ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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日米の金利動向、日本の金利はどうなる

2013年06月08日 | ニュース・コメント
   今日は長いですよ!  

  依然として株価は不安定さを継続しています。私はそろそろ落ち着くと思っているのですが、そうなってくれません。それもそのはず、アベノミクスが実はアベノマジックだったということだんだんみんながわかり始めているのですから。

  もちろん私はアベチャンが少なくともかなりの経営者や一般の人たちまでをその気にさせた功績は非常に大きいものだと思っていますし、みんなで日本経済をよくしていこうという努力を否定するものではありません。オカネのある方は、どうぞ高額商品を買って大いにエンジョイしてください。世の中のためになりますので。

  しかし投資は別です。「数字の裏付けのないアベノミクスをそのまま鵜呑みにせずに理詰めで考え、数字の裏付けを考えて投資を行うべきだ」ということをお申し上げます。

  ななしさんが6月6日にコメントに書いているように

>でも米ドルを外貨MMFを買おうとすると、証券会社からは東南アジア新興国に投資するファンドの方に変更しないか?そちらを勧められます。
断りましたが・・・


そうなんですよね。うっかり乗せられてはいけません!

  実は私も先週、ある大手証券会社のNISA(日本版の少額投資非課税制度)セミナーに出席してみました。投資の初心者向けのセミナーで、だれでもご存知の有名女性講師が出てきて投資を薦めるのですが、まさに証券会社によるななしさんへのお薦め同様、

「いま最も上昇しているのは東南アジアの株・債券投資ファンドです。いつ投資をするのか、イマデショウ!」

  といきなりハイリスク・ハイリターン物を薦めるのです。チャートを示し、私の嫌う「東京タワー型」、つまりエビ反ったカーブが永遠に上に向かうかのような説明をしていました。

  あきれて物が言えないほどでしたが、受講者は熱心にメモまで取って説明を聞いています。聴衆はもちろん7割以上がリタイア世代、半数は70歳以上の方々です。ということはたぶん投資で痛い目に遇った人がほとんどなので、半数くらいの方は鵜呑みにしないでしょうが、あとの半数の方は何度でも騙されるのでしょう・・・

  さて、本題です。

  前回は米国金利のお話をしました。その話をまとめますと、アメリカの財政赤字はピークからすでに半減しているので、

「米国金利の上昇は病からの全快で、お祝いするべきだ」ともうしあげました。

  では日本はどうか。

  このところ株の話にかまけて、金利の話や日本のCDSスプレッドの話をしていませんでした。無視していたのではなく、問題がないので放っておいたのです。ところが市場関係者や報道は5月中旬ころからの金利上昇を問題にして、株価下落の原因の一つのような論調になっていますので、解説だけしておきます。

  黒田新総裁の就任直後、そして間をおいて5月の連休明けに日本国債の市場で金利変動が激しかったのは、黒田新総裁の政策目標と実行手段の間に矛盾があるからです。つまり

政策目標;インフレを起こす → 金利上昇

手段   ;国債を買いまくる → 金利低下

  
これを見れば、混乱するのは当たり前です。政策目標と手段に整合性がなく理論的には正反対の結果を導くはずなのですから。

じゃ、金利は上がるのか下がるのか?

私の答えは「黒田プットの勝ち」


つまり金利はどんどん上昇したりはしません。黒田日銀の強引な買いに押され、矛盾した目標と手段に市場の参加者も次第に慣らされてしまう。とにかく年間60-70兆円も国債を買いまくろうというのですから。それでも足りなきゃ、きっと「いまだけ増量」がはじまります(笑)。

  だったら黒田氏も「経済が好転してインフレの傾向が出てくれば、金利上昇はやむなし」などと発言しなければよかったのです。きっと彼は後悔し、今後はそうした発言はしないでしょう。

  金利を巡るニュースでは「国債を多く保有している金融機関は、政策の矛盾に対し売ってよいか買ってよいかわからず狼狽している。また、日銀の買い(黒田プット)で国債が市場から吸い上げられて流動性を失い、価格が激しく変動している」と書いています。後半の流動性を失いつつある部分は正しいと思いますが、大手の金融機関は狼狽していません。最大手の銀行はすでに昨年中に長期国債は計画通りどんどん売却。2番手3番手もそれに追いつきつつある長期国債など危なっかしくて保有してられない、それが大手銀行の健全なる行動規範です。

  こうした国債の売買動向を、統計(誰が売って、誰が買っている)で説明できればよいのですが、イマイチ信頼のおけない統計のため数字できちんと説明できません。もっとも今は日銀が一方的に買いまくっているだけでしょうが。

  一方で国債の価格変動を激しくしようとしている投資家もいます。日本国債の売り崩しに賭けるカイル・バス氏のファンドなどです。そうしたファンドが仕掛けようともがいているのかもしれません。

  しかしこうしたファンドの資金量など黒田日銀に比較すれば多寡が知れています。それが証拠にイングランド銀行ですら破ったことで名高いソロス氏は動きません。彼はイングランド銀行の為替介入資金の底の浅さを数字でしっかりと捉え、勝てると踏んで勝ったのです。しかし今の日銀の資金量はある意味無限なので勝てないと思っているのです。

  もちろん日本の金利が未来永劫上昇しないというわけにはいきません。私は著書を始め日本財政の危うさを折に触れ数字でみなさんに説明してきました。日本国民の金融資産が逃避を始め、日本の金利が本格的に上昇し始めたら、日本は一巻の終わりです。

さてちょっと長くなりましたが、まとめますと

・アメリカの金利上昇は「全快祝い」だ

・日本の金利上昇は「地獄への転落」だが、まだ来ない


と申し上げておきます(笑)

本当に怖いのは、「アメリカと違い日本に出口はない」とみんなが気付いた時です。

  あっ、そうでした。日本のCDSスプレッドですが、アベノミクス、黒田新政策、ともに無反応に近く、70台程度の順調なスコアを保っています(笑)。
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日米の金利動向について

2013年06月05日 | ニュース・コメント
 
  今日のテーマは金利だったのですが、その前にひとこと。

私はこの数日の記事で、

>「アベノミクスの成長戦略」で、大向こうを唸らせる戦略は出てこない

とか、

>1.政府の「成長戦略」なんて政権が変わるたびに言っていて、聞き飽きた
  2.日本に一番必要なのは厳しい構造改革


と述べています。

  本日(6月5日)ランチタイムにアベチャンが講演で成長戦略について述べたそうですが、その直後から株はまた暴落してしまいました。前場は動きがあまりなかったのに、講演内容への失望から売られたとのこと。株の投資家さんには、「お気の毒に」と申し上げるほかありません。

では金利の話です。まず、アメリカから。

  1か月ほど前に私はこのブログで「FRBは政策を転換する場合、前もってサウンディングを始める」と書きました。先週バーナンキ議長は議会証言と質疑応答で、早くもサウンディングを開始しています。彼が初めていわゆる「出口戦略」に触れたのです。その後も各地区連銀の議長などが出口に関する見解を述べ始めています。

  それに呼応するように、米国債10年物金利が2%を上回るようになりました。この発言と金利の上昇は問題にするほどのことはないのに、あたかも世界的金融緩和が反転しはじめ、各国の中央銀行が市場に冷や水を浴びせるのではないか、のような報道がなされています。

  私はぜんぜんそんなことはないと思っています。というのもアメリカにとって出口戦略が実際に発動されるということは病気からの全快で、みんなでお祝いをするほどの慶事なのですから、可能性が出てきただけでも喜ばしいのです。その他の国は、まだまだ病院からは出られません。

じゃ、何で市場関係者は問題にするの?

「もっとおいしい飴をたくさん頂戴」と言い続ける、いつものオネダリ君達の言い草です。

  市場もニュースも一時アメリカの出口のことでもちきりになり、日本の株も影響を受けたようです。でも私は同日のバーナンキのもう一つの発言に注目しています。それは「金融緩和によるバブルの発生を十分注意して見ている」という発言です。

  私も先日、バブルの足音が聞こえると申しましたが、どこで聞こえているかと申しますと

1.アメリカのジャンクボンド市場で、平均金利が5%を割った

2.アジアの債券市場で、低格付け債券が活発に発行されている

3.東証マザーズ株価指数が、東証一部に先行して年初以来2倍にもなった

4.新興市場のあらゆる株・債券が投資対象としてもてはやされている

5.日本のゴルフ場会員権相場が上がり始めた


  こうしたいつものバブル兄弟達がそろって騒いでいるのが聞こえているのです(笑)。みなさんは証券会社などの勧誘に乗って、こんなものに絶対に手を出してはいけません。

  金利に戻ります。米国債の金利上昇、なんと健康的な響きでしょうか。2000年代を通してみれば10年物国債金利の平均は4%です。そのあたりまでは全然問題なし。世界のカネ余りは残念ながらそんなところまで金利上昇を許してくれないと思います。もし許してくれたら私は米国債投資をお待ちのみなさんのために、相図の花火を打ち上げます!

  アメリカの「財政の崖」についていつも私は「騒ぐほどのことではない」と言い続けてきました。

みなさんは、アメリカの財政赤字額がリーマンショック後のピークと比べてどうなっているかご存知ですか?

  なんと今13年度で半減しているのです。09年度の1兆4千億ドルから6千4百億ドルになっています。100円換算で140兆円の赤字がが64兆円になったということです。これは他でもない、強制的に財政の崖を作ったおかげで、落ちないように気を付けているのです。アメリカの財政がこの先を含めて、健全そのものという理由の一つです。

  日本政府の国際公約は、2015年までに財政の赤字を半減、約50兆円の赤字を25兆円にしようとしていますが、残念ながらほとんど不可能です。

  その数字だけでもアメリカが実に健全な状況に戻りつつあることがわかるのに、それを知らないと「米国の長期金利が上昇を始めた」というニュースはオオカミでもきたかのような捉え方になります。

  みなさんも半減という数字を知れば、私が「米国金利上昇、全然問題なし」という意味が理解できると思います。アメリカの金利上昇は歓迎すべきサインと見るべきなのです。


つづく

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別荘を買われたPuffinさんへ

2013年06月04日 | ニュース・コメント
>御報告ですが、やっぱり買っちゃいました、不動産。
除雪や水抜きなどのメインテナンスもやってくれる管理別荘地で冬季も含めた通年利用が可能な旧軽井沢エリアで、旧軽銀座まで徒歩圏内の生活し易い場所に位置 する、敷地面積1200平米超えの築浅戸建物件、そうは出ない、と判断し、これは神様が私に「買え!」と言っている、と思い、購入に踏み切りました。


報告、ありがとうございます。

やりましたね、オメデトウございます!

不動産は大きな買い物です。気に入るか否かが最も大切なことですね。旧軽エリアでしたら日本の別荘地でも超一流。Puffinさんのように十分に余裕があれば、ご自分の今後の人生をより充実させ、新たなライフスタイルを作るには、とてもよい買い物だと思います。羨ましい限りです!
軽井沢には独特のコミュニティーがいろいろありますが、早目によいコミュニティに参加することで、別荘ライフはとても充実したものになると思います。☆のやではそればかりは達成できませんね。今後がたのしみですね。


>敷地面積1200平米超えの築浅戸建物件、そうは出ない


そのとおりだと思います。車で10分も離れればいくらでもあるでしょうが、徒歩圏内での築浅はなかなかないと思います。リセール・ヴァリューは抜群ですね。

>頭金と諸費用を除いた購入代金の9割を、「フラット35S」で借りて、その分の手持ち現金を外債(米国債ゼロクーポン)分散購入に当てる事にしたのです

私が著書でお薦めしていることを、本当に実践されるのですね。親類でも30代の男性が同じ様にローンを返済せずに米国債に投資していますが、それ以外の方では初めて伺う実践例です。

>今回の日本株一掃セール(不動産購入した5月20日までに処分し切りました)

タイミング、抜群ですね。もともと株式への投資時点が底値ですから、上昇過程で惜しげなく売ることができるのだと思います。バフェットじいさん同様、投資の王道を歩んでいますね。今後の外貨建て資産への投資方針も、大賛成です。いくらバークシャー株でも高いときには控えめに、暴落したらまとめ買い、それができれば怖いものなし。

>日本財政再建が成功して、円高・国債高の低金利の時代が訪れれば、豊かで落ち着いた暮らしが待っているわけで、同じ日本国民としてそれは望ましい事だと思っています。その時は、目減りした外貨建て資産の補填に、ローンは繰り上げ返済

こうしたシナリオを持っておくことがとても大事ですね。今お持ちの外貨建て資産であれば、日本の財政再建が成功するかもしれない遥か遠い時点までに、十分にリターンをもたらしてくれるでしょう。円高にも耐えられると思いますよ。


ただしPuffinさんの次の部分だけ、若干疑問に感じています。

>不動産の1つにリバースモーゲージをかける作戦を考えています。1つは、家族の老後の生活用に残します。

私はリバースモーゲージに詳しいわけではありませんので、間違っているかもしれませんが、日本のリバースモーゲージは、どうも気に入りません。理由は

・自宅として使用中の戸建て住宅に限られている(マンション、別荘は対象外)
・住宅の価値は土地だけで建物はゼロ評価
・土地も時価の7割程度しか評価しない
・預金でなく借金のため大きなリスクではないが、相手銀行のリスクを取ることになる


日本のリバースモーゲージは要するに、「死んだら誰もいなくなり土地だけ確実に残るので競売が容易」という物件を対象にしているのでしょう。ですので、リバースモーゲージが私の理解どおりでしたら、むしろ2軒のうちどちらかを売却するシナリオを考慮されるほうがよいかもしれません。

もっともそれはだいぶ先のこととすれば、今から決めてかかる必要はないかもしれませんね。

以上、林のコメントでした。

今後もテーマに関わらず、コメント大歓迎です。




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警鐘です

2013年06月03日 | ニュース・コメント
  米国債の金利が高くなってきました。10年物米国債の金利も安定的に2%を超えるようになりました。米国債への投資を考えている方には朗報ですね。その上一方的に上昇を続けてきたドルもこのところは一服し、むしろ円が若干ですが戻しています。これをチャンスととらえるべきか否か?

  90円を割り込むような円高で買えればよいのですが、私は「90円台でも金利の戻りを考えれば買い場」だと思います。

  逆に『警鐘』を鳴らしておきます。

私が著書とこのブログで一貫してお薦めしてきた投資対象はあくまでメインは米国債ですが、その他に以下の3つも代替案としてお示ししました。

1.豪ドル債(豪州国債は少ないのでAAAの国際機関ものを含む)

2.バークシャーハサウェー株式

3.米国REIT


  このうち豪ドル債と米国REITに対する警鐘です。著書を読んで早目に買われた方は、ここまでの上昇でかなりの含み益が出ていると思われます。それを確定したい方は、売却してもよいと思います。しかしこの先相場が下落しても耐えられる方はそのままホールドしてもよいと思います。

  豪ドル債の場合は、長期債であればキャピタルゲインと為替の両方でかなりの利幅があり、為替が相当程度下がっても利益は確保できると思われます。長いレンジで投資期間を設定されていれば、豪ドルも円リスクに対しては大いなるヘッジになると思いますので、ホールでもよいと思うのです。ただし、「これから豪ドル債への投資を考えるのであれば、しばし相場を見ながらやり過ごすほうがよい」と思います。ひとえに為替です。

  米国REITも、これまた相当安い時にお薦めしているので、価格の上昇と為替の双方で、かなりの利益が出ていると思われます。警鐘は同じく、ここからの投資を考える方に向けてです。高すぎる相場がゆり戻すでしょうから、しばらく様子を見るべきでしょう。こちらは日本のREITと同じで、配当利回りが警鐘を鳴らしてくれているのです。


  ではバークシャー株式は?

  この株ばかりは今の株価は超高値ではあるのですが、絶対買うなとは言えないのです。何故なら、PERが17倍強くらいだからです。

  何度か書いていますが、去年の春ごろアップル株とバークシャー株を比較して、同じ18倍程度のPERなのに、「アップル株はバブルだ、バークシャー株はバブルではない」と申し上げました。その頃のバークシャー株は1株12万ドル台だったのですが、今はなんと17万ドル台(バークシャB株なら80ドルくらいだったものが、110ドルくらい)です。それでも予想PERは17倍なのです。もし去年の春先に買っていると、キャピタルゲインが40%、為替のゲインが25%、両者を掛けあわせるとなんと75%もの利益になります。著書の出版時は10万ドル程度でしたので、キャピタルゲインだけで7割にもなっています。

  この株の本質は、潤沢に生みだされるキャッシュフローです。株価が高くなっても利益が応分に増加するので、PERが保たれるのです。ということで、この株についてだけ私は「17倍は高すぎる」とどうしても言えないのです(笑)。

今日は以上、警鐘でした。
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いったいどこまで上がるのか、改め、いったいどこまで下がるのか(笑)

2013年06月02日 | 2013年からの資産運用
 
  先週末、ふたたび株価は下げてしまい、ジェットコースターからはまだ降りていなかったようですね。私のコメント・タイトルも「どこまで上がるのか」から「どこまで下がるのか」に変更です(笑)。

  REITの下げを読み始めて書いた3月のコメントは下げ始める前に間に合ったのですが、今回はそろそろとか書きはじめたら実際には間に合わないほどのスピードで下げてしまいました(笑)。

  友人からは「オマエは『金なんかダメ』だとか『アップルはバブルだ』とか下げばかり当てて、そのうち『貧乏神だ』と言われるぞ」と警告されています(爆)。

  さて、この先をもう少し私なりに読んでみます。でもどうぞご安心を。元の黙阿弥になるような下げは見通していませんので。まず3本の矢の海外からの評価です。

  来日して日本を応援する公演をしたりするエコノミストや国際機関のおエライさんを除くと、イギリスのフィナンシャルタイムズやアメリカのウォールストリートジャーナル、そして多くの経済アナリストも今後株が再び上げ基調に入るか否かは、3本目の矢の表面的な成長戦略などではなく、本格的構造改革が打ち出されるか否かだと見ています。何故そうなるのか?

1.政府の「成長戦略」なんて政権が変わるたびに言っていて、聞き飽きた

2.日本に一番必要なのは厳しい構造改革で、アメリカもイギリスも、レーガン、サッチャーがそれで構造改革に成功を収めた

3.構造改革ができなければ、財政破綻が一気に近付く


  こうした構図を描いているからで、国内でもそうした見方をしているエコノミスト、アナリストが増えています。つまり選挙後を見据えているのです。

  そうした人たちが描く本格的構造改革とは、産業競争力の強化だけではなく、大きな痛みを伴う改革、つまり「財政支出の削減」や「農業分野・医療分野の自由化に代表される既得権益への切り込み」ができるか否かです。産業競争力強化だ、先端産業強化だ、経済特区だでお茶を濁す程度では納得しないのです。日本の財政が多少の経済成長や消費税増税くらいでは改善できないことを知っているからです。

  今後政府はきっとそれを俎上には載せるでしょうが、実行段階では「骨太」どころか「骨抜き」になるのは毎度のことです。自民党は衆参両院で圧倒的過半数を得ると、憲法論議には走っても日本全体の痛みを伴う構造改革へ突っ走ることはできない。きっと財政の崖から転落するまでそれはできないでしょう。自民党だけでなく国民もこれまでと同じで、焼け野原になるまで気がつかないのではないでしょうか。

  あー、また言っちゃいましたね(泣)

  日本が大好きな私はそんなことになってほしくはないのですが、選挙民も政治家も口に苦い良薬をみずから飲むとはとても思えません。消費税議論と同じで、「その前にやることがある!」などと言いながら結局先送りをする。それを言いだしたら選挙で葬られる。今回消費税の値上げができそうなのは、民主党がまさかのハズレくじを引いてくれたからです。その民主党は今や見る影もありません。

  今成長戦略として様々な分野で様々なアイデアがでてきています。しかしそれらはしょせん決定打とはならない小つぶレベルでしょう。それをどれほどたくさん積み上げたところで、とても追いつかないほど日本の財政の悪化はひどいところにきています。

じゃ、それが出ないと株価はさらに暴落するの?

いいえ、しないと思います。暴騰もしないけど、暴落もしないでしょう。

なんで?

1.アベノミクスマジックは「かかってあげている」人もいますが、「本当にかかった」人もいるから
2.世界のカネ余りは継続するから


  何も解決していない欧州が小康状態を保っているのもそのためだと思います。日本の先行指標であるイタリアも、改革が停滞したままなのに金利は上昇どころか低下し、CDSスプレッドですら低下しているのです。
  しかし世界のカネ余り相場も、このまま平穏では終わりません。当然報いは来ます。あちこちで小バブルの足音が聞こえているからです。それについてはまた別途書きます。←マタバブルカ

じゃ、下値のめどは?

  私は今回の11月から株価約7割の上昇要因を、業績の裏付けある上昇が半分、PERという期待値の上昇が半分だと分析しました。その期待値部分約3割が剥げ落ちるのが最大で、業績のノリシロ部分(為替90-95円、企業の保守的見通し)がうまく好転し、経済指標が改善するとピークから2割程度で止まると見ています。

つづく
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