談は流れて、咲は仁先生の助手でありかけがえのない理解者として、江戸の仁先生の心を射止めたようです。良かった良かった(^o^)/
でも、坂本龍馬はどうなるのか、幕末の動乱の中で、現代の歴史認識を有する南方仁先生は今後どうなっていくのか、今後に期待を持たせる、実にうまい展開でした。いや~、おもしろかった(^o^)/

(*1):ハワード・フローリー博士:ペニシリン療法の開発者~上宇部こどもクリニック
(*2):ペニシリン~Wikipediaの解説ページ
コメント (6)