電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮城谷昌光『奇貨居くべし』第2巻(火雲篇)を読む

2006年05月30日 20時50分48秒 | -宮城谷昌光
秦の策謀から和氏の璧を守り抜いたものの、疲労のあまり病に倒れた呂不韋は、藺邑で僖福の献身的な看護を受けて生命をとりとめます。ここまでが前巻のお話。

ようやく健康を回復したものの、藺邑は秦軍に包囲され、呂不韋は奴隷として陶侯・魏ゼンが建設中の穣邑に送られる。そこで孫子に出会い、奴隷の生活の中で学問をすることになる。秦への復讐を誓う楚が攻め込み、奴隷たちは穣邑から出て輜重隊に加わることになるが、孫子は輜重隊が五日以内に奇襲を受けると予測する。楚兵の隊長が黄歇の配下であったことから、辛くも脱出することができた。

広大な楚の国を歩き通し、人相を見る名人の唐挙に出会うと、唐挙は呂不韋を位人臣を極めると予言する。また唐挙は楚の衰退を告げ、大商人・西忠に楚から重心を移動するよう示唆する。唐挙は多額の謝礼を運び、魏に接し孤児や不幸な人々を救済する慈光苑の伯紲に寄付する。そこで呂不韋は見知らぬ老人に出会い、招待を受けるが、その老人こそ最晩年の孟嘗君であった。そして、孟嘗君の死とともに、時代は大きく変化していく。

これが、火雲篇のあらすじです。奴隷となった呂不韋が同じく奴隷の身に落ちている孫子を師として学ぶ対話の場面が、実に緊張感を持って描かれています。古代ギリシアの哲学者との対話に似て、羨ましいほどです。
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