知床調査～カムイワッカの滝でのサプライズ

　金曜日になってやっと火曜日の書き込みです。今週は出張が二つ連続したので書き込みが大幅に遅れてしまいました。
　道東の旅２日目から再会です。

【知床ウトロへ】
　今回の出張は、運輸局と連携して、運輸局所管のビジットジャパンキャンペーンによる国際観光振興と、開発局所管の社会資本整備を組み合わせることで依り効果的な地域振興の方向性を見い出そうというものです。

　そこで昨年世界自然遺産に指定されて一躍観光地としての人気が高まった知床に注目したもので、ややバブル的な人気に慌てたこの一年間を振り返ってみた地元の皆さんの意見を伺うために運輸局の担当者と一緒にこの地を訪ねてきたのです。
　
　もちろん、それと同時に現地の土地勘を養っておくことも重要です。やはり我々は現場に立つという、現場主義を貫きたいものです。

　さて、運輸局さんの方からは「知床の観光遊覧船がどうも安っぽい、という話を東京の経済人が言っていた、と聞いているんです」とのことでした。

　そう言われてみると私も今まで乗ったことがありません。なるほど、これは乗ってみなくては始まらないということで、料金２７００円を払って乗ってみることにしました。

　ウトロ港から出航して知床半島の海岸線を眺めながら行く航路は、半島の先端まで行くコースと、途中のカムイワッカの滝までで折り返すコースの二通りがあるのですが、先端まで行くコースは９月で終了したとのことで、カムイワッカの滝までの船に乗りました。

　天気は曇りで雲が山の途中にかかっていましたが、海は波もうねりもなく、極めて穏やかな状態です。

　船も、冬には流氷の上を遊覧観光するものを使っていて、同じようなタイプの船が二隻ありましたが、それほど見劣りするようなものではありません。これなら一時間半の船旅も楽しめそうです。

　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※

　さて、知床の語源はアイヌ語の「シリ・エトコ」に由来しています。

　手元にある山田秀三さんの「北海道の地名」によると「『上原熊次郎地名考』というのがあって、それが『シレトコ。嶋の果てと訳す。此岬東西蝦夷地の端なる故地名になすといふ』と書いた訳し方が尾を引いて『地の果て』のように書かれてきたが、アイヌ語地名としてのシレトコの元来の意味はそういった感傷的なものではなかったようだ」と書かれています。

　山田秀三さんの見解では、シレトコはシリ・エトコ（shir-etok　地の突出部）、つまり「岬」という意味だそうで、樺太に二、三箇所、礼文島、白老町、青森県下北半島などにも散在していた地名だとか。

　知床半島の場合は、その北端の今は知床岬と呼ばれるあたりの小さな岬の名前だったようだ、と記しています。またシレトコは早い時代から近くのコタンの名としても使われたようで、「しろい所」と呼ばれたコタンもあったとか。

　こうした地名を巡る話題が豊かなことも観光地の豊かさに繋がりますね。アイヌ語地名は大事にしたいものです。

　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※

　さて船は、カムイワッカの滝まで来ると沖から時計回りにUターンをします。一番滝に近づいたところで船の先端で滝野写真を撮っていると、船内放送が流れました。

「え～、正面にカムイワッカの滝がご覧いただけます。また滝の下を熊が一頭歩いております。よく見て頂くと分かると思います」

　おぉ！滝の下の岸まで約１００ｍ位の距離ですが、たしかに滝の下を黒いものがのそのそと動いていています。持っていたデジカメのズームを最大にして見ると確かにヒグマではありませんか。
　野生の熊を見るのは私も初めてで、興奮しながらシャッターを切りました。

　船内からも人が出てきてカメラや携帯で写真を撮り始めました。携帯ではちょっと厳しい距離でしたが、ズーム付きのカメラならば野生の熊の写真を撮ることができたでしょう。

　それまでは垂直の断崖や、そこから落ちる滝などの雄大な風景を眺める船旅でしたが、熊が見えたことで知床の自然の豊かさを印象的に感じることができました。

　私などは船の先端に乗っていたのですが、船内放送が流れるまで熊の存在に気づきませんでした。これも毎日船に乗っていて、何度も熊を目にしているであろう船員さんの眼力とサービス精神の賜物です。

　熊が見られたことで２７００円という運賃はとっても安いものに変わりました。こういうハプニングは大歓迎です。

　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※

　ウトロ港へ戻ってからは、現在ウトロ地区で行われている、埋め立てによる港の拡張工事と国道の切り替え工事、併せて道の駅の建設現場を見せてもらいました。これらの工事で狭くて渋滞が多かった道路が格段に良くなることでしょう。

　ウトロでの夕焼けがきれいでした。