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「駿河安蘇備 上」を読む 80


庭のフリルパンジー

「駿河安蘇備」の上巻の解読を続ける。

大橋 この七村は、安倍郡の限りにて、大山前後に連なり、巌高く
(そび)え切立つこと、屏風を立てたる如く、西北は遠信に隣り、大井
川、山の腰を廻り、向う山里へ通う。この方より、かの山の端へ、刎ね
橋を渡す。これを大橋と云う。谷水峻々として、数丈の下に
流れ、路径(ろけい)嶮岨、語り尽くし難しと云う。その橋、長さ五十五間、
※ 路径(ろけい)➜ 小径。
幅二間、則ち大井川に架すなり。左右の山岸より、大木を刎ね出し、
元の方に巨岩をもって押え、その上に枕木を置き、十六間の大木を
三本突き出し、蔓(つる)にて絡み、枠にて本を挟み、丸太を敷き、
割木を並べ、麁朶(ぞだ)をまた蔓にて絡みたり。これ井川郷の通路
なり。大井川の源は甲斐の白嶺より出でて、当国志太郡に到りて、
海に入るなり。水道七十五里、この橋、その中間にして、川上三十六里、
下また三十六里余と云う。海野弥兵衛宅、井川郷にあり。家来百姓
百十八軒、口坂本九軒あり。同所を思い遣りて、
  〇人問わぬ 深山の奥も 春なれや
     霞渡れる 安倍の釣り橋     可安
(つづく)

読書:「惜別 鬼役 五」 坂岡真 著
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