電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ドヴォルザークの「交響曲第5番」を聴く

2007年05月28日 06時39分05秒 | -オーケストラ
季節に誘われて、ドヴォルザークの音楽を集中的に聴いております。特に、若い頃の1番、2番、3番、4番など。3番と4番については、すでに記事(*1,*2)にしました。本日は、中期の第5番ヘ長調Op.76を取り上げます。Wikipedia(*3)によれば、1875年に作曲・完成したこの曲、作品番号がずいぶん大きくなっていますが、これは出版社ジムロックが1888年に「交響曲第3番」として出版する際に、勝手に付けたもののようで、ドヴォルザーク本人は作品24のつもりだったのだそうな。それはそうでしょう。そうでないと、あの第7番Op.70と第8番Op.88の間に来てしまいます。

交響曲第5番には、もう一つ不思議なことがあります。それはゆったりしたヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコフィル盤と、迫力のクーベリック指揮ベルリンフィル盤との演奏時間の差です。特に第1楽章。

第1楽章、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。ベートーヴェンなら「田園」の幕開けのように、喜ばしい気分で曲が始まります。ほんとに田園の喜びのような音楽、シューベルトがボヘミアに生まれ変わったような音楽。この曲も、通勤の音楽として出番の多いものです。
第2楽章、アンダンテ・コン・モト。やや寂しい雰囲気を持った、スラブ舞曲風の味のある音楽で始まります。これはもうドヴォルザークの世界です。好きですね~、こういう田舎風でノスタルジックな世界。
第3楽章、アンダンテ・コン・モト、クアジ・リステッソ・テンポ~アレグロ・スケルツァンド。スケルツォ楽章。
第4楽章、フィナーレ:アレグロ・モルト。ブラームスのような構成感もあり、圧倒的に盛り上がる音楽になっています。

録音は、クーベリック盤が1972年10月、ベルリンのイエス・キリスト教会におけるアナログ録音。ノイマン盤は、1982年、プラハの芸術家の家におけるデジタル録音で、DENONとスプラフォンの共同制作です。

参考のために、演奏データを示します。
■ラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィル (DG 463 158-2)
I=13'13" II=7'53" III=7'53" IV=12'24" total=41'23"
■ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル (DENON 33C37-7377)
I=9'40" II=8'04" III=7'58" IV=12'48" total=38'30"

実際にはノイマン盤のほうが全体にゆったりしたテンポなのに、演奏データを見るとクーベリック盤のほうが3分27秒も長くかかっています。スコアを見ながらじっくり聴いているわけではないので推測にすぎないのですが、たぶんクーベリック盤のほうは、繰り返しを忠実に実行しているのだろうと思います。

ただし、グラモフォンが「Collectors Edition」を標榜するクーベリック盤ですが、ここでも第1楽章~第3楽章が第3番とともに収録(463-161-2)され、第4楽章だけが第6番に収録(463-162-2)と2分割されています。

どこが「Collectors Edition」なんじゃ!

せっかくのクーベリックの努力ですが、無頓着なレコード会社のせいで、CD一枚で聴くことができるノイマン盤のほうに手が伸びるのは致し方ありません。日本盤のほうは、交響曲第5番に三部作《自然と人生と愛》として、序曲《自然の王国で》作品91、序曲《謝肉祭》作品92、序曲《オセロ》作品93をカップリングしているようですが、はたして収集家はどちらを喜ぶでしょうか。

※教訓~CD全集が安いからとむやみに飛びつくものではない(^_^;)>poripori



(*1):ドヴォルザーク「交響曲第4番」を聴く
(*2):ドヴォルザーク「交響曲第3番」を聴く
(*3):Wikipedia より~ドヴォルザーク 交響曲第5番
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