日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「鎌倉散策」を終えて

2008-06-21 13:51:19 | 行事活動
 「鎌倉散策」は無事終了しました。20人にも満たない学生なのに、ミャンマー・中国(含台湾)・スリランカ・インド・タイ・フィリピンと国際色豊か。しかもインドの二人は民族が違うので、英語でしか話し合えない。年齢も15歳から、三十代前半までと随分幅がありました。その上、就学生あり、在日の人ありと本当にバラエティに富んでいます。

 だからでしょうか、一つの色に染まらない様々な民族性、プラスの個性が感じられて、それを「変な奴」と見るのではなく、「おもしろい人」と見るゆとりが生まれているようでした。

 電車の中でもだれかが一人でいると、「寂しそうですね。ちょっとここへ呼んできます」などと言う人がいるのです。

 教室の中とは違う「優しさ・柔らかさ」を一人一人に感じました。

 尤も六月に来たばかりのインド人の学生はかわいそうでしたね。若い先生がここぞとばかりにひらがなのカードを作ってきていて、「はい。電車を待つ間に、ね。時間がありますね。これは何ですか」としごくのです。目を白黒させながら、答えさせられていました。何となれば、このカードの存在を知らなかった彼は「ひらがな?オッケー。大丈夫です」などと「ほざいて」いたのですから。

 朝いつもより、40分も早い8時20分集合でしたのに、遅刻者ゼロ。我々は「奇跡だ」と喜びの声を上げていたのですが、「実は、上級クラスの女の子が、前回も、前々回も待たされたのに腹を立て、今回は遅れそうな一人一人にチェックを入れていた」ことが判明。全く「う~ん」です。

 教師なんかの言葉より、クラスメートの鋭い一言の方がずっと効き目があるとは。けれど、これで一つ、我々も賢くなりましね。富士山へ行くときは彼女に、睨みを効かせてもらいます。

 行徳から大手町まではラッシュの中。ラッシュ初体験の学生はひしゃげたアンコみたいになっていました。これまでにラッシュという単語は習っているはずなのに、「身を以て知るラッシュ哉」。東京駅でミャンマーからの学生と落ち合い、そのまま鎌倉まで電車の中で過ごします。品川から、乗り込んでくる人も少なくなると、学生達がもぞもぞと動き始めます。座ることができたので、少しほっとしたのでしょう。

 鎌倉からは、鶴岡八幡宮参詣へと、段葛の上をひた歩き。入り口で写真をパチリ。そして中へ入っていくと、ちょうど結婚式の準備をしているところでした。そのまま先に参拝して、それから結婚式の様子を見ようとしたのですが、スリランカの学生が一人おちこぼれてしまいました。結婚式の準備に見とれているうちに皆とはぐれたのです。皆が下りてきて、結婚式の様子を見ているときに自然と合流し、駅へ向かおうとしたとき、まだ参拝していないと騒ぎ出し、おちこぼれていたことが発覚したのです。そこで、彼女が大急ぎで参拝する間、みんなはゆっくりと移動。

 八幡宮から小町通りを通って、鎌倉駅に戻ります。その前に約束が一つ。「今日、ここでは買い物をしないということ」。通りを歩きながら、どうしてもどうしても欲しいものがある時は、教師の許可を得て買いに走ります。「時間が無いので、今日は鎌倉という町をみんなに紹介するだけ」ということを徹底しておいたのがよかったのでしょう。ほとんど問題もなく、そのまま駅へ。

 この「小町通り」には、みんな感動していました。今度ショッピングのために一緒に来ようと何人かで話していたようです。ついでに、ここにはハイキングコースもあって、それも楽しいというと、「ここに住みたい」という声がしきり。

 さて、次は「大仏」様です。駅からかなり歩くのですが、ここでも小さなお店に引っかかりそうな人がいました。が、約束を覚えていて、恨めしそうな顔でこちらを見ては、足早に通り過ぎてくれます。私も本当は見たかったのですよ。みんな素敵だものね。でも、それは今度友だちと来た時用にとっておきましょう。



 大仏様のところでは、雨が少々ぱらつきましたが、大事に至らずにすみました。かわいい台湾リスを見ることもできました。大仏様の中に入ってみることもできました。時間がなくて、我慢してくれた人、ごめんね。ここで食事を済ませ、紫陽花のお寺、「長谷寺」へ。途中の古着(着物や帯)の店もおもしろそうでした。路上の大輪の花々もすばらしく、心なしか、あのあたりの花は他で見るよりも大きく、色が深いようでした。

 さて、「長谷寺」です。入るなり、「いずれ菖蒲か杜若」の世界へ引きずり込まれてしまいました。コケの壁にホタルブクロがやさしく揺れています。急な坂を上へ上がっていくと、「水掛地蔵」の姿が。水をかけてやると、「なんだ。なんだ」と学生が集まってきました。そして、本堂で観音様を拝んだ後、いよいよ紫陽花です。お寺に入るときに「お寺の地図」と「紫陽花の種類」が書かれた団扇をもらったのですが、それ以上の様々な色合いの紫陽花がずっと上の方まで、所狭しと植えられていました。登り始めたときは、みんなと一緒だったのですが、一人、また一人と、紫陽花の美しさに捕まって、落ちていきます。坂のあちらこちらでは、「きれい」だの「すごいね」だの、驚きの声が上がっています。





 けれども、それも分かります。黙っていると、なんだか紫陽花の美しさの中に閉じ込められてしまうような気になってしまうのです。花の中には、これまでに見たこともないような不思議な色合いのものもありました。

 紫陽花の山を下りてからは、展望台に向かいます。展望台からは、鋭角に尖った波が見えました。風がかなり強そうです。学生の一人が「あそこへ行きますか。あそこへ行きたいです」。先生の一人が「はい、あそこへ行きます。行きたいですね」と答え、そのまま駅へ。長谷寺へ行く「江ノ電」は人でいっぱいだったのですが、「七里ヶ浜」へ行く人はあまりいなかったようです。無人駅(鎌高前)ですから、切符はそのまま。これもおもしろかったようです。それから、浜に下りていきます。「とび」が数羽、海の上を舞っています。だれかが「雨だ」と言ったのですが、強い風に煽られた波しぶきでした。

 貝殻が無かったので、記念に持ち帰るわけにも行かず、しばらく歩いたり、追いかけっこをしたり、写真を撮ったりして遊んだ後、帰途へつきます。

 おかしな話ですが、彼らを見ている裡に、移民の国、アメリカの底力を見せつけられたような気がしました。勿論、最近は寛容性が無くなったとか様々な意見があります。しかし、互いに相手を感じよう、理解しようとする態度、これは、実際にそういう状況にならなければ、生まれるものではありません。放っておいたら、そのままです。「今まで通り」で終わりです。「きのうかくてありけり。あすもかくありなむ」の世界なのです。日本は、これまでそうやってきたのです。けれども、これからはどうでしょうか。

 少々疲れましたが、本当に有意義な楽しい一日でした。それに、「また鎌倉へ来るんだ」という学生の声が、我々の励みになった一日でもありました。
  日々是好日

 
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