ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

尖閣:中国海軍の示威に屈するな

2012-10-29 09:41:23 | 尖閣
 10月16日、中国海軍の艦艇が初めて日本西端の接続水域を通過した。与那国島-西表島間の海域で、与那国島の南南東約49キロ付近と伝えられる。尖閣国有化に対抗し、侵攻・略奪をもくろむ中国政府が、武力による示威行動を行ったものと受け止め、警戒したい。
 中国の指導層には、好戦的な意見と慎重な意見があるのだろうが、好戦的な部分に注目すると、中国共産党機関紙「人民日報」は、7月13日の記事で、わが国政府の尖閣国有化方針を非難し、「国と国との関係は子供の遊びではない」「(挑発が)度を越せば、釣魚島問題を制御できなくなる危険性がある」「日本の政治家たちはその覚悟があるのか」「国の核心的利益について、中国は半歩でも退くことはない」などと、強硬な論を張り、武力行使も辞さない姿勢を示した。
 9月に入ると、人民解放軍から、自衛隊が尖閣諸島に出動した場合、軍事行動を辞さないとする発言が相次いだ。読売新聞9月21日号が伝えるところでは、中国系香港紙「文匯報」によると、北京で同月15日、将軍5人の座談会が開かれ、徐光裕少将(軍防化指揮工程学院の元副院長)は「海上自衛隊が釣魚島(尖閣諸島の中国名)の12カイリ内に入るか、中国の民間船舶を攻撃すれば、断固として軍事行動を取る」と述べ、他の4人も主戦論を展開したという。また軍関係の研究機関・中国政策科学研究会の彭光謙少将は同月14日のシンポジウムで、「自衛隊が釣魚島に上陸すれば、一線を越えたことになる。軍はいつでも使命を履行できる」と述べたという。
 対外的には、強硬な発言をすることで日本人を威嚇し、領土を守る意思を挫こうとするものだろう。また国内的には、政権内での軍の発言力を強め、政府中枢に圧力をかける意図もあるだろう。今回の中国海軍艦艇の接続水域通過による武力による示威行動は、こうした好戦的な部分が具体的な形を取ってきたものと理解し、尖閣防衛の体制整備を急がねばならない。現状では、わが国独自の防衛体制整備ができておらず、米軍の協力に頼らざるを得ない。
 こうしたなか、10月22日陸上自衛隊と在沖縄米海兵隊による沖縄県の無人島を使った離島奪還訓練が予定されていた。しかし、実施直前にオバマ政権は統合演習の中止を決めた。中国を刺激しないためという理由らしい。相手を刺激しないために訓練を取りやめるというのは、誤ったメッセージを発することになる。そのためか分からぬが、24日中国海洋調査船が尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)において事前通報とは異なる範囲で調査活動を行った。25日には中国の海洋監視船「海監」4隻が尖閣沖の日本領海に侵入した。28日にも侵入を繰り返した。日本の接続水域内での中国公船の航行は8日連続となった。中国は尖閣周辺の海域を自国の領海や管轄区域のように振る舞う行動を常態化させ、わが国を屈服させようと狙っているものだろう。こうした中国の圧力に屈せず、自らの領土を守り抜く意思を強くし、尖閣防衛のための具体的措置を早急に進めるべきである。米国頼みの状態を続けていれば、中国には攻め取られ、米国には裏切られという最悪の事態に立ち至るだろう。
 以下は関連する報道記事。

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●読売新聞 平成24年9月21日

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120920-OYT1T00290.htm
自衛隊が尖閣行けば…中国5将軍「軍事行動だ」

 【北京=竹内誠一郎】中国人民解放軍内で、日本の自衛隊が尖閣諸島に出動した場合、軍事行動を辞さないとする発言が相次いでいる。
 強硬姿勢を示して日本をけん制する一方、危機を強調することで政権内での軍の発言力を強める政治的意図もあるとみられる。
 中国系香港紙「文匯報」によると、北京で15日、将軍5人の座談会が開かれ、徐光裕少将(軍防化指揮工程学院の元副院長)は「海上自衛隊が釣魚島(尖閣諸島の中国名)の12カイリ内に入るか、中国の民間船舶を攻撃すれば、断固として軍事行動を取る」と述べた。他の4人も主戦論を展開した。
 軍関係の研究機関・中国政策科学研究会の彭光謙少将は14日のシンポジウムで、「自衛隊が釣魚島に上陸すれば、一線を越えたことになる。軍はいつでも使命を履行できる」と述べた。
(2012年9月21日07時57分 読売新聞)

●産経新聞 平成24年10月17日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121017/plc12101701300000-n1.htm
中国軍艦接続水域を通過 日本への示威行動 米軍に「二正面作戦」迫る
2012.10.17 01:30

 中国海軍艦艇が16日、初めて与那国島-西表島間の海域を通過した。これまで中国艦艇の太平洋への出入り口となってきたのは沖縄本島-宮古島間だったが、今回はより狭い海域の接続水域を航行。沖縄県・尖閣諸島にも接近し、尖閣国有化に対抗する示威行動といえる。南シナ海から尖閣付近へと針路をとり、米軍に「二正面作戦」を迫るという中国側の周到な狙いも透けてみえる。
 今回の7隻は中国を出港後、今月4日に沖縄本島-宮古島間を通り、太平洋に抜けた。その際、ある自衛隊幹部は「米軍空母への牽制(けんせい)だ」と明言していた。
 米第7艦隊は2日、横須賀(神奈川県)を拠点とする空母「ジョージ・ワシントン」に加え、米本土を母港とする「ジョン・C・ステニス」の2つの空母部隊を西太平洋に展開させる異例の態勢を公表した。これに対抗するため、7隻は派遣されたとみられる。
 7隻は16日、フィリピン沖の南シナ海からルソン海峡を通過。太平洋に入り北上した後、尖閣方面に向かいかけた。南シナ海、太平洋、東シナ海という広大な海域を縦横無尽に動き回れることを誇示したわけだ。
 米軍は戦力の分散を余儀なくされた。セシル・ヘイニー米太平洋艦隊司令官は都内で記者団に「中国は海上能力を使う際には『透明性』を伴うべきだ」と警戒感を示した。
 こうした米中の応酬を新たな「角逐」の始まりとみる防衛省幹部もいる。2008年から中国海軍は遠洋訓練を活発化させてきたが、それにとどまらず、今後は米海軍への牽制を「常態化」させるというのだ。
 「台風を避けるためで、尖閣に近づく意図はない」。防衛省関係者によると中国側はそう説明したという。だが、台風避難の名目で尖閣に不法上陸し、「人道的観点」から上陸を正当化するのは中国の尖閣奪取シナリオの一つだ。政府高官は「これも『世論戦』の一環だ」と指摘した。(半沢尚久、千葉倫之)
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