リベルテールの社会学

生きている人間の自由とは、私の自由と、あなたの自由のことだ。そして社会科学とは、この人間の自由を実現する道具だ。

感受性と表現力、の間に介在する生き方

2009-03-15 21:15:46 | コーヒーブレイク
 こんばんは。ようやく明日から春、と天気予報がいっております。
 うれしい。
 こう寒いと前回とおなじぐちしか書くことがありません、って、ここはぐちブログじゃなかったね。

 今日もなんかむずかしい題です、が実際はそう難しいことではなくて、でも無視されがちなことで。

 つまり、「写真を撮るのは感受性とそれを実現する表現力だ」みたいな文章が正しいかどうか、という話題です。写真なんてシャッター押すだけですからね。感じたまんまシャッター押してたらそれでいいじゃん、ま、構図とかもあるけどね、みたいにも思われます。が、そうかしら?

 例によって図書館で借りた写真雑誌で、借りてばっかだけど税金ほかで返してもらうことないし、で、その雑誌の写真コンテストに、相当気を引く少女の顔写真があって、別にかわいいとかじゃなくてね、キッと遠くを見つめる小学生、ってだけだけど、そのキッと、がちょっとすごい。ほお。と感心しました。作者が中野りりあさんて、中高年の方かな、根拠ないけど。ネットでたたいたら写真が上がってました、ほら、これ、ってリンク張れるといいんですが、やり方知らなくて。この前やろうとして失敗したのは書きました。HTMLとかじゃないとダメなんじゃないかなあ。興味のある方はここですけど。
 http://cpckanagawa.hp.infoseek.co.jp/prize/prize.html
 まあ、とにかくよい表情のものなんだとしまして、この写真はただの入賞。で、ここまでが前段。

 作者の方は、よい表情を見つける感受性を持ってらした、ということはあります。でも残念ながら、それを生かす表現ができなかった。ピントも合ってて、不満のない構図なんですけどね。残念ながら、キッという表情の後ろは春爛漫の菜の花畑なんですよ。

 キッという、表情が、それを見た人間に意味があるのは、小学生の純粋さ、に対する共感であり、それに対応する自分の立ち位置のはずです。人生への態度とかスタンスとかいうことですけどね。だから、それを押し出すのが表現としての写真です。

 感受性もある、ピンとも合わせられる、それで何が不満か。
 感じたことは、受け止められなければ、受け止められない、ということが伝わるしかない、ということです。この中高年の方には (決めつけてますね。違ってなくても謝っておいたほうがよいかも。ごめんなさい) 単にかわいい孫か姪っ子としてしか扱うことができなかった。だから背景はかわいい菜の花。それはそれでその方の表現ですから結構ですが、それはその表情を掴んだ自分の心とは違う。その眼を描くためには、たじろがない自分の生き方が要る。かくて、金賞ではなく入賞です。

 それは俳句以外ではなんでも同じ。自然以外で人を感動させるもの、つまり人間の生き方の表現で人を感動させるものは、感受性ではないのです。そして、表現技術でもない。この、他の人も感じるだろう感受性を、その媒介者である表現者が、自分の生き方として再提出することが必要なのです。
 キッとした目、小学生のとき、自分もそういう目をしたことがある、それは、じゃあ、どんな色をしていたのか。それは確かにいろんな色があるだろう、しかし、絶対に菜の花色ではない。いや、もちろん、僕が違うだけですけどね。

 写真もそうです。
 新聞なんかですと、たまたま通りすがりのカメラを持っている人の写真に報道写真賞とかを贈ったりします。しかし、人を感動させる写真とはそういうものではない。
 危機に臨んだとき報道写真を撮るかすぐに手助けに走るか、なんていう話題もある。しかし、それは写真家がする問答ではない。
 たとえば、沢田教一って写真家が昔、ピューリッツァー賞をとりました。ベトナム戦争で米軍の銃弾を逃げて泥川を泳いで渡るベトナム人の母子の写真です。そんなとき、報道写真家は自分も死ぬ気で撮っている。こんなことになんの疑いがあるものか。人が死ぬか生きるかを目の前にして、だれがあらあらどうしようなんて思って写真が取れるか。「畜生!」と心の中で叫びながら撮っている、俺を殺すなら殺せ、俺は写真を撮る。だから見ている人の心を打つ。その後我に返れば助けるかもしれないが(沢田の場合、母子を助けることができた)そんなことは関係のない話なのだ。そうでなくてなんの写真家か。写真とは、そういう生き方をしているから取れるものなのだ。

 というわけで、すべて、人を感動させるものは、自然以外は、生き方の表現だ、ということでした。



コメント
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