ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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人権56~氏族・部族の社会的権力

2013-08-09 08:41:06 | 人権
●社会的権力~氏族的・部族的な権力

 社会的権力は、ある社会的な集団の内部または他の社会的な集団との関係において、その集団の維持・繁栄を実現するために、集団の成員を統率・指導し、また財産を運営する権力である。社会的な権力は、その中に家族的な権力を含み、国家的な権力の中に含まれる。社会的な権力のうちには、氏族的・部族的な権力と組合・団体・社団的な権力がある。またこれらの諸権力は、政治的な権力に発展する場合がある。政治的な権力が国家に係るものとなったものを、国家的な権力という。ここではまず氏族的・部族的な権力について述べる。
 家族を最小単位として、氏族や部族が形成される。氏族は、共通の祖先を持つという意識で結ばれた出自集団であり、複数の家族が共通の先祖のもとに集合した共同体である。氏族は家族が拡大したものであり、家族と同様、血縁と婚姻の関係を主とした自然的・生命的な集団である。氏族もまた生命の維持・継承を根本的な目的とする。部族は、一定の領域に居住し、共通の文化を持つ人々の集団であり、複数の氏族が血縁と婚姻の関係または誓約による同盟によって集合した共同体である。部族は必ずしも共通の祖先を持たない。部族は共同体の維持・発展を根本的な目的とする。
 家族・氏族・部族は、生命を共有する集団である。集団の維持・存続・繁栄のために、決まりごとがあり、成員はそれに従って生活する。氏族や部族では族長を中心に有力者の間で合意がされ、掟や法が定められる。そこに社会的な権利が発生する。氏族・部族における権利は、家族における権利に関する考え方が基盤となっている。氏族や部族の成員は、集団の目的のために行動するから、通常、その権利は協同的に行使される。社会的な権利の相互作用を、力の観念でとらえたものが、社会的な権力である。社会的な権力は、成員の意思の合成によって生み出される力であり、集団の合力である。
 氏族・部族においては、主な権利が族長に集中し、族長はその地位に伴う権利を実現する権威を伴う強制力を持つ。それが氏族的・部族的な権力の中心的なものとなる
 氏族・部族の長に求められるものは、基本的には家長の場合と同様に統率力や指導力である。それに加えて必要な能力がある。
 第一に必要なものは、軍事指揮の能力である。族長は軍事指導者であり、軍事的指導力は、他の集団の侵攻から共同体を防衛し、また生存・繁栄のために他の集団を攻撃し支配する能力である。族長は集団の意思を統合し、実力を組織し、これを指揮することができねばならない。
 第二に必要なものは、祭祀執行の能力である。共同体の祭祀を主宰し、神または祖霊と意思交通ができ、神威や霊威を受けて集団の生存・安全・平和・繁栄等を実現する能力である。共同体においては、祭儀と政治は一体のものとして行われてきた。族長は伝統や慣習に基づいて、祭祀を執り行うことができなければならない。
 第三に必要なものは、公益実現の能力である。家族的な権力が私的な権力であるのに対し、氏族的・部族的権力は公共的な性格を持つ。しかし、氏族・部族における公共性は私独性に侵され、公私の混同が行われがちである。族長は氏族・部族内の諸集団に共通する利益を実現するために、私独性を超えた統率・指導を求められる。
 族長は、統率力・指導力に加えて、こうした軍事指揮・祭祀執行・公益実現の能力を示すことによって、権威を高め、その地位に伴う権利を維持し、行使することができる。その権威を伴う強制力が、族長の権力として支持される。

 次回に続く。