ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

ヘリコプター・ベンとバズーカ・クロちゃん

2016年07月12日 | ニュース・コメント

  先週のアメリカの雇用統計やアベノミクスの信認に反応して、株価がずいぶんと戻していますね。為替も円安に大きく振れました。大きな動きがあるとつい私なりの解説をしたくなります。シリーズをそっちのけで、今回もニュースコメントですみません。

  アメリカの雇用統計はどのエコノミストも言っているように、「月々の数字に反応するのではなく、冷静にトレンドを見るべきだ」と思います。攻防ラインは昨年までの20万人の攻防から確実に低下していて、15万人程度の攻防になっています。5月と6月を足して2で割れば、そのあたりの数字になります。それでもアメリカの株価はS&P500が史上最高値を更新してしまいました。でもダウ30種平均はそこまで強くない。その理由はアップルです。

  なんだかんださんへのコメントでも書きましたが、アップルはもう過去の人になりつつあります。私がアップルを嫌いなわけではありません。むしろ好きです。初めて買ったPCはマックだし、iPODで音楽を聞き、iPADは旅行の必携品として愛用しています。ただ私はiPHONEは持っていません。というより、スマホはいらないので持ちません。月々の払いが高すぎるからで、安くなれば使ってやってもいいと思っています(笑)。必要なときは家内や友人を頼れば済むし、ガラケイでも済むことが多い、というイージーな考えです。もっと言えば、ゲームはやらないし、本は本で読みたい。歩きスマホや自転車スマホが私に向かってくるとそれだけで危険を感じ腹が立つ、典型的オヤジだからです(笑)。

 

  さて、円が3円ばかり安くなりました。でもこの2・3日、「相対的危険通貨とみなされる円が売られました」とは誰も言いません(笑)。きっとまたなにかのきっかけで円が買われると、例の得意顔の解説、「相対的安全通貨とみなされる円が買われました」とコメントされるのでしょう(爆)。

  株価が戻して円が売られているのか、円が売られて株価が戻しているのか、ほぼ同時進行なので統計的に因果関係を割り出すことは困難のようです。そうした状況を説明する統計用語は「両者の相関関係は強い」です。相関係数という統計指標も計算可能です。

  現在の発達した解析ツールをもってすれば、ほんの数秒の時差であっても、どちらかが原因でどちらかが結果かを解析するのは可能です。よく出てくる景気の「先行指数、遅行指数」という解析方法と同じで、それを秒単位あるいはコンマ秒の単位でやれば、因果関係を推定できます。しかしそれができないほど円と株は因果関係ではなく、相関関係にすぎないというのが現状なのでしょう。ちょっとわかりづらかったら、ごめんなさい。


   そして今度の参院選挙の結果は、公示前後の予測調査とほぼ同じで、いわゆる改憲勢力が3分の2をうかがうだろうとの予測が、実際に3分の2に達した、という結果でした。

  消費増税の先送りと言うアメダマにまんまと国民がしゃぶりつき、「アベノミクスは信任された」となりました。そして今後は、何度も書いていますが、「改憲に突き進む」ことになります。

  もちろんその前にうるさい株やさんちのエコノミストを黙らせるために、当選御礼おひねりのバラマキがあります。それにより焦点を改憲に移しても、株やさんちのエコノミストたちは批判をしなくなります。実に巧妙なやりかたで2匹目のどじょうすくいがはじまります。羊頭を懸けて狗肉を売る、増税先送りを掲げて改憲を売るのがいつもの手口です。

  アベチャンは昨年末以来、消費増税延期のための状況証拠作りに、世界の権威あるエコノミスト連中を使ってきました。彼は今回もすでにヘリコプター・ベンをタイミングをよく来日させています。ベンは昨日クロちゃんと会い、今日はアベチャンと会うそうです。これでバラマキも正当化できるハズです。足りなければさらにペリコプター派の追加投入があるでしょう。

  ヘリコプター・ベンとは、前FRB議長ベン・バーナンキ氏のことで、彼はFRB議長をやるよりずっと以前から、「景気刺激が必要なら、ヘリコプターから撒くほどにマネーをばらまけばよい」と言っていました。特に日銀に対しては2000年頃から強硬にそれを主張し、論文まで書いているのです。そのためまたの名をヘリコプター・ベンと呼ばれるようになったのです。アベチャンはバーナンキの前で、「ぼくちゃんをヘリコプター・アベチャンと呼んで」と言ってうけを狙いそうです(笑)。

  すでにベンの弟子のヘリコプター・クロちゃんがバラマキを目指したバズーカ1号発射から3年が経ちました。しかし世の中におカネがあふれるなんてことは全くありません。もしヘリコプター・ベンが会見をしたら、記者は「ヘリコプターから撒いたおカネはどこに行ったの?」と元祖を糾すべきです。3年もやってダメなものは、4年やっても5年やってもダメ。後遺症がひどくなるだけです。

  そしてすでに報道され始めたように、アベチャンは経済対策の名の元、補正予算を10兆円、あるいはブルームバーグあたりの報道では20兆円も投入を考えるとのこと。金融政策がダメとなると、20年以上にわたりダメだった財政投入です。20年ダメだった財政投入は、30年やっても絶対にダメ。

  年度予算上のバラマキはすでに赤字分の40兆円にも達していることを、繰り返しみなさんにお伝えしています。しかし世間ではエコノミストやマスコミも含め、予算上の40兆円のバラマキは忘れ去り、追加部分のみに話題が集中して、累積債務の積み上がりを気にする気配は全くありません。

  ポピュリズムの支配する恐ろしい世界がイギリスだけでなく、日本でも迫りつつあります。昨日のミネソタ州の警官による黒人男性射殺事件が、助手席の女性同乗者による実況中継から、あっという間に世界に拡散する時代です。ポピュリズムの拡散などいとも簡単に行われそうです。

  あの恐ろしいISISでさえ、自爆テロリストを簡単に世界中で集めることができ、実際に自爆テロが頻発しています。自分が死ぬという究極の恐ろしいことでも、ポピュリズムは打ち負かしてしまう。

  今後の政治家の資質とは、ポピュリストとしてアメやおカネを撒き散らし、いかに人気取りをするかだけになってしまいました。私のブログはそうしたポピュリズムとは完全に一線を画し、ブレることなく、、物事の本質を数字で見ぬきながらしっかりと運営していくつもりです。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

20年国債もマイナス金利、の意味

2016年07月08日 | 大丈夫か日本財政

   私は煽り屋さんは嫌いですが、煽り屋さんでない人が書いた驚くようなレポートが昨日の日経電子版に載っていましたので、一部をそのまま転載します。

引用

  野村証券が7日、1年後の日経平均の見通しを6500円とするシナリオを提示したのだ。背景にあるのは日銀の動き。政府債務の引き受けなどにより円の信認低下が起きれば、日本から資金が逃避する「悪い円安・悪い株安」が進む可能性がある。

引用終わり

  これは4つあるシナリオの最悪ケースだそうですが、少なくとも野村證券がこうしたレポートを用意したというところに最大の意味があります。

  こうしたシナリオにも関わる質問が私のもとにきましたので、それに対する回答を参考のためみなさんにも以下に披露させていただきます。

 

   一昨日の債券市場で日本国債の残存20年物までがマイナス金利になったという報道がありました。長期国債の代表銘柄である10年物国債はすでに2月にマイナス金利に達していましたが、超長期債のカテゴリーに入る20年物までがマイナス領域に達したということです。ということは日本国債の大半がマイナス金利になってしまったことを意味します。

  質問;これがどういうことを意味しているのか解説をお願いします

とのリクエストをいただきましたので、私なりの解説を試みます。

 

  まずその象徴的意味は、「日本国債はまともな投資対象ではなくなった」ということです。買ったら損が確定するものが投資対象でないことは、あまりにも当たり前です。

   この当たり前のことに四の五の屁理屈を付けるアナリストやエコノミストがいますが、おかしいものはおかしいのです。国債というもっとも大切な投資対象を投資に値しなくしてしまった国、そしてその元凶である日銀はもちろん狂っています。

 

  「王様、あんたは裸だよ」と言えないマスコミもついでに狂っています。それは見たことのないデジャブを私に見せてくれます。今度の選挙結果いかんでは、大本営に「あんたは裸だよ」と言えなかったかつての日本人が見えてきそうで、とても怖いのです。

 

  マイナス金利の国債は、それでも買う投資家がいるからマイナス金利になってしまうのですが、何故そんなバカな投資家がいるのか。

   理由は、もっと大バカな投資家がいてさらに高く買うからです。その大バカ投資家により高く売りつければ儲かるので、おバカな投資家は買うのです。その大バカとは日銀です。

 

  じゃ、日銀はすごく損するのか。

もちろんです。

  そのツケは誰がはらうのか。国民、つまり我々です。私は講演会の要旨にも書きましたし、講演会でも強調しましたが、「おかしいことはおかしい」のです。それをはっきりと言わなくなると、国は危うくなります。

   ここからは若干難しい話になりますが、なるべく易しい解説を試みます。

   債券は価格が高くなると金利は低下します。金利がマイナス領域にまで低下したということは、価格は非常に高くなっているということになります。完全に債券バブルという状態です。いったい誰がそんなに高い価格になるまで買い進んでいるのか。

   債券投資をする機関投資家です。銀行などの金融機関、そして海外投資家などです。国債の長期投資家である生保やゆうちょ銀行などはもう一切買いません。何故ならマイナス金利の債券を償還まで保有すれば、必ず損失が出るからです。ではなぜ銀行や海外投資家は買うのか。それはもっと高く買い取る日銀のクロちゃんがいるからです。あくまでも短期のキャピタルゲイン狙いです。

   クロちゃんは2%のインフレを達成するまで国債を爆食すると言い、みんながそろそろやめたらと言っても、上げた拳を決して下ろしません。日銀はすでに国債の全発行残高の3分の1以上を買っていて、市場には国債がなくなりつつありますが、それでも絶対に買い続けるであろうという見通しの下、銀行や海外投資家は日本国債を「投機対象」にしているのです。

   投資ではなく投機だと断定するのは、それがババ抜きゲームだからです。最後まで持てば損するババを最後に掴むのは日銀だという確信があるので、ババ抜きゲームに参加し続けているのです。

    このマイナス金利のババ抜きゲームが意味するところをさらに解説します。例えば機関投資がマイナス1%で1年物国債を買うとします。価格は通常100円であるところ、101円で買います。すると1年後には100円しか戻らないので1円損します。それがマイナス1%の国債投資です。金利があっても同じですが、ことが複雑になるだけなので、この際無視します。

   その101円の国債を日銀が102円で買うので、おバカな投資家は買えるのです。すると1年後に日銀は2円損します。日銀が買った時点の市場金利はマイナス2%になってしまいます。

   国債は毎年百数十兆円発行されますが、その発行時の金利は市場で決まった金利、このケースではマイナス2%に設定されます。

   その新規発行国債をおバカな機関投資が102円で買います。何故また日銀と同じくおバカな価格で投資をするのか。理由は大バカな日銀が103円で買ってくれるからです。

   すると次の国債発行は103円でされ、・・・・どんどん高い価格へ、つまりマイナス金利が助長されていきます。

   日銀は市場で国債がなくなりつつあっても買うと言っていますから、価格は無制限に高くなります。

   マイナス金利とは、そうした負のスパイラルに入ってしまう性質を持っています。

   国は102円や103円で発行しても、返す時、つまり償還時は100円で済むので、どんどん得をします。従って国債発行に歯止めはかかりません。その分損をするのは日銀です。じゃ、日銀が収拾つかないくらい損失を出すとどうなるのか。もちろんそのツケは我々が税金で払わされます。

   こうした負のスパイラルが組み込まれているのがマイナス金利なのです。

以上

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカ経済と世界的金利低下

2016年07月05日 | アメリカアップデート

  イギリスではBREXITの余波が依然つづいていますね。旗手ジョンソン氏の敵前逃亡に続いて、お先棒を担いだイギリス独立党のファラージ党首も逃亡してしまいました。世界はあきれはて、英国民は離脱派まで無力感にとらわれているという報道がありました。愚かさのツケはIMFのラガルド氏の宣告、イギリスの成長率は3年後の「19年までに最大4.5ポイント下押す」ということで支払うことになりそうです。

 

  では「アメリカ経済と世界的金利低下」のシリーズに戻ります。6月14日に開始しましたが、途中でBREXITという一大イベントが入り長く中断したため、今回はその3回目です。

  1回目は、アメリカ経済の悲観的見通しの検証でした。4月の雇用統計の結果をもってだいぶ悲観的な見通しが多くなりました。それに対して私は雇用以外の統計数値を示して、以下のように述べました。

  「雇用統計の衝撃的数字も、そのものだけでなく周辺の数字やアメリカ経済の重要な指標を織り交ぜて考えると、ここから奈落の底へ向かうとは全く思えません。」

  そして世界的なカネ余りが続く中で、主要国の金利が押しなべて低下している様子を数字で示しました。レベル感としては「これはもう質への逃避が起こっていると言ってもいいくらいです」と述べました。その低金利はBREXITでさらに拍車が掛けられ、本格的に「質への逃避」となっています。現状は若干戻してはいますが、今後BREXIT以前に復帰するには時間がかかりそうです。6月13日の数字と現状を比較しましょう。アメリカ市場がお休みのため、先週末の数字です。

各国の10年物指標金利   6月13日  7月1日

アメリカ          1.62%   1.44

英国           1.23         0.87

ドイツ           0.02       ▲0.11

フランス          0.39        0.18

日本           ▲0.17%      ▲0.26

  各国とも0.2%程度低下しています。最低水準は0.3%くらいの低下でした。

  シリーズ2回目は、昨年末の金利見通しにおける重要な要素が変化していないかの検証でしたが、レビューしてみると見通しとさほどのかい離はありませんでした。それがないのに、金利だけが見通しよりも下方に行ってしまっています。しかも私はBREXITはないだろうとの見通しの下、さわぎがおさまれば相場は落ち着くだろうとも書いていました。

  ところが現実にはBREXITという世界が震撼するほどの衝撃が起こってしまい、各国の金利も上に示した通り、さらに下向いてしましました。

  一方為替は円からドルに転換しようと目論んでいた方には絶好のチャンス到来だったと思いますが、逆にあまりの円高に委縮してしまい、ドル転をためらう方も多くいらしたのではないかと想像しています。

  私は為替の専門家ではないので的確な予想などできないと再三申し上げています。そして昨年末の「今年の予想」では130円方向への円安を予想していました。ここまでは全く逆で、今年前半の結果は為替のプロのうち珍しく3分の1程度いた円高予想派が当てています。私の12月17日の記事を引用します。

引用

エコノミストや為替アナリストの見通しは、利上げがありそうだというあたりから、めずらしく大きく割れています。来年には130円に向かうという見通しと、いや110円に向かうという見通しです。比率としては円安組3分の2、円高組3分の1程度です。

  昨年末の今年の予想は穏やかな円安でほぼ一致していたのが、この2・3か月余りで見方が割れてきました。これまでのように120円付近で変わらずという人はほとんどいません。

引用終わり

  では私の金利見通しの見込み違いを検証してみます。

  私はまず昨年12月の私の金利に影響を及ぼすであろう6つの要因分析をレビューしましたが、決定的に違う方向にいっているものは見当たらないと申し上げました。そしてみなさんにも、「何かあったらご指摘ください」とお願いしました。それに対して特に反応はいただけませんでした。

  私なりに振り返りますと、見込み違いの一番の原因は、利上げと景気循環の連動性を軽視したことだと思います。アメリカの量的緩和策がゆっくりと終了に向かったいわゆる「テーパリング」が一昨年秋に終り利上げが始まったころ、私はこれは「正常化への過程だ」と説明しました。それは景気の行き過ぎを抑えるため、というこれまでの利上げとは違い、まずは異常なゼロ金利を正常なレベルまで戻すという意味です。従って、今年のように成長率見通しが昨年より多少低くとも、利上げは何回かは行われ、長期金利もある程度上昇すると見ていたのです。

  アメリカの実質GDP成長率を四半期ごとに簡単に追ってみますと、

15年第2四半期   3.9%

  第3四半期  2.0%

  第4四半期  1.4%

16年第1四半期  0.8%

  実にコンスタントに低下しつつあります。この状況ではFRBも利上げには踏み切れず、長期金利も簡単には上昇しないでしょう。つまり正常化への復帰であっても、やはり成長率鈍化には勝てない。

  そこにもってきてBREXITまでが金利を大きく抑制する要因として出現してしまいました。これも私の予想外のできごとです。世界経済の連携が強まるとアメリカのような大国は、自国のみの都合だけではすべてを決断できなくなっています。

つづく

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イギリスのEU離脱問題 BREXIT 第3弾

2016年07月02日 | イギリスのEU離脱 BRE

  BREXITの衝撃波は、第一波がやっと去りつつあるようです。しかし離脱物語は同じようなストーリーが何度でも繰り返されそうですね。今後スコットランドの英連邦離脱や、欧州数か国のEU離脱などもありうるような波状攻撃のため、リーマンショックの時よりたちが悪いかもしれません。

  いまさら「国民投票をすべきではなかった」とか、離脱に投票した人が「投票をやり直したい」とか言っていますが、覆水盆に返らず。ポピュリストに乗せられた愚かな己を呪う以外にありません。

  ボリス・ジョンソンは離脱が決まって招集された国会に姿も見せることができませんでした。自分で掲げた公約を直後に撤回しなくてはならなかったため、蟄居したのでしょう。離脱派のファラージ独立党党首とジョンソンのキャンペーンバスに書いてあった「EUに週480億円も払っている」というのが、実は3分の1の160億円程度で、「国民医療サービスの財源にするぞ」と言っていたのを、即時撤回しています。

  「離脱派に騙された」と言っている人たちの後悔もこの点に集中しています。

   しかもジョンソンは保守党党首にも立候補しない。つまり離脱の尻拭いは残留派に任せるという選択をしたわけで、無責任極まりない。勝利した瞬間に「あれは間違いだった」という離脱派の首領が二人もいるイギリス、そしてなによりもそれをしっかりと検証し、批判していなかったイギリスの保守党とマスコミ。いったいこの国はどうしたんでしょう。イギリスは長期低迷の道に入るかもしれません。ご愁傷様です。

  私は先日この結果に喜んでいる人たちとしてまず、トランプ、プーチン、習近平、金正恩、エルドアンなどを掲げましたが、今一人、密かにほくそ笑んでいる人を忘れていました。ヒラリーです。今回のジョンソンを反面教師として、トランプを支持してきたアメリカ国民は己の愚かさに気づいたに違いありません。支持率が低下を始めています。

  私はイギリスの戦いは「知性派対反知性派の戦い」と定義しました。イギリスでは知性派が反知性派に数で負けました。この国は知性派の方が少なかったようです。一方、アメリカの戦いは「良識派と反良識派の戦いだ」と定義しました。良識派はもともと国民の多数を占めるに違いないので、トランプが勝つことは絶対にないと思っています。

  コメント欄にいただいた質問に、トランプの演説を引用して以下のように返答しました。

>万一、トランプが大統領になっても米ドルと米国債は
大丈夫でしょうか?

ダメでしょう(笑)
すでに「借金を踏み倒すのは、オレの得意技だ」といっていますからね(笑)

   でももちろんトランプの勝利などありえないので大丈夫です。

  彼はこれからムーンウォークを始め、公約・口約束をどんどん撤回していきます。するとなんのことはない、トランプはただの大ぼら吹きだということが明らかになります。どうりでジョンソンとキスしたわけです(笑)。

   気の毒なのは共和党です。トランプに打ちのめされ、分断され、EU騒ぎがおさまるとアメリカはふたたび銃規制問題です。全米ライフル協会のたかが400万票にこだわるがために、その他の国民を敵に回しています。大統領選挙と同時に行われる議会選挙でも、トランプの逆風に加え銃規制でも共和党は劣勢に立たされるでしょう。

   今一つ、新たなニュースが入ってきました。それはオーストリアの大統領選挙のやり直しです。

   私は先日の記事でオーストリアに関して取り上げました。

   それは、5月の大統領選挙で極右の候補と緑の党の候補が大接戦を演じ、穏健派の緑の党候補が勝利した。極右の候補はEUに懐疑的で、もちろん移民に大反対です。欧州の極右勢力はどこの国においても、本当に要注意のところまで到達している、という趣旨でした。

  ところが昨日、その選挙の開票方法に違法性があったとして、選挙がやり直しになるというニュースが入ってきたのです。7月1日のロイターを引用します。

引用

オーストリアの憲法裁判所は1日、大統領選挙の決選投票をやり直す必要があるとの判断を示した。僅差で敗れた極右政党「自由党」候補者ノルベルト・ホーファー氏が大統領に就く可能性が出てきた。

5月22日の決選投票では「緑の党」前党首のファン・デア・ベレン氏が1%ポイント未満の差でホーファー氏を破った。郵送票がデア・ベレン氏に有利に働いたが、一部で決められた時間より早く開票するなど郵送票の開票方法に問題があったとの指摘が出ていた。憲法裁は今回の判断について、選挙の規定を厳密に運用すると説明した。

引用終わり

  秋に再選挙とのことですが、「イギリスの離脱決定を経て、はたして極右が離脱を掲げて勝利するかが見ものだ」と言われています。イギリスの離脱は極右に有利に働くのか、あるいはイギリス人の慌てぶりと市場の混乱をみて穏健派=残留派が再び勝利するか見ものです。

  そしてこのオーストリアのニュースの最大のポイントは、5月の選挙が全く話題になっていませんでしたが、今回は小国と言えども世界が取り上げ、日本も取り上げ、またしても市場が震撼する恐れが出てきてしまったということです。

  今後は27か国もあるEU加盟国の選挙のたびに、市場は震撼しなくていけない。為替や株式投資をされている方には、お気の毒様と申し上げておきます。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする