ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

食と健康と日本の再建12

2007-03-05 09:39:18 | 教育
●食のしつけをしっかり行う

 子どもを育て、社会でその一員として生活できるようにするために、しつけをすることは、親の重要な役割である。教育哲学者の森信三氏は、しつけの三原則として、挨拶、返事、片づけを挙げている。この三原則に基づいて教育をして、立派な教育をしている保育園や幼稚園があると聞く。しつけを行なう人は、必修の原則である。
 私は、森氏の三原則に学びつつ、さらに前の段階に、食事と排便のしつけがあると思う。人間は、教育をしないと、動物とそう変わらない。子どもは、好きなように飲んで食べて、欲求のままに便をする。飲んで食べて出す、という最も本能的な行為を、社会の決まりや文化の習慣に沿ってできるようにすることは、しつけの基本中の基本だと思う。
 トイレの話はさておき、食に関することを言えば、社会生活に必要なルールやマナーを身に付け、その社会の文化や伝統を体するためには、家庭で、食に関する決まりや習慣を教えることは重要である。そのためにも、共食という行為が大切である。子どもとの食事の機会を通じて、決まりや礼儀、基本的な生活習慣を身に付けさせる。それは親がなすべき責任である。
 食に関するしつけは、挨拶や行儀、姿勢、食をつくってくれた人への感謝や共に食べる人への配慮が含まれる。箸の使い方や、ものの噛み方、食器の持ち方や置き方、食事中の会話等についても、基本的なことを身につけさせねばならない。
 こうした基本的なことを子どもに身につけさせるには、繰り返し反復して教えるしかない。毎日毎食の繰り返しの中で、ようやく身についていくものである。そのための最良の教師は、母親である。

 しつけは「つ」のつく間にせよ、と言う。「つ」がつくと言うのは、「一つ」「二つ」と年齢を数えて、「九つ」までが、その年齢に当たる。中でも、3歳までが、特に大切な時期である。「三つ児の魂百までも」と言うことわざがあるが、生後、3歳までの期間が、人間の成長において、特に大切であることは、脳の科学、児童の教育学・心理学・精神医学等でも、共通して言われていることである。
 子どもが3歳までは、母親ができるだけ家庭にあって、子供に接して、愛情を持って育てることは、子どもの心身の発達に非常に重要である。同時に、子どもにしつけをし、基本的な生活習慣を身につけさせるためにも、重要なことである。

 そして、5歳の時に一人でできるものとして、「行儀よく食事ができる」、「遊んだ後の片付けができる」といった基本的な習慣の習得を目標にして、子どもにしつけをするとよいだろう。
 しつけは、子どもがやがて親から自立し、社会において、その一員として行動ができるようにする基本的な人間教育である。自分の行いには責任を持つということを子どもに自覚させ、「自分のことは自分でする」、「他人に迷惑をかけない」といったことを、繰り返し教え、聞かせる。できたら褒(ほ)め、できなかったら叱る。根気のよい努力が、しつけには求められる。子どもに対して、それが出来るのは、子どもに対して愛情がわくからである。また、親として子どもを一人前の人間に育てなければならないという責任を感じるからである。

 こういう点で、母親が、子供のために手料理をつくって食べさせるということは、子どもにとっても、親にとっても、貴重な行いだと思う。自分の子どもに、これを食べさせてやりたい、あれを食べさせてやりたいと思う母親の心は、愛情に満ちている。子どもが「おいしい」と言って喜ぶ、満足げな顔を見ることは、母親にとっても、喜びであり、満足となる。また、子どもが母親への感謝の言葉を言うことは、一層の喜び、満足となるだろう。

●感謝の言葉と心を教える

 食事の場において、「いただきます」と「ごちそうさま」を子どもに言わせるように、しつけることも、大切なことである。幼い子どもには、「いただきます」と「ごちそうさま」を言う意味は、まだわからない。しかし、親や年長者が「いただきます」と「ごちそうさま」と言い、手を合わせ、頭を垂れる行為を真似したり、真似させたりすることによって、後々、その習慣に込められた心を理解できるようになる。
 「いただきます」と「ごちそうさま」には、自然の恵みへの感謝や、調理をしてくれた親への感謝、生活を支えてくれている親への感謝、社会で働いている人々への感謝など、さまざまな意味が込められている。
 こうした食における習慣を身につけることが、社会において、その一員として生きるうえで大切な心を育てる基礎となるのである。一定の年齢になれば、そうして「いただきます」と「ごちそうさま」を言うのか、その意味を語って聞かせるとよいだろう。

 また、母親は、子どもに対し、父親への感謝を言って聞かせることも、必要である。子どもは、母親が父親に感謝し、尊敬する心を持っていれば、子どもの心にも父親への感謝と尊敬が育つ。そういう子どもは、父親に叱られた時、素直に言うことを聞く。そこに、父親によるしつけが可能になる。
 逆に、母親が父親の働きを当然とし、軽蔑する心を持っていれば、子どもは父親に感謝せず、尊敬もしない。こういう場合は、父親が子どもを叱っても、子どもは言うことを聞かない。親をなめてかかるようになり、わがままを通そうとする。よほど注意すべきところだと思う。

 食事の場において、作物ができ、食物として食卓に並ぶまでには、多くの人々が汗を流して働いていることを、折に触れて子どもに話すことも、心がけたい。親がそういう話をしていれば、子どもはやがてその意味を理解するようになり、働く大人への感謝の気持ちを持つようになる。それは、自分が社会の一員として、何かの役割を果たして、社会に貢献することをめざすことにつながっていく。

 このように、食を通じたしつけ、家庭教育は、子供の成長や人格形成において、極めて重要なことであり、親がなすべき役割であり、責任であると思う。
 
 次回に続く。