今日は長いですよ!
依然として株価は不安定さを継続しています。私はそろそろ落ち着くと思っているのですが、そうなってくれません。それもそのはず、アベノミクスが実はアベノマジックだったということだんだんみんながわかり始めているのですから。
もちろん私はアベチャンが少なくともかなりの経営者や一般の人たちまでをその気にさせた功績は非常に大きいものだと思っていますし、みんなで日本経済をよくしていこうという努力を否定するものではありません。オカネのある方は、どうぞ高額商品を買って大いにエンジョイしてください。世の中のためになりますので。
しかし投資は別です。「数字の裏付けのないアベノミクスをそのまま鵜呑みにせずに理詰めで考え、数字の裏付けを考えて投資を行うべきだ」ということをお申し上げます。
ななしさんが6月6日にコメントに書いているように
>でも米ドルを外貨MMFを買おうとすると、証券会社からは東南アジア新興国に投資するファンドの方に変更しないか?そちらを勧められます。
断りましたが・・・
そうなんですよね。うっかり乗せられてはいけません!
実は私も先週、ある大手証券会社のNISA(日本版の少額投資非課税制度)セミナーに出席してみました。投資の初心者向けのセミナーで、だれでもご存知の有名女性講師が出てきて投資を薦めるのですが、まさに証券会社によるななしさんへのお薦め同様、
「いま最も上昇しているのは東南アジアの株・債券投資ファンドです。いつ投資をするのか、イマデショウ!」
といきなりハイリスク・ハイリターン物を薦めるのです。チャートを示し、私の嫌う「東京タワー型」、つまりエビ反ったカーブが永遠に上に向かうかのような説明をしていました。
あきれて物が言えないほどでしたが、受講者は熱心にメモまで取って説明を聞いています。聴衆はもちろん7割以上がリタイア世代、半数は70歳以上の方々です。ということはたぶん投資で痛い目に遇った人がほとんどなので、半数くらいの方は鵜呑みにしないでしょうが、あとの半数の方は何度でも騙されるのでしょう・・・
さて、本題です。
前回は米国金利のお話をしました。その話をまとめますと、アメリカの財政赤字はピークからすでに半減しているので、
「米国金利の上昇は病からの全快で、お祝いするべきだ」ともうしあげました。
では日本はどうか。
このところ株の話にかまけて、金利の話や日本のCDSスプレッドの話をしていませんでした。無視していたのではなく、問題がないので放っておいたのです。ところが市場関係者や報道は5月中旬ころからの金利上昇を問題にして、株価下落の原因の一つのような論調になっていますので、解説だけしておきます。
黒田新総裁の就任直後、そして間をおいて5月の連休明けに日本国債の市場で金利変動が激しかったのは、黒田新総裁の政策目標と実行手段の間に矛盾があるからです。つまり
政策目標;インフレを起こす → 金利上昇
手段 ;国債を買いまくる → 金利低下
これを見れば、混乱するのは当たり前です。政策目標と手段に整合性がなく理論的には正反対の結果を導くはずなのですから。
じゃ、金利は上がるのか下がるのか?
私の答えは「黒田プットの勝ち」
つまり金利はどんどん上昇したりはしません。黒田日銀の強引な買いに押され、矛盾した目標と手段に市場の参加者も次第に慣らされてしまう。とにかく年間60-70兆円も国債を買いまくろうというのですから。それでも足りなきゃ、きっと「いまだけ増量」がはじまります(笑)。
だったら黒田氏も「経済が好転してインフレの傾向が出てくれば、金利上昇はやむなし」などと発言しなければよかったのです。きっと彼は後悔し、今後はそうした発言はしないでしょう。
金利を巡るニュースでは「国債を多く保有している金融機関は、政策の矛盾に対し売ってよいか買ってよいかわからず狼狽している。また、日銀の買い(黒田プット)で国債が市場から吸い上げられて流動性を失い、価格が激しく変動している」と書いています。後半の流動性を失いつつある部分は正しいと思いますが、大手の金融機関は狼狽していません。最大手の銀行はすでに昨年中に長期国債は計画通りどんどん売却。2番手3番手もそれに追いつきつつある。長期国債など危なっかしくて保有してられない、それが大手銀行の健全なる行動規範です。
こうした国債の売買動向を、統計(誰が売って、誰が買っている)で説明できればよいのですが、イマイチ信頼のおけない統計のため数字できちんと説明できません。もっとも今は日銀が一方的に買いまくっているだけでしょうが。
一方で国債の価格変動を激しくしようとしている投資家もいます。日本国債の売り崩しに賭けるカイル・バス氏のファンドなどです。そうしたファンドが仕掛けようともがいているのかもしれません。
しかしこうしたファンドの資金量など黒田日銀に比較すれば多寡が知れています。それが証拠にイングランド銀行ですら破ったことで名高いソロス氏は動きません。彼はイングランド銀行の為替介入資金の底の浅さを数字でしっかりと捉え、勝てると踏んで勝ったのです。しかし今の日銀の資金量はある意味無限なので勝てないと思っているのです。
もちろん日本の金利が未来永劫上昇しないというわけにはいきません。私は著書を始め日本財政の危うさを折に触れ数字でみなさんに説明してきました。日本国民の金融資産が逃避を始め、日本の金利が本格的に上昇し始めたら、日本は一巻の終わりです。
さてちょっと長くなりましたが、まとめますと
・アメリカの金利上昇は「全快祝い」だ
・日本の金利上昇は「地獄への転落」だが、まだ来ない
と申し上げておきます(笑)
本当に怖いのは、「アメリカと違い日本に出口はない」とみんなが気付いた時です。
あっ、そうでした。日本のCDSスプレッドですが、アベノミクス、黒田新政策、ともに無反応に近く、70台程度の順調なスコアを保っています(笑)。
依然として株価は不安定さを継続しています。私はそろそろ落ち着くと思っているのですが、そうなってくれません。それもそのはず、アベノミクスが実はアベノマジックだったということだんだんみんながわかり始めているのですから。
もちろん私はアベチャンが少なくともかなりの経営者や一般の人たちまでをその気にさせた功績は非常に大きいものだと思っていますし、みんなで日本経済をよくしていこうという努力を否定するものではありません。オカネのある方は、どうぞ高額商品を買って大いにエンジョイしてください。世の中のためになりますので。
しかし投資は別です。「数字の裏付けのないアベノミクスをそのまま鵜呑みにせずに理詰めで考え、数字の裏付けを考えて投資を行うべきだ」ということをお申し上げます。
ななしさんが6月6日にコメントに書いているように
>でも米ドルを外貨MMFを買おうとすると、証券会社からは東南アジア新興国に投資するファンドの方に変更しないか?そちらを勧められます。
断りましたが・・・
そうなんですよね。うっかり乗せられてはいけません!
実は私も先週、ある大手証券会社のNISA(日本版の少額投資非課税制度)セミナーに出席してみました。投資の初心者向けのセミナーで、だれでもご存知の有名女性講師が出てきて投資を薦めるのですが、まさに証券会社によるななしさんへのお薦め同様、
「いま最も上昇しているのは東南アジアの株・債券投資ファンドです。いつ投資をするのか、イマデショウ!」
といきなりハイリスク・ハイリターン物を薦めるのです。チャートを示し、私の嫌う「東京タワー型」、つまりエビ反ったカーブが永遠に上に向かうかのような説明をしていました。
あきれて物が言えないほどでしたが、受講者は熱心にメモまで取って説明を聞いています。聴衆はもちろん7割以上がリタイア世代、半数は70歳以上の方々です。ということはたぶん投資で痛い目に遇った人がほとんどなので、半数くらいの方は鵜呑みにしないでしょうが、あとの半数の方は何度でも騙されるのでしょう・・・
さて、本題です。
前回は米国金利のお話をしました。その話をまとめますと、アメリカの財政赤字はピークからすでに半減しているので、
「米国金利の上昇は病からの全快で、お祝いするべきだ」ともうしあげました。
では日本はどうか。
このところ株の話にかまけて、金利の話や日本のCDSスプレッドの話をしていませんでした。無視していたのではなく、問題がないので放っておいたのです。ところが市場関係者や報道は5月中旬ころからの金利上昇を問題にして、株価下落の原因の一つのような論調になっていますので、解説だけしておきます。
黒田新総裁の就任直後、そして間をおいて5月の連休明けに日本国債の市場で金利変動が激しかったのは、黒田新総裁の政策目標と実行手段の間に矛盾があるからです。つまり
政策目標;インフレを起こす → 金利上昇
手段 ;国債を買いまくる → 金利低下
これを見れば、混乱するのは当たり前です。政策目標と手段に整合性がなく理論的には正反対の結果を導くはずなのですから。
じゃ、金利は上がるのか下がるのか?
私の答えは「黒田プットの勝ち」
つまり金利はどんどん上昇したりはしません。黒田日銀の強引な買いに押され、矛盾した目標と手段に市場の参加者も次第に慣らされてしまう。とにかく年間60-70兆円も国債を買いまくろうというのですから。それでも足りなきゃ、きっと「いまだけ増量」がはじまります(笑)。
だったら黒田氏も「経済が好転してインフレの傾向が出てくれば、金利上昇はやむなし」などと発言しなければよかったのです。きっと彼は後悔し、今後はそうした発言はしないでしょう。
金利を巡るニュースでは「国債を多く保有している金融機関は、政策の矛盾に対し売ってよいか買ってよいかわからず狼狽している。また、日銀の買い(黒田プット)で国債が市場から吸い上げられて流動性を失い、価格が激しく変動している」と書いています。後半の流動性を失いつつある部分は正しいと思いますが、大手の金融機関は狼狽していません。最大手の銀行はすでに昨年中に長期国債は計画通りどんどん売却。2番手3番手もそれに追いつきつつある。長期国債など危なっかしくて保有してられない、それが大手銀行の健全なる行動規範です。
こうした国債の売買動向を、統計(誰が売って、誰が買っている)で説明できればよいのですが、イマイチ信頼のおけない統計のため数字できちんと説明できません。もっとも今は日銀が一方的に買いまくっているだけでしょうが。
一方で国債の価格変動を激しくしようとしている投資家もいます。日本国債の売り崩しに賭けるカイル・バス氏のファンドなどです。そうしたファンドが仕掛けようともがいているのかもしれません。
しかしこうしたファンドの資金量など黒田日銀に比較すれば多寡が知れています。それが証拠にイングランド銀行ですら破ったことで名高いソロス氏は動きません。彼はイングランド銀行の為替介入資金の底の浅さを数字でしっかりと捉え、勝てると踏んで勝ったのです。しかし今の日銀の資金量はある意味無限なので勝てないと思っているのです。
もちろん日本の金利が未来永劫上昇しないというわけにはいきません。私は著書を始め日本財政の危うさを折に触れ数字でみなさんに説明してきました。日本国民の金融資産が逃避を始め、日本の金利が本格的に上昇し始めたら、日本は一巻の終わりです。
さてちょっと長くなりましたが、まとめますと
・アメリカの金利上昇は「全快祝い」だ
・日本の金利上昇は「地獄への転落」だが、まだ来ない
と申し上げておきます(笑)
本当に怖いのは、「アメリカと違い日本に出口はない」とみんなが気付いた時です。
あっ、そうでした。日本のCDSスプレッドですが、アベノミクス、黒田新政策、ともに無反応に近く、70台程度の順調なスコアを保っています(笑)。