ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

「トッドの移民論と日本」第1部をアップ

2011-11-01 16:33:58 | 国際関係
 現在連載中の「トッドの移民論と日本」を編集して、マイサイトに掲載しました。第1部となる第1回から第48回の分です。お読みになりたい方は、次のページへどうぞ。

■トッドの移民論と日本1~トッド篇
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion09i.htm

 目次は次の通りです。

<目次>
 はじめに
 第1章 移民に関する人類学的考察
 (1)ヨーロッパの統合
 (2)国家の役割と国民・移民
 (3)統一ヨーロッパにおける移民問題
 (4)画期的な研究書『移民の運命』
 第2章 『移民の運命』の概要と検討
 (1)アメリカの場合
 (2)イギリスの場合
 (3)ドイツの場合
 (4)フランスの場合
 (5)トッドの主張と批判的摂取
 第3章 欧米の現在と将来
 (1)深まる混迷
 (2)オランダとドイツの悲劇

トッドの移民論と日本93

2011-11-01 08:44:29 | 国際関係
●オーストラリアは中国人移民に侵食された

 多文化主義から政策を転換したハワード政権は、2007年の選挙で敗退した。首相のハワード自身が現役候補でありながら、落選した。河添恵子氏は著書『中国人の世界乗っ取り計画』(産経新聞出版、2010)で、「保守連合の大敗は自業自得ともいえる」と述べている。白豪主義をやめたオーストラリアは、ハワード政権で多文化主義へと大転換し、有能な人材の積極的確保、技術移民を重視する政策を打ち出した。そのことで、「『人民を海外へ放出したい』中国の目論見と『海外へ出たい』人民の願望とが合致、大量流入を招いてしまった」。その結果、「オーストラリアもわずか10余年の間に永住権取得者、そして市民権取得(=国籍変更)、もしくはその予備軍となる中国系定住者を大量に抱えてしまった」と河添氏は述べている。
 2007年11月、落選した保守連合のハワードに代わって、労働党のケビン・ラッドが首相に就任した。ラッドは、親中派である。中国語が堪能で、1980年代には外交官として中国赴任の経歴を持つ。息子2人も中国語を習い、娘は中国系と結婚している。ラッド家は、“LOVE中国ファミリー”として知られる。ラッドが首相になったことにより、オーストラリアは、中国への傾斜を強めた。2010年6月に同じ労働党のジュリア・ギラードに首相の座を譲った。
 2007年11月の選挙は、国民の4分の1がオーストラリア以外の出身という人口構成で行われた。そのため、移民層の支持の有無、とりわけ大都会に集住し、増え続ける中国系移民がキャスティングボードを握ったとさえ言われている。河添氏は、保守陣営からは「ラッド政権は中国系オーストラリア人が作った」「オーストラリアは中国人移民に乗っ取られ、正真正銘のホワイト・チャイナになった」「オーストラリアの最大貿易相手国である中国の影響がさらに強くなる」といった声が上がったと伝えている。
 浅川氏は『移民国家ニッポン』で、オーストラリアを日本がめざすべき「移民国家ニッポン」のモデルにしている。特に社会統合を重視する点を学ぶべきと強調する。
 だが、親中派のラッド政権の動向まで視野に入れるならば、日本が学ぶべきはオーストラリアの巨大な失敗である。オーストラリアは、移民を大量に受け入れる政策を採ったことにより、中国人が多数移住し、「ホワイト・チャイナ」と化しつつある。この失敗を絶対繰り返さないようにするには、日本はどうあるべきかを考えなければならない。
 オーストラリアは多文化主義に転換し、問題が表面化してから政策を変更して、社会統合を重視する方向に進めようとした。だが、ポイントは、いかに社会統合に努めても、人数を多く入れすぎたら、同化することができなくなることである。社会の同化能力を超えて、移民が増え続けると、後戻りできなくなる。移民がキャスティングボードを握り、政治に影響を与える段階になれば、それまでは統合してきたとしても、主客が逆転することさえ起こり得る。為政者が権力を維持するために、少数者である移民の要望に応えようとするからである。坂中氏・浅川氏は、こうした移民政策の危険性に触れていない。
 ヨーロッパにおけるムスリム系移民と、アジア太平洋地域における中国人移民の流入は、条件が全く違う。先にこの点を詳しく書いたが、中国人は受け入れ社会に同化せず、独自の集団行動をする。国籍を取った国の利益よりも、中国、及び中国人の利益のために行動する。しかも中国人移民の背後には、中国という巨大な国家が存在し、共産党の指導のもとに集団的に行動する。米英独仏における移民の例は、中国人にはそのまま参考にならない。欧州の移民の概念で、わが国が移民政策を行うと失敗する。その点で、わが国は、中国人移民に侵食されつつあるオーストラリアの失敗を注視すべきである。オーストラリアをモデルとして「移民国家ニッポン」を目指すことは、日本のシナ化、日本の中国への併合の道である。

 次回に続く。