ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

9・11~欺かれた世界25

2007-10-17 08:56:48 | 国際関係
●アメリカの戦費を、間接的に日本が分担

 ここでアメリカの戦費と日本経済との関係を記しておきたい。国家予算は、税金でまかなっている。戦費が嵩めば、財政赤字が増える。赤字を税金で減らそうとすれば、国民には重税となる。国民の不満が募り、政権は支持を失う。しかし、アメリカは、自国の経済に他国の経済を組み込むことで、国家財政を維持する構造を作り上げた。そして、その国家間経済構造が、アメリカの圧倒的な軍事力を支えている。
 冷戦下の1980年代、ソ連の増大する軍事力が西側諸国に大きな脅威となっていた。これに対抗するため、レーガン大統領は、強力な軍事力をつくりあげる政策を打ち立て、その経済的な分担を、日本に要求した。そして、アメリカの軍事力と日本の経済力が合体することにより、ソ連の経済を行き詰まらせ、遂に共産主義体制の崩壊を引き起こすことに成功した。共産主義の克服と世界平和の実現に向けて、日米は歴史的な役割を果たした。
 しかし、この過程は、日本にとって、日本経済が、アメリカ経済に構造的に組み込まれる過程でもあった。その組み込みをもたらした発端が、昭和60年(1985)9月のプラザ合意である。プラザ合意とは、日米独の協調介入で、ドルを1ドル240円台から140円台に下降させたものだった。それによって、日本はアメリカの財政赤字と貿易赤字を支える。アメリカは双子の赤字を膨らませながら、繁栄を維持できるという構造が作られた。その後、日本は20年以上も超低金利政策を取り続けている。金利が低ければ、資金は金利の高いほうに動く。つまり、日本の資金はアメリカに流れる。アメリカにとっては、ドルが還流してくることになる。こうした日米合意の金利政策が、ドルの下落を防ぐ役割をしている。

 アメリカは、GDP世界一を誇る経済大国である。それとともに、1000兆円以上の財政赤字を抱えた世界最大の債務国家でもある。アメリカは、国債を他の国々に買わせて、財政を支えさせている。その債務請負人の筆頭が、わが国・日本である。
 日本国は、アメリカ国債を約1兆ドル(1ドル=100円として約100兆円)保有している。民間も含めると2~3兆ドルになっているとも見られる。総額430兆円になるという推算もある。この債券は実際には、売ることのできないものである。売却すれば莫大な為替差損を計上しなければならない。またドルを売ることゆえ、円高を促進してしまう。それゆえ米国債は、回収不能の不良債権と同じである。事実上の永久債である。
 いかに圧倒的な軍事力を持っていても、経済が崩壊すれば、その力を維持することはできない。アメリカは、ドルを防衛しないと、軍事的優位を維持することは、できないのである。その点で、わが国がアメリカの世界的覇権を支えているもう一つ要素が、為替介入である。
 わが国は、ドルの暴落を防ぐために、巨額のドル買をしている。平成15年(2003)から平成16年(2004)8月にかけては、35兆円も投入して、ドルを買い支えた。わが国は、献身的な為替介入をしている。その資金は、もとを正せば、国民の富である。日本人が働いて生み出した富の相当部分が、アメリカの赤字を埋めるために差し出されている。

●従属構造を脱するには、憲法の改正あるのみ

 アメリカは、9・11以後、アフガン=イラク戦争を行なった。戦争は終結した事になっているが、実質的には続いている。米軍の撤退の見通しも立っていない。戦費は、増大している。わが国は、軍事・政治だけでなく、金融においてもアメリカに従属している。この従属構造は、わが国に利益をもたらしてもいる。自ら国を守るための軍事費を抑え、アメリカに国を守ってもらうという利益。中東から輸入する石油の輸送経路、シーレーンをアメリカの軍事力で守ってもらうという利益。そういう点では、わが国が差し出している富は、まったく見返りのないものではない。しかし、一個の独立主権国家のあり方としては、国民が自国への誇りや気概を失い、他に言われるがまま付き従い、求められるままに献上し、精神的に腑抜けになっているのが、わが国の姿なのである。

 このような状態になった根本原因は、憲法にある、というのが私の見方である。現行の日本国憲法は、独立主権国家として立つべきわが国の主権を制限している。国防をアメリカに依存せざるをえない規定となっている。そのことが、上記のような従属構造をもたらしているのである。
 9・11以後、アメリカが起こしたアフガン=イラク戦争に、わが国が付き従わざるをえなかったのも、ここに根本的な原因がある。憲法を改正し、独立主権国家としての自主性・主体性を回復・発揮していかない限り、わが国は、この構造から抜け出すことはできない。
 9・11以後、アメリカが起こしたアフガン=イラク戦争に、わが国が付き従わざるをえなかったのも、ここに根本的な原因がある。憲法を改正し、独立主権国家としての自主性・主体性を回復・発揮していかない限り、わが国は、この構造から抜け出すことはできない。
 9・11というなぞの多い事件は、日本人に、自らの精神を取り戻し、自らの意思によって立つことを迫る出来事だと私は思う。

次回に続く。