ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

現代の眺望と人類の課題131

2009-06-20 09:35:28 | 歴史
●「ミスター規制緩和」「現代の政商」

 宮内義彦氏は、2001年(平成13年)小泉内閣が成立すると、総合規制改革会議の議長となった。04年から07年(16~19年)までは、規制改革・民間開放推進会議の議長を務めた。宮内氏が政府の審議会に参加した1995年(7年)以来、首相は何人も替わった。しかし、宮内氏は10年以上、一貫して規制緩和と民営化を推し進めてきた。人は彼を「ミスター規制緩和」と呼ぶ。

 宮内氏は「規制改革の司令塔」であり、「小泉改革の旗振り役」だった。
 小泉―竹中政権の5年間、「官から民へ」のスローガンのもと、規制緩和や民営化政策が強力に進められた。6000項目以上にのぼる規制緩和が推進された。規制緩和と民営化政策は、自民党による政界・官界・財界の癒着を断ち、日本の旧弊な体質を変える画期的な政策であるかのように、国民の多くには見えただろう。
 しかし、その実態は、先に書いたように、外資の要望によって外資の進出を許し、日本のアメリカへの再従属化をいっそう進めるものだった。またその結果、日本の社会に生じたものは、経済的な格差の拡大、それに伴う自殺や殺傷事件、家庭崩壊等の多発だった。その過程で、規制緩和や民営化政策は、日本の内部に新たな利権を生み出し、一部の企業や投資家を潤した。この利権を最大限に追及した者こそ、宮内だった。

 宮内氏は、政府の審議会のトップとなり、規制の緩和・撤廃を、第三者・有識者の立場から強く、また具体的に要望した。その一方で、規制緩和が実施されると、緩和された分野に投資をして、新会社を立ち上げ、利益を上げていた。たとえばオリックスは、規制緩和でトラック、タクシーの事業用リース(賃貸)車両が解禁されると、リース業界のトップとして恩恵を受けた。また製造業への労働者派遣を解禁した04年(16年)の労働者派遣法改正も、規制改革会議が推進したものだったが、オリックスは人材派遣会社の大株主となって利益を上げた。また、オリックスは、医療分野の規制緩和により、自由診療の高度医療の株式会社参入が認められると、オリックスはその第1号の株式会社の主要株主となって、事業を展開している。
 政府に規制緩和を求める民間人の中心人物が、規制緩和で儲かる事業をして、莫大な収益を得る。規制緩和に関するインサイダー情報をつかみ、その情報を使って儲けを図っていたのである。宮内氏が、現代の「政商」といわれる所以である。政商の生みの親は、小泉元首相だった。小泉政権誕生が、宮内オリックスの急成長のきっかけとなったのである。

 こうした宮内氏の利権追及がついに社会問題化したのが、「かんぽの宿」の問題であると私は思う。宮内氏は、小泉―竹中政権の郵政民営化政策を民間の立場から支持・推進した。そして、民営化された日本郵政が「かんぽの宿」を売却しようとした先が、宮内氏のオリックス不動産である。ブッシュ子に追従した小泉元首相と「外資の手先」と批判された竹中元郵政民営化担当相が生み出した郵政民営化利権に、宮内氏のオリックスが預かったという構図である。
 オリックスというと、日本の企業のように思うが、実態は外国人持ち株比率が50%を超える外資系企業である。宮内氏は、外資系企業に雇われている日本人経営者なのである。

●竹中大臣が叩き売りを可能とする附則を押し込む

 2009年(平成21年)1月、当時の鳩山邦夫総務相は、宮内のオリックス不動産に「かんぽの宿」を一括譲渡することに反対するという方針を明らかにした。鳩山氏は、売却に不正があった場合には「郵政民営化自体に疑問が出てくる」と指摘した。民営化したとはいえ、日本郵政の株式はすべて国が保有している。それゆえ、「かんぽの宿」は、実質的には国の財産である。売却は、国民にオープンな手続きの下で行うべきなのに、入札の詳細が公開されず、「出来レース」と受け取られる状況だった。そこが追求されれば、郵政民営化そのものが問い直されることになる。
 私は、辞任した鳩山大臣が一括譲渡に反対したのは、法と正義によるものとは見ていない。鳩山氏は郵政民営化賛成派である。郵政民営化をよきものとし、民営化を正当化したかったのだろう。だから、鳩山氏は「かんぽの宿」問題が郵政民営化そのものの見直しへと拡大しないように、動いたものと推測する。見直しが拡大すれば、批判は郵政民営化を推進した政治家に及ぶ。さらに自民党の政権基盤を揺り動かす。鳩山氏の行動は、そうならない範囲で行動だったと思う。

 実は04年(16年)9月に閣議決定された「郵政民営化の基本方針」には、「郵便貯金関連施設事業、簡易保険加入者福祉施設事業に係る施設、そのほか関連施設については、分社後のあり方を検討する」としか書いていなかった。その後も、郵政民営化準備室が国会議員ら向けに作った説明資料でも、これらの施設を譲渡・廃止とは書いていなかった。ところが、成立した郵政民営化法案の附則には、日本郵政は郵貯や簡保の施設につき、「譲渡又は廃止等の業務を行うものとする」と明記してあった。
 この附則を押し込んだ者は誰か。担当責任者は、当時の竹中大臣である。竹中氏が、郵政民営化法案に外資への叩き売りが可能となる附則を押し込んだのである。そして、当然、当時の小泉首相はその動きを承知していただろう。

 次回に続く。