昔々地球の陸地がシダの大木に覆われていたころ、
50センチもの大きな大きなトンボがゆらゆらと飛んでいた。
そんな昔をふと想像させるオニヤンマ。
その頃は今よりも平和な、今よりもましな世界だったのだろうか?
平和だったかどうか知らないけど、朝日や毎日がないだけでも今よりもましだったに違いない。
いえいえ、そんな話ではなく、オニヤンマの話。
ここでは一番多いのはシオカラトンボ、ムギワラトンボ。
オニヤンマもちらほら見かける。
でもその大きさでとっても存在感がある。
それでふと写真に撮ろうと思った。
写真は趣味だけど、もっぱら花など植物を撮っている。
動物、動くもの、は苦手。
写真を構えて、ピントを合わせて、撮ろうとしたら、
あれ?いない!
カメラを向けたら人物写真のモデルのようにポーズをとる、それくらいの気配りはできないものか。
ポーズどころかせっかく無料でいい写真を撮ってあげようと思っているのに、近づくとすぐに逃げていく。
それで「動く物」を撮るのはとっても苦手。
さらに苦手なのは人間。
「はい、笑って、チーズ!」(ぱちり)
(面白くもないのに何で笑わないといけないの?
記念写真なんて実につまらない、退屈なだけ。
怒った写真、ふてくされた写真、泣いた写真~その方がずっと面白い)
こわばった顔と口もとだけのわざとらしい笑顔。
そんな写真を見ても少しも面白くない。
かといって被写体に愛想をして無理やり喜ばせる、そんな面倒なことはさらに苦手。
その点、植物は素直でいい。
媚びた笑顔をしないのがいい。
毎年毎年同じように育ち同じように咲く植物たち。
このまんねりがいい。
いえいえそんな話じゃなくてオニヤンマの話。
トンボはゆらゆら飛んでるだけでなく止まったらしばらくじっとしている。
「ねぇ、早く撮ってよ」と言ってるように。
「しゃないな、じゃ撮ってやるか、はい、チーズ!」
ところがトンボはにこりともしない。
そういえば今までトンボが笑ったところを見たことがない。
根が不愛想なやつなのだろうけど、そんな不愛想さがいい。
やたらと他人に愛想を振りまく人間を見ると、
「ねぇ、そんなことして疲れない?もっと自分の時間を大切にしたら?」とついつい言いたくなる。
そのてんトンボは、トンボだけでなく他の昆虫もとっても不愛想。
その不愛想さにほっとさせられる。