ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

構造改革を告発した経済家26

2010-12-08 07:51:10 | 経済
●日本財政の考え方を正す(続き)

(4) 財政改革の数値目標は世界中ですべて大失敗
 「財政改革と称して実行した数値目標は、世界中どこでも大失敗している。具体的には次のとおりだ。
 1985年のアメリカ:『財政均衡5ヵ年計画』(最高裁が違憲判定)
 1989年のアメリカ:父ブッシュ大統領の失敗、再選されず
 1980年代のアルゼンチン:プライマリー・バランス目標達成後に国家破綻
 1997年の日本:橋本財政改革が平成金融恐慌を引き起こした
 2001年からの日本:『基礎的財政収支均衡策』の結果は『ゼロ、マイナス成長』で債務だけ増加」

 菊池氏は、「世界中で、プライマリー・バランスの均衡化目標を定めている国はどこにもない。10年ほど前に、アルゼンチンがプライマリー・バランス均衡化政策をとって緊縮デフレ政策を行った。その結果、国内は大不況になり、ついに対外的に債務不履行(デフォルト)に陥り、まさに国家が崩壊してしまったのだ」と言う。
 菊池氏は『増税が日本を破壊する』でも次のように述べている。「日本は常に貯蓄が投資を大幅に上回っており、貯蓄超過分を政府が公共投資などの形で使用しないと、資金が順調に回らない」。これがわが国の経済体質である。「まして、デフレのときには、この傾向が顕著である。それゆえ、基礎的財政収支を強引に黒字にする政策は、現実的に妥当な考えではない。黒字にすると、経済が停滞し、財政不況になる。「日本の場合には、黒字にしないで、新規国債(建設国債)、を発行して経済を活性化して、拡大均衡政策をとるべきであり、これが日本の財政を健全化する唯一の道である」と菊池氏は説いている。

(5) 経済を活性化させれば、財政規律は改善する
 「経済を活性化させ、名目GDPが増加する政策をとれば、財政規律の指標は自然と改善する。1993年から5年間で財政赤字を解消したクリントン・モデルで実証済み」

 菊池氏によると、クリントンは、所得税・法人税の最高税率を引き上げた。同時に、財政支出を公共投資と投資減税に集中して、民間投資を喚起する政策をとった。こうした積極財政で景気を振興させた結果、名目GDPが増加し、政府の国民負担率が低下し、財政規律が改善された。また税収の自然増収で、財政赤字を5年で解消した。これが、1993年からのクリントン・モデルの教訓である。これが「財政規律の鉄則」である、と菊池氏は言う。

(6) 特別会計の債務は国民の債務ではない(財政危機ではない理由)
 「特別会計が発行している国債は一般国民の負担にはならない。だから、国民向けの政府債務から除去すべきである(2007年3月末現在、305兆円)。特別会計では、政府が国民から徴収した税金と国債発行によって調達した国民の預貯金の資金で事業を行い、国債の利息と元本は『最終的に資金を借りた者』(註 最終借入人)から返済しているので、特別会計は自己完結している(国民の債務ではない)」

 菊池氏は、次のように説明する。
 「特別会計は巨大な国立銀行であり、銀行の預金に相当するものが国債であり、資本金に相当するものが税収である。国債は銀行預金と同じで、政府の債務であり、税収は政府の自己資金である。その資金は最終借入人が利用しており、その最終借入人が利息を払い、期日には返済する。だから、特別会計の国債(債務)は国民が負担する債務ではない」。
 「財務省が発表する政府債務の中に、特別会計の債務である政府短期証券、財投債、借入金があり、一般会計の債務と合計して、「政府債務は一人当たり○○万円」と発表して財政危機を煽っている。しかし特別会計の債務は特定の借入人を想定して(国債を発行して)借り入れ、その借り入れた資金を運用して収益を上げ、借入主体から利息を取り、元本は期日に返済させている」。それゆえ、「財務省は、特別会計で発行した国債を粗債務から除外すべきだ。これは国民の負担ではない」と言う。
 「特別会計の債務」が増えているのは、菊池氏によると、次の理由による。①2001年度から、従来、財務省の理財局に預託されていた郵貯資金の預託をやめ、財投債を発行することになったこと(財投債140兆円増加、借入金53兆円減)。②2003年から04年にかけて、財務省がドル買いをするために、多額の政府短期証券を発行したこと(108兆円増加)。
 「1999年9月まで、外貨準備を購入するための資金は、政府が発行する政府短期証券を日本銀行が引き受けて(買い取って)いた。ところが、国民が知らないうちに、1999年10月から政府短期証券が市場で売りっぱなしにされており、われわれ国民の預貯金がアメリカ国債に投資されるシステムになっている。この結果、日本は自分のおカネを自分のために使えなくなっている。『外貨準備は中央銀行の資金で調達すべきである』という主要国の方針に戻すべきである」と菊池氏は主張している。

 次回に続く。