イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「猫はこうして地球を征服した: 人の脳からインターネット、生態系まで」読了

2018年05月17日 | 2018読書
アビゲイル・タッカー/著 西田美緒子/訳 「猫はこうして地球を征服した: 人の脳からインターネット、生態系まで」読了

去年の暮れのニュースで、日本の飼い猫の頭数が犬を抜いたと報道されていた。
猫が953万匹(前年比2・3%増)に対し、犬は892万匹(同4・7%減)だそうだ。
僕の仕事場でも岩合光昭の写真展やネコのモチーフの商品を売り出すとやたらと人が集まってくる。

この本はどうして猫が人間を魅了し人間の社会に入り込んできたかということを分析している。
人間が動物を飼いならすのはそれが生きてゆくうえで有益だからである。ペットとしてのイヌは、狩りや放牧、番犬、今では盲導犬、聴導犬などとして実生活に役に立ったことの延長線に愛玩犬としての地位を築いた。しかし、しかしながらネコというのは人間の生活に役に立っているわけでもないのに溺愛されている。それに、イヌは愛想がいいけれどもネコは無愛想で従順そうなところがほとんどない。たまに擦り寄ってくるしぐさはかわいいが・・。
そして著者本人もネコに魅了されている。それを不思議に思い調査と分析が始まった。

ネコはネズミを獲ってくれるから食物の被害や伝染病から人間を守ってくれているという説もあるけれどもどうもそれは違うらしく、むしろネズミを獲らずにその他の貴重な野生動物を滅ぼすほど他のものに目を向けるらしい。
例えば、オーストラリアやガラパゴス、その他太平洋の島々ではネコがネズミ対策や食料として先に移植されたウサギ駆除の目的で移植されることによって固有の種が絶滅の危機に瀕しているという事実がある。ねずみ算というのがあるけれども、ネコの繁殖力もすごいらしくおまけに食物連鎖の頂点に一気に上り詰めて生態系を破壊する。おまけにかなり凶暴で、食べる以上に殺すらしく、これを過剰捕食(ハイパープレデーション)というらしいが、殺してそのまま放っておくこともしばしばだそうだ。
伝染病についても、むしろトキソプラズマという細菌の最終宿主となって、人間にも感染するとえらいことになる場合まである。また、この細菌は人間の脳に作用してネコに対して親愛の情をより表すように仕向けているという見解もあるそうだ。事実、感染したネズミはネコのおしっこの臭いを好むようになり、わが身をネコの面前にさらすようになるらしい。(これは読んでいて、ウチの周りに住んでいる野良猫たちにも絶対にどこかに行ってもらわねばと考えてしまった。)

それほど危険で厄介な動物であるのにどうして人間はネコを受け入れ、ネコは人間社会に溶け込んだか・・。
それは見た目であるという。眼が大きくてほぼ顔面の前面についている。顎も小さく鼻もイヌほど上を向いていない。これは肉だけを食べてきた動物が持っている特長らしいのだが、それが人間の子供に限りなく似ている。おまけにニャ~という泣き声も赤ちゃんのそれに似ている。そういうところから人間の母性本能をくすぐった。
コンラート・ローレンツはベビーリリーサーという言葉を使って説明をしているが、人間の子供を思い出させてホルモン分泌の連鎖を促すというものだそうだ。
そうやって人間を手なずけることによって人間と帯同し世界各地に勢力範囲を伸ばした。加えてネコは生きてゆくにあたって、あまり水分を必要としないということもあらゆる環境に適応できる要因となった。
そしてしたたかなのは、それをほとんど姿かたちを変えることなくやってのけたということだ。イヌは奉仕の仕方によって交配方法を変え、大きさや顔かたち、体型などたくさんの種類を生み出されたのとは対照的である。

読み進めると、インターネットの世界でもネコの世界征服が進んでいるのだと言うような論も出てくるのだけれども、そこはあまりにもこじつけすぎているのではないかと思うのである。

遠い遠い昔、人間の祖先はネコの祖先に狩りをされる立場であったらしい。恐怖の対象であったはずのネコが人間の懐に入って生活をしている。ネコが本当に戦略的に人間を手なずけたのかどうかは知らないけれども愛想がいいとも思えないネコに愛情を注いでいる人をみていると、確かに手玉に取られていると思えなくもない。

独立独歩、一見誰に頼ることなく自由に生きてきるように見えるネコの生き方にはうらやましいと思うところがあるけれども、飼いたいとも思わないし、ネットに溢れる画像に愛情を刺激させられることもない。
僕はまだ手玉には取られていないようだ。

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