弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

法廷内での遺影持ち込みの是非

2006年12月11日 | 経験談・感じたこと
報道によると、交通事故で死亡した娘の遺影を、両親が刑事裁判の法廷内に持ち込もうとしたところ、札幌高等裁判所は、遺影の持ち込み不可という回答を行ったとのことで、物議が出ているようです。

最近、法廷内で遺影を持ち込むことについて、裁判所は比較的寛容になったと言われていますが、あくまでも担当裁判官の裁量です。
従って、裁判官が「NO」と言ってしまうと、遺影を持ち込むことができないことになります。
(ちなみに昭和時代は、法廷内でメモを取ることさえ問題がありました。)

私も、民事裁判ですが、遺影が傍聴席の真ん中に掲げられ、かつ交通事故に関する団体関係者の方々でいっぱいになった法廷で、3時間ほど尋問を行ったことがあります。
が、直接目にはいるわけではないので(傍聴席から見れば、弁護士は横向きにしか見えませんので、逆に弁護士からも、傍聴席を意識しない限り、あまり視界には入りません)、あまり弁護士業務に影響は無かったような記憶があります。
(さすがに法廷内に最初入ったときは、威圧感がありましたが…)

もっとも、裁判終了後、当事者・証人は、何とも言えない雰囲気があり圧迫感があったと言っていましたので、裁判の公平という理念を貫くのであれば、裁判当事者に何らかの影響があることが懸念される以上、遺影の持ち込みはダメという処分もあり得ることかも知れません。
なお、裁判官からすると、傍聴席と対峙するような位置に座ることになりますので、少々裁判がやりづらくなるのでしょうか?


いずれにせよ、本件では、札幌地裁では遺影OKだったのに、札幌高裁では遺影NOとなったため、遺族側は困惑しているのだと思います。
裁判官の裁量と言ってしまえば、それで済んでしまうのかも知れませんが、遺影を禁止するにしても、もう少し説明を行った方が、遺族側の理解も得られるのではないでしょうか。


関連するニュースへのリンク
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20061210STXKA007710122006.html

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