イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「窓際OL 会社はいつもてんやわんや 」読了

2019年06月13日 | 2019読書
斎藤由香 「窓際OL 会社はいつもてんやわんや 」読了

しかし、この人が窓際というのなら、世の中のかなりのサラリーマンが窓際ということになるのではないだろうか。この人が窓際なら、僕なんか窓の下だ。それも屋外の・・・。そういう場所というのは上の窓からゴミしか落ちてこないのだ・・。

サントリーという超々一流企業の広報に在籍しているひとで窓際あつかいされている人というのはいないだろう。広報という部署は大概の会社は総務部門の一部門であるから会社の中枢であり会社の中でも限りなく役員たちに近い職場だ。この本にもそんな役員のことが面白おかしく書かれている。それだけを見ても窓際であるはずがない。職務上、有名タレントや作家と交流し、おまけにこんな本まで出版してしまうのだから“窓際”という冠にシンパシーを感じて読んでいるこっちが白けてしまうのだ。

著者は北杜夫の娘である。ということは斉藤茂吉の孫ということだから超サラブレッドだ。この本は当時(2005年ごろ)の週刊新潮に連載されていたものを1冊にまとめたものだそうだ。このころ、健康食品の拡販に力を入れていたサントリーが著者の知名度を使って今でいうステルスマーケティングを展開するために彼女を使ったというところが本音のところではないだろうか。「マカ」というサプリメントを持って企業や官庁のそれもかなり中枢の人々に直接接触して配るにはヒラ社員のほうが都合がよかったということだろう。配りに来る人が北杜夫の娘で斉藤茂吉の孫だとなると、「そうですか~。」となるというものだ。広告上手のサントリーのやりそうなことだ。

しかし、サントリーという会社はエリートというか、サラブレッドというか、すごい人たちと言っても過言ではない人たちが働いているようだ。著者は北杜夫の娘だが、この本の登場人物には宮本武蔵の末裔という人もいる。東大、京大はざらで首席卒業かもしくは大学院卒ばかりが登場する。

ここからは僕の友人の話だが、歴史がある会社というのはえてしてそうなのか、都市伝説のようにコネというものが会社の中に存在する。そんなものはうわさ話にすぎず、やっぱり仕事のできる人が偉くなるに決まっていると思っていたそうだが、あるとき、その当時の上司が「今度異動してくる人はこんな人。」とカルテのようなものを見せてくれたそうだ。
人事権を持っているわけではない彼はそんなものをその時まで見たことがなく、自分にもこんなデータがあるのかと過去の失敗や悪事も書かれているのかと恐怖したと同時に、「紹介者」という欄があったことに驚いたそうだ。この欄が人事にどれだけの威力を発揮しているのかわからないけれども、「コネがあると出世する。」という命題が真実であるとするならば、コネというのは会社の中では十分条件に限りなく近いものであるのだと肩をうなだれてしまったと言っていた。

ならばサントリーでもそうなのかと思うけれども、サラブレッドとなるとまた意味が違ってくるような気がする。ある才能が発揮されるためには遺伝子のスイッチが入ることが必要なのだそうだ。そして、そのスイッチが入るためには育つ環境が非常に重要である。とこの前のNHKスペシャルでやっていた。だから、歌舞伎役者の子供が歌舞伎が上手かったり、政治家の子供が政治家になって総理大臣になるというのもあながちコネや人脈だけではないらしいのである。
だとすると、文学者の子供はやはり文才があり、ビジネスエリートの子供は優秀なビジネスマンになるということか・・。そしていい会社にはそういう人たちが続々集まってきてさらに会社は繁栄する。そういえば、就職活動をしていた30年前の当時でも、サントリーにはよほどのことがないかぎり就職はできないと聞いたことがある。能力もしかりだが、きっとそういう家柄みたいなものがものをいう会社ではあるのだろう。非上場の会社だからそれはもっと顕著だったのかもしれない。この本にはサントリーと社屋が近いフジテレビの話もよく出てくるが、この会社には遠藤周作や宇津井健の子供が働いていたそうだ。庶民が働いてはいけない会社、もしくはそういうものが十分条件である会社というのは意外とたくさんあるのかもしれない。貴族の社会というものは現代でもちゃんと存在しているのかもしれないということだ。
そんなことも思いながら読んでいるとますますシラケテしまった。

コメント (4)
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