電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第181回定期演奏会を聴く

2007年05月13日 20時55分04秒 | -オーケストラ
田んぼに水が入り、肌寒い5月の土曜日、山形交響楽団の第181回定期演奏会を聴きました。会場は山形テルサホール。800人規模のホールなので、土日2回公演です。会場は最前列の席までほぼぎっしりと満席。私の席はステージに向かって中央右手、前から五番目あたり。ソリストの表情もよくわかります。

演奏前のプレトークでは、「共感覚!あなたはイメージできるか、音による映像の世界」というコピーは私が作ったんですよ、と飯森さん。今日のソリストのコルネリア・ヘルマンさん、お母さんが日本人だそうで、日本語もだいぶお上手なのだそうです。それから「展覧会の絵」の楽しみ方をわかりやすく解説してくれました。その後で、山響コンポーザー・イン・レジデンスである千住明さんが登場。「ミュージック・アドバイザーと音楽監督はどう違うの?」「いや~、今までも音楽監督のようなことはやらせていただいてましたから」「正式に」というようなやりとりがあり、千住さんが聴衆に話しかけました。

映像のための依頼作品は、映像が消えると消えてしまう。白神山地の番組は、NHKしかできない記録的な作品で、映像詩。オーダーに応じた作品の中でも、なんとか演奏会作品にして残したい。飯森さんに相談して、陰に隠れてしまいがちな作品を、忘れないでもう一度聴いていただきたい、とのこと。ちなみに、今年の大河ドラマの音楽は千住明作品ですね。

いよいよ開演です。コンサートマスターは、いつもの犬伏亜里さんが隣に座り、客演の高木和弘さん。「しばらく床屋に行ってない」風の髪型はいつものとおり。プログラム最初は、平成19年度委嘱編曲作品、映像音楽による組曲「白神山地~命そだてる森」 横笛とオーケストラの為の(2000&2007)。篠笛のソロは、長ラン風(?)の白い上着の柴田旺山さん。静かな弦楽合奏に篠笛とフルートの音色が印象的な音楽です。篠笛の音色は、鳥の声みたい。振動部が軟らかいからでしょうか、音色もやわらかく感じます。オーケストラの中に埋もれやすいので、山響も抑え目に演奏しているようです。



プログラムの二番目は、グリーグのピアノ協奏曲です。今年は北欧イヤーでもあるようで、そんな関係で選ばれたのでしょうか。ソリストのコルネリア・ヘルマンさんは、黒いドレスが栗色の髪によく似合う、すらりとした美人さんです。女性の年代を話題にするのは失礼なのかもしれませんが、プログラムには1996年にJ.S.バッハ国際コンクールに18歳で最年少最高位を獲得とありますので、20代の終わり頃かと思います。日に日に充実が感じられ、怖いものなし、向かうところ敵なしの年代。
飯森さんの指揮は、ゆったりとした大きなテンポでグリーグの音楽を展開していきます。第1楽章のカデンツはほんとに素晴らしかった。
第2楽章、出だしの弦楽の響きが美しく、ホルンの後にピアノが入ってくるあたり、詩的な音楽です。ピアノとチェロがちょっと対話しますが、そっと見まもるようなチェロがすてきです。ピアノの見せ場でちょっとハッとしましたが、すぐ立ち直りました。一瞬見せたヘルマンさんの悔しそうな表情が印象的。
第3楽章、「ノルウェーの舞曲を思わせる」(パンフレットより)ロンドのテーマが軽快に弾かれ、オーケストラも全開、ピアノとがっぷり右四つの大相撲。協奏曲を聴く醍醐味です。ヘルマンさん、演奏前は可憐な印象でしたが、演奏は力強さもあり、グリーグの協奏曲のスケールの大きさを充分に感じることができました。

休憩時にも楽屋の方ではソロの練習の音がもれ聞こえてきます。なにせムソルグスキーの「展覧会の絵」は、ソロの見せ場がたっぷりあります。奏者の緊張も高まるところでしょう。

そして「プロムナード」のトランペット・ソロがぴたりと決まり、なんともかっこいいオープニングです。「こびと」ではバスドラムでしょうか、低音の打楽器の音がズシンと響きます。「古城」のアルトサックスの音色は、いつ聴いてもいい音ですね。ファゴットがリズムを刻むところが、とってもいい感じ!「ビドロ」での低音金管とコントラバス、チェロ、それにバスドラムにティンパニも加わった牛の群れの行進は迫力です。遠ざかる様子でハープも好演。「プロムナード」木管楽器ですぐ次の曲につながり、「殻をつけた雛鳥の踊り」でも、フルートと弦のピツィカート、ファゴットの音がポコポコ面白い。
さて楽しみにしていた「サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」、偉そうにふんぞりかえる様子が弦楽で、弱音器をつけたトランペットソロがお見事!「リモージュの広場」「カタコンブ」を経て「死者の言葉による死者との対話」に。アルコールに依存したムソルグスキーが狂気を見つめる目なのでしょうか。「バーバ・ヤーガの小屋」から「キエフの大門」へ、お腹にこたえる低音のバスドラム、炸裂するシンバル、金管のファンファーレ、静かで緩やかな旋律を経ながら、チューブラー・ベルの鐘の音でクライマックスへ。渾身の指揮ぶりの飯森さん、熱演のあまり白い蝶ネクタイが取れてしまいました(^o^)/

いやー、大満足!これは「山響と食と温泉ツァー」に参加したご一行様の懇親会も、さぞ盛り上がったことでしょう。今回も、いい演奏会でした!



写真は、今が花盛りのアネモネです。
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