●「救国の秘策」を説くエコノミスト
丹羽春喜氏は、日本経済復活のための「救国の秘策」を説くエコノミストである。現在は大阪学院大学名誉教授。ハーバード大学ロシア研究センター所員、関西学院大学、筑波大学、京都産業大学等の教授を歴任した。
丹羽氏は比較経済体制論ならびに経済政策論を専攻し、旧ソ連時代には、ソ連経済、特に軍事支出の研究の第一人者だった。平成2年(1990)に著書『ソ連軍事支出の推計』で防衛学会出版推奨賞を受賞した。
そうした丹羽氏は、平成6年(1994)から日本経済について、「政府の貨幣発行特権の発動によって国の財政危機を救い、わが国の経済の興隆をはかれ」と提言し続けてきた。私は、丹羽氏の提言を5年前、国際政治学者・藤井厳喜氏の『「破綻国家」 希望の戦略』(ビジネス社、平成17年[2005]6月刊)で知った。丹羽氏は、この時より以前に述べていた主張と以後に述べた主張が一貫している。まったくぶれがない。
丹羽氏は「国家財政が破綻に瀕して経済政策が麻痺し、国の衰退が深刻化してやまない悩み、これを一気に解決できる方法はないのかという発想からあみ出したのが、『政府貨幣・政府紙幣』発行権の大規模発動というビジョン」だという。独創的かつ大胆な発想ゆえ、一部の人にしか理解されず、また支持されずにきた。丹羽氏は、小渕首相・小泉首相に宛てて、「救国の秘策」を提言する建白書を送った。しかし、採用されるには至っていない。
今日、大多数の経済学者・評論家は、消費増税や国債増発をよしとする。だが、それに反対する有識者もおり、その中に丹羽氏の提言の賛同者がいる。丹羽氏が会長を務める「日本経済再生政策提言フォーラム」には、評論家・経済学者・経済人等が多く結集している。同会の理事長は、国際問題評論家として名高い加瀬英明氏である。小野盛司氏が主催する「日本経済復活の会」も、丹羽氏の理論を支持し、当会には70名以上の国会議員が参加し、経済人・経済評論家等が活動を続けている。
平成20年(2008)9月のリーマン・ショックによって「100年に一度の大津波」といわれる世界経済危機に直撃されている今、わが国を救う経済政策として、改めて注目を集めているのが、「政府貨幣特権の発動」である。丹羽氏自身、これを「世界大恐慌の危機対処への模範回答」(『政府貨幣特権を発動せよ!』)だと自負する。また財政事情がこれ以上も増税はできず、また国債が累増しているわが国においては、「もはやこの策以外には、打つ手はない」と断言する。
今回の世界経済危機について、私は、100年に一度ではなく、500年に一度の節目にあると考えている。500年に一度とは、西洋文明から非西洋文明、東洋・アジアを中心とした文明への転換を意味する。この転換は、単に文明の中心地域が移動するというだけでなく、文明の拠って立つ原理が変わることを意味する。
私は、日本には、世界のこの転換を先頭に立って進める役割があると思っている。しかし、わが国は平成20年(2008)まで、アメリカの圧力に押されて、アメリカに決定的に従属し、収奪し尽くされる寸前の状態だった。ところが、ここで大きな転機が訪れた。物質中心・拝金主義のアメリカは、サブプライム・ローン、リーマン・ショックによって、自ら座礁したのである。
ここにわが国に逆転の好機がある。わが国は世界経済危機の影響は米欧より少ない。ここで日本再興の経済政策を大胆に実行すれば、活路を開くことができる。日本の復活は、世界人類を共存共栄の社会に導く起動力となる。別項で紹介した菊池英博氏や丹羽氏らの提言は、こうした日本の再建と世界の共存共栄を切り拓く経済政策となり得ると私は注目しているのである。
●80歳にして旺盛な言論活動
丹羽氏は多くの著書と論文を出している。著書の中では、最近刊行された小著『政府貨幣特権を発動せよ。』(紫翆会出版、平成21年[2009]1月刊、以下『政府』)が、氏の所論の概要を知るのに最適である。
丹羽氏は昭和5年(1930)生まれ。本年(平成22年)80歳という高齢ながら、インターネットを駆使し、自身のサイトやブログに膨大な量の論文を載せている。中心的なサイトは、「新正統派ケインズ主義宣言」である。ここには、多数の論文の中から厳選された14の論文が公開されている。読者はこれらを読むことで、丹羽氏の理論と主張のエッセンスを知ることができる。また、ブログを開設し、日本経済と世界経済について旺盛な言論活動を行っている。「日本経済再生政策提言フォーラム」のサイトにも、多くの論文や報告が掲載されている。
経済学者に限らず、本格的な学者の中で、これほどインターネットによる活動に力を入れている人はわが国では珍しいだろう。しかも、80歳である。その精力的な活動は、驚嘆すべきものである。そして、そのエネルギーは、日本の危機を救い、人類を共存共栄の世界にいたらしめんとする情熱に発するものである。
新正統派ケインズ主義宣言
http://www.niwa-haruki.com/
※厳選した論文14本を掲載
丹羽春喜の経済論(ブログ)
http://niwaharuki.exblog.jp/
日本経済再生政策提言フォーラム
http://homepage2.nifty.com/niwaharuki/
丹羽氏の講演やインタビューを動画で見ることができる。氏の人柄に触れるには、ビデオを見るのがよいだろう。
ビデオ「財政政策で日本を再建せよ!!」丹羽春喜氏(平成21年7月)
http://www.youtube.com/watch?v=vWSfvY3Ay2g
ビデオ:丹羽春喜氏と藤井厳喜氏の対談(平成22年1月)
パート1
http://www.youtube.com/watch?v=ZinaorkW8TA&feature=fvw
パート2
http://www.youtube.com/watch?v=Vyp6ZWeI0-s&NR=1
パート3
http://www.youtube.com/watch?v=YzThl41wTBk&feature=channel
パート4
http://www.youtube.com/watch?v=GTvOOmRDBhE&feature=channel
パート5
http://www.youtube.com/watch?v=2fEo5FVHugQ&feature=channel
パート6
http://www.youtube.com/watch?v=UJpO4zqY_hc&feature=channel
パート7
http://www.youtube.com/watch?v=wjPKJGjVszo&feature=channel
パート8
http://www.youtube.com/watch?v=_wGh4OzD5H4&feature=channel
パート9
http://www.youtube.com/watch?v=ZBK_Qwg9oBk&feature=channel
パート10
http://www.youtube.com/watch?v=aHCuY0UVBzI&NR=1
パート11
http://www.youtube.com/watch?v=wDJYWcH8UBg&NR=1
本稿は、丹羽春喜氏の「救国の秘策」を紹介するものである。25回ほどを予定している。
次回に続く。
関連掲示
・拙稿「経世済民のエコノミスト~菊池英博氏」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13i-2.htm
8に菊池氏の「日本復活5ヵ年計画」を掲載。
丹羽春喜氏は、日本経済復活のための「救国の秘策」を説くエコノミストである。現在は大阪学院大学名誉教授。ハーバード大学ロシア研究センター所員、関西学院大学、筑波大学、京都産業大学等の教授を歴任した。
丹羽氏は比較経済体制論ならびに経済政策論を専攻し、旧ソ連時代には、ソ連経済、特に軍事支出の研究の第一人者だった。平成2年(1990)に著書『ソ連軍事支出の推計』で防衛学会出版推奨賞を受賞した。
そうした丹羽氏は、平成6年(1994)から日本経済について、「政府の貨幣発行特権の発動によって国の財政危機を救い、わが国の経済の興隆をはかれ」と提言し続けてきた。私は、丹羽氏の提言を5年前、国際政治学者・藤井厳喜氏の『「破綻国家」 希望の戦略』(ビジネス社、平成17年[2005]6月刊)で知った。丹羽氏は、この時より以前に述べていた主張と以後に述べた主張が一貫している。まったくぶれがない。
丹羽氏は「国家財政が破綻に瀕して経済政策が麻痺し、国の衰退が深刻化してやまない悩み、これを一気に解決できる方法はないのかという発想からあみ出したのが、『政府貨幣・政府紙幣』発行権の大規模発動というビジョン」だという。独創的かつ大胆な発想ゆえ、一部の人にしか理解されず、また支持されずにきた。丹羽氏は、小渕首相・小泉首相に宛てて、「救国の秘策」を提言する建白書を送った。しかし、採用されるには至っていない。
今日、大多数の経済学者・評論家は、消費増税や国債増発をよしとする。だが、それに反対する有識者もおり、その中に丹羽氏の提言の賛同者がいる。丹羽氏が会長を務める「日本経済再生政策提言フォーラム」には、評論家・経済学者・経済人等が多く結集している。同会の理事長は、国際問題評論家として名高い加瀬英明氏である。小野盛司氏が主催する「日本経済復活の会」も、丹羽氏の理論を支持し、当会には70名以上の国会議員が参加し、経済人・経済評論家等が活動を続けている。
平成20年(2008)9月のリーマン・ショックによって「100年に一度の大津波」といわれる世界経済危機に直撃されている今、わが国を救う経済政策として、改めて注目を集めているのが、「政府貨幣特権の発動」である。丹羽氏自身、これを「世界大恐慌の危機対処への模範回答」(『政府貨幣特権を発動せよ!』)だと自負する。また財政事情がこれ以上も増税はできず、また国債が累増しているわが国においては、「もはやこの策以外には、打つ手はない」と断言する。
今回の世界経済危機について、私は、100年に一度ではなく、500年に一度の節目にあると考えている。500年に一度とは、西洋文明から非西洋文明、東洋・アジアを中心とした文明への転換を意味する。この転換は、単に文明の中心地域が移動するというだけでなく、文明の拠って立つ原理が変わることを意味する。
私は、日本には、世界のこの転換を先頭に立って進める役割があると思っている。しかし、わが国は平成20年(2008)まで、アメリカの圧力に押されて、アメリカに決定的に従属し、収奪し尽くされる寸前の状態だった。ところが、ここで大きな転機が訪れた。物質中心・拝金主義のアメリカは、サブプライム・ローン、リーマン・ショックによって、自ら座礁したのである。
ここにわが国に逆転の好機がある。わが国は世界経済危機の影響は米欧より少ない。ここで日本再興の経済政策を大胆に実行すれば、活路を開くことができる。日本の復活は、世界人類を共存共栄の社会に導く起動力となる。別項で紹介した菊池英博氏や丹羽氏らの提言は、こうした日本の再建と世界の共存共栄を切り拓く経済政策となり得ると私は注目しているのである。
●80歳にして旺盛な言論活動
丹羽氏は多くの著書と論文を出している。著書の中では、最近刊行された小著『政府貨幣特権を発動せよ。』(紫翆会出版、平成21年[2009]1月刊、以下『政府』)が、氏の所論の概要を知るのに最適である。
丹羽氏は昭和5年(1930)生まれ。本年(平成22年)80歳という高齢ながら、インターネットを駆使し、自身のサイトやブログに膨大な量の論文を載せている。中心的なサイトは、「新正統派ケインズ主義宣言」である。ここには、多数の論文の中から厳選された14の論文が公開されている。読者はこれらを読むことで、丹羽氏の理論と主張のエッセンスを知ることができる。また、ブログを開設し、日本経済と世界経済について旺盛な言論活動を行っている。「日本経済再生政策提言フォーラム」のサイトにも、多くの論文や報告が掲載されている。
経済学者に限らず、本格的な学者の中で、これほどインターネットによる活動に力を入れている人はわが国では珍しいだろう。しかも、80歳である。その精力的な活動は、驚嘆すべきものである。そして、そのエネルギーは、日本の危機を救い、人類を共存共栄の世界にいたらしめんとする情熱に発するものである。
新正統派ケインズ主義宣言
http://www.niwa-haruki.com/
※厳選した論文14本を掲載
丹羽春喜の経済論(ブログ)
http://niwaharuki.exblog.jp/
日本経済再生政策提言フォーラム
http://homepage2.nifty.com/niwaharuki/
丹羽氏の講演やインタビューを動画で見ることができる。氏の人柄に触れるには、ビデオを見るのがよいだろう。
ビデオ「財政政策で日本を再建せよ!!」丹羽春喜氏(平成21年7月)
http://www.youtube.com/watch?v=vWSfvY3Ay2g
ビデオ:丹羽春喜氏と藤井厳喜氏の対談(平成22年1月)
パート1
http://www.youtube.com/watch?v=ZinaorkW8TA&feature=fvw
パート2
http://www.youtube.com/watch?v=Vyp6ZWeI0-s&NR=1
パート3
http://www.youtube.com/watch?v=YzThl41wTBk&feature=channel
パート4
http://www.youtube.com/watch?v=GTvOOmRDBhE&feature=channel
パート5
http://www.youtube.com/watch?v=2fEo5FVHugQ&feature=channel
パート6
http://www.youtube.com/watch?v=UJpO4zqY_hc&feature=channel
パート7
http://www.youtube.com/watch?v=wjPKJGjVszo&feature=channel
パート8
http://www.youtube.com/watch?v=_wGh4OzD5H4&feature=channel
パート9
http://www.youtube.com/watch?v=ZBK_Qwg9oBk&feature=channel
パート10
http://www.youtube.com/watch?v=aHCuY0UVBzI&NR=1
パート11
http://www.youtube.com/watch?v=wDJYWcH8UBg&NR=1
本稿は、丹羽春喜氏の「救国の秘策」を紹介するものである。25回ほどを予定している。
次回に続く。
関連掲示
・拙稿「経世済民のエコノミスト~菊池英博氏」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13i-2.htm
8に菊池氏の「日本復活5ヵ年計画」を掲載。