イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「スプーンはスープの夢をみる 極上美味の61編」読了

2024年04月16日 | 2024読書
早川 茉莉/編 「スプーンはスープの夢をみる 極上美味の61編」読了
 
この本、図書館では「食品・料理」の書架に入っていたがこれはまったく日本文学というジャンルの本に間違いない。司書さんはタイトルだけを見て分類したに違いない。
作家や詩人だけではなく、芸術家、音楽家など様々な分野の一流の人たちの文章が収録されているアンソロジーなのだが、「スープ」というキーワードはほんの体裁でしかない。その著者たちはすでに物故しているかもしくは僕よりも年上の、ある意味、積極的に残しておかないと世間からどんどん忘れ去られてしまうような人たちなのだが、それはあまりにももったいないという思いで集められたかのようだ。61人の著者の一部を紹介しておくと、僕が知っていた人では、
江國香織
星野道夫
島崎藤村
岡本かの子
三島由紀夫
荒井由実
阿川佐和子
村上春樹
伊丹十三
中谷宇吉郎
林芙美子
小林カツ代
林望
宇野千代
北大路魯山人
という人々。これだけ見ていてもバラエティーに富んだ人々だ。
知らなかった人たちでは、
入江麻木(指揮者の小澤征爾の義理の母。あとから調べてみるとこの人の本を1冊読んでいた・・。)
森茉莉(森鴎外の娘)
斉須政雄(日本でのフランス料理界のレジェンドだそうだ)
松浦弥太郎(暮らしの手帖の前編集長)
などなど・・。

こうやって取り上げられている人たちを見てみると、こういった人たちを集めた編集者はすごいというしかない。ほとんどの人はすでに物故しているような人たちだが、誰かが残しておかなければどんどん忘れ去れてしまうしかないだが、絶対に残しておかねばならない文章なのかもしれない。僕自身も、自分より若いひとの文章よりもこういった人たちの文章のほうがしっくりくるもの確かだ。
早川茉莉というひとは、ネットで調べてみてもフリーのライターだということしかわからないが、どれほどの読書量とデータベースを持っているのだろうかと驚かされる。いくつかの文章は料理としての「スープ」とはまったく関係がなく一語だけ「スープ」という文字が入っているだけというものもあった。よけいに大したものだと思えてくる。

スープ自体が食材の栄養を一滴残らず体の中に取り込めるという料理だから、さしずめこの本は時代時代の貴重な文章をしっかり心の中に取り込みなさいという意味も込められているのかもしれない。

司書の判断ミス。こういった出会いもうれしいのである。
コメント
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