ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

バブル崩壊進行の中で、中国は天安門事件25年を迎えた

2014-06-04 08:53:39 | 国際関係
 1989年(平成元年)に天安門事件が起こった。民主化を求めて天安門広場に集まった学生・青年に対し、中国共産党は人民解放軍を動かして、虐殺を行った。多くの学生・青年が天安門事件で殺された。
 シナ系評論家の石平氏は、次のように語っている。「天安門事件は、建国史上最大の民主化運動だった。共産党は戦車部隊まで出して自国の学生運動を鎮圧し、虐殺した。どれだけ殺されたか不明であり、いつ明るみに出るかも分からない」
 目撃者の証言を総合すると、人民解放軍は天安門広場に集まった学生・青年が逃げられないように出口を防いだうえで、学生・青年を無差別に射殺し、また戦車で轢き殺したようである。中国政府当局は死者319人としているが、事件発生の3日後に中国赤十字の広報担当者が外国メディアに対して2600人と言明している。その後、重傷者が多く死亡したことから、実際は3千人に上るとの見方がある。
 昨25年10月28日、北京中心部の天安門前で車両突入事件が起きた。中国共産党政府は事件を「テロ事件」と断定し、ウイグル族への弾圧を強めている。この事件をきっかけに、1989年の天安門事件の写真がネット上で広く閲覧されている。それによって改めて事件の残虐さが注目されている。





 下記のページの写真には凄惨なものがあるので、閲覧には注意されたい。
http://shar.es/IULyJ
 89年の天安門事件当時、欧米や香港等の新聞・雑誌・書籍が事件を報じる写真を掲載した。下記のページは、多くの写真とその出典を掲載している。出典には、「タイム」「ニューズウイーク」「ロサンゼルス・タイムズ」等、著名な媒体もある。やはり残虐な写真が多く閲覧には注意されたい。
http://www.cnd.org/HYPLAN/yawei/june4th/
 中国の人民解放軍は、人民のための軍隊でも国家のための軍隊でもない。共産党のための軍隊である。共産党軍は国民党軍との内戦を通じて権力を獲得した。もともと同胞に銃を向け、殺戮してきた軍隊である。
 天安門事件後、中国共産党政府はこの事件の真実を隠すことで、政権の維持を図った。 それまで中国共産党は、「人民のための人民の政権」という論拠で中国を支配してきた。しかし、天安門事件で多数の学生・市民を虐殺したことによって、人民の信頼を失い、「正統性の危機」に直面した。そこで小平と江沢民は、共産主義に代わる国民統合の思想として愛国主義を打ち出し、民衆の不満を日本に向けるため、反日教育を推進した。愛国主義・反日教育は、天安門事件を隠すために考え出されたものである。中国共産党が日本帝国主義に勝利したという虚偽の歴史を作り上げ、中国共産党の正統性を強調し、共産党の独裁が必要という思想を民衆に吹き込んだ。また、1992年(平成4年)、小平が南巡講話を発表し、本格的な市場経済への移行を断行した。高度経済成長のもたらす繁栄は、共産党の一党独裁に新たな正統性の根拠を与え、政権安定の基盤をつくった。
 ところが、一党独裁と市場経済の矛盾を抱えたままの経済成長は、腐敗の蔓延、貧富の差の拡大、農村の疲弊等を生み出し、平成23年(2011)には、暴動・騒動事件の発生件数が18万件を超えたと伝えられる。これは毎日全国どこかで約500件が発生している計算になる。暴動の内容も警察の車両や地方庁舎を襲撃する暴動が続発している。習政権になって、爆破事件が続くなど、行動は激化している。背景には、中国経済の悪化がある。多くの農民が土地を失い、大学生は深刻な就職難に苦しみ、住民は環境汚染で生活に不安を持っている。そうした中で、不動産バブルの崩壊がいよいよ現実になってきている。
 昨年後半から不動産バブルの崩壊が現実となってきており、今年の2月ころから、バブルの崩壊が本格化している。不動産価格の暴落は2月半ばから浙江省の中心都市の杭州で始まった。3月10日には、大都会の南京で2つの不動産物件が25%程度の値下げとなった。21日には江蘇省の常州市、23日には無錫市で値下げ以前に不動産を買った人びとが販売センターを襲う「打ち壊し事件」が起きた。
 石氏は、今後の展開を大意次のように予想している。今後広がる不動産開発企業の破産あるいは債務不履行は、そのまま信託投資の破綻を意味する。それはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招く。金融規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当する「影の銀行」が破綻すれば、経済全体が破滅の道をたどる以外にない。「生きるか死ぬか、中国経済は今、文字通りの崖っぷちに立たされているのである」と。シナ大陸は、広大である。それゆえに、バブルの崩壊は一気には進まない。地方都市から各地域の主要都市に波及し、徐々にしかし確実に全土に広がっていくだろう。そして、全土の規模でバブルが崩壊した時、中国経済はどん底に落ちる。
 こういう進みゆく危機の中で、中国は天安門事件25年を迎えた。民主化への兆しが、ないわけではない。中国版ツイッター「微博」での政府批判や、ノーベル平和賞授章者・劉暁波氏の解放を求める国際運動、香港での天安門事件25年の真実究明デモ等である。だが、別の方向に進む可能性は遥かに高い。それは、中国共産党のファッショ化である。中国は、平成元年(1989)から猛烈な軍拡を続けている。共産党政府は、江沢民のもと反日愛国主義の教育を行なった。国民は、統制の中で、日本への憎悪と敵愾心をたきつけられている。特に若い世代がそうである。それが、過激な反日的行動となって現われている。胡錦濤政権の10年間は、政府による反日政策は少し抑えられていたが、習政権になると、江沢民時代に逆戻りしつつある。習政権は、現状に不満を募らせ、各地で暴動を起こしている国民のエネルギーを、国外に向ける可能性が大きい。増大する国民の不満をそらすために、中国政府がファッショ化し、対外的に強硬な行動を行う可能性がある。
 中国経済がどん底に落ち、窮状打開のために、人民解放軍が周辺諸国に侵攻する。わが国及び日本人は、そのことを警戒し、しっかり備えをしておくべきである。経済政策とともに防衛政策を強化し、しっかりと国益及び領土・領海を守るための備えをしなければならない。
 以下は関連する報道記事。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●共同通信 平成26年6月3日

http://photo.sankei.jp.msn.com/kodawari/data/2014/06/03china/
武力弾圧、今も正当化 天安門事件から25年の中国
2014.06.03

 中国当局が学生らの民主化運動を武力弾圧した1989年の天安門事件から4日で25年となる。中国政府は当時の民主化運動を「政治風波(騒ぎ)」と位置付けて武力弾圧を正当化し続けている。習近平指導部は犠牲者の家族や民主活動家を拘束したり、軟禁したりして発言の機会も封じ込んでいる。
 中国政府の宣伝部門幹部は「(民主化運動を)果断に抑え込んだことが現在の経済発展につながった」と強調。別の幹部は「触れられたくない過去」と指摘した上で「体制批判につながる可能性が今も高い」と述べた。当局は「事件封印」のためメディア規制を強化している。
 中国では新疆ウイグル自治区などで無差別暴力事件が頻発。習指導部は天安門事件から四半世紀という「デリケートな日」(中国政府関係者)を控え、北京で警察や武装警察を総動員して厳戒態勢を敷いた。(共同)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140603/chn14060319590005-n1.htm
「天安門事件の犠牲者は3千人」 遺族が香港紙に
2014.6.3 19:59

 香港紙、明報は3日、天安門事件で子供を亡くした親の会「天安門の母」の創設者、丁子霖さんのインタビューを掲載した。丁さんは当局が319人としている死者数について、実際は2600~3千人に上るとの見方を示した。
 丁さんは現在、江蘇省無錫市で軟禁下に置かれ、同紙も最近は連絡が取れなくなっているとしており、インタビューが行われた時期は不明。
 死者数の根拠について、丁さんは事件発生の3日後に中国赤十字の広報担当者が外国メディアに対して2600人と言明したと指摘。その後、重傷者が多く死亡したとして「信用できる数字だ」と強調した。(共同)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

関連掲示
・拙稿「中国経済は破滅の道を進んでいる~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/2a4648f3f584dc37f86adc41d64b0785