気ままな思いを

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柴崎 友香著「春の庭」を読んで

2014-08-20 | 読書


第151回芥川賞受賞作・柴崎 友香著の「春の庭」を読んでみました。

隣町の病院、夫のつき添いで行った折、3科を回りましたので、
その待ち時間に、一冊読み終わることが出来たのです。



登場人物の言動や視覚を緻密に描写して、心の動きをうかびあがらせる
筆致が特徴的な小説家だ。と検索にて書かれていました。
1999年、作家デビューして、沢山の作品も書かれているようです。
私は、柴崎 友香さんのことは、受賞するまで名前は知りませんでした。

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本文より
毎日歩く地面の下は、暗渠の皮が流れている。水道やガスの管がある。不発弾が
あるかもしれない。ここはどうだかわからないが、もう少し新宿に寄ったあたりでは
空襲の被害があったと、それは美容師をしていたときに年配の客から聞いた。
不発弾があるなら、そのときに燃えた家や家財道具のかけらも埋まっている。
もっと昔はこのあたりは雑木林や畑だったらしいから、毎年の落ち葉や木の実や
そこにいた動物なんかも、時間とともに重なって、地表から少しずつ深いところへ
沈んでいった。その上を、太郎は歩いていた。

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毎日歩いている地面、地面の下のことなど考えて歩いたことはありませんでした。
この描写には、驚きました・・・地面の下には、長い歴史もあるのだと。

春の庭は、土地というものをテーマに、その場所で生活する人々の人間関係が
描かれていて、主人公の太郎は、世田谷にある取り壊し寸前の古いアパートに
引っ越して、同じアパートに住む女性が隣り合って立つ洋館風の家に興味を持ち、
その女性にまきこまれていく。

表題と同じ「春の庭」という写真集が、作品のポイントとなっている。
父の死についても書かれていて、大きな出来事もなく、街の記憶と人々の出会いが
描かれていて、終盤に、太郎の姉である「わたし」が語り手として、登場しています。

 


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