ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

講演のスタジオ収録

2012年03月07日 | 日記
きのう日本経営合理化協会さんの依頼で、メンバー向けの「月刊CD経営塾」のスタジオ収録に行ってきました。スタジオ収録は初めての経験ですが、1時間の収録は取り直しもほとんどなく無事終了。ほっと一息です。

オーナー経営者を中心とするメンバーの方350人くらいに配布されるそうです。3月号ですが、その宣伝サイトはこちらです。

http://www.jmca.jp/prod/1498.html


錚々たる講師陣の中で、ひとりだけ知らん講師が・・・

メンバー向けのため、そのままの内容はおしらせできませんが、こちらにサマリーを載せます。このブログで書いている内容と違いません。

収録を終えてからスタジオのスタッフから意外な言葉が、

S「林さん、いい声してますね。パーソナリティいけますよ」

「えっ?そんなこと言われるの初めて」

S「いやマイクむきですよ、肝座ってるし」

「仕事、もらえるかなー」 一同爆笑

収録の様子はこちら、経営協会の方のFBです
http://www.facebook.com/yuichiozawa






タイトル

「債券がわかると世界がわかる」


サブタイトル

「デフレ・円高トラップに嵌まり込む日本での資産運用はどうすべきか」

サマリー
・債券がわかると世界を見る新たな「視点」を持つことができる
・サブプライムからユーロ危機、債券バブルが世界を翻弄
・デフレ・円高の克服は金利を上昇させ、そこには金融破綻が待っている
・企業も個人も金融・財政の破綻に備えるのが危機管理
・経営者の投資は損をしない=ストレスのない債券投資に徹するべき

はじめに

 「投資とは株式投資」という日本の常識を捨てれば、激動する世界情勢や相場に翻弄されない確実な投資方法があります。当たらない予想を基に損ばかりしている投資から、着実に資産を増加させることのできる債券投資に転換することで、資産運用のストレスから解放されます。

  この20年ほど、私のアドバイスに従った友人・知人は、ストレスフリーで資産を着実に増加させています。企業経営者のみなさんは、いちかばちかのバクチはやめて、確実な債券投資に徹して、迫りくる日本の財政・年金破綻に備えましょう。


1. 債券が席巻する世界情勢

① 今後も世界を混乱させる台風の眼は過剰債務問題
サブプライム・ローン問題に端を発し、世界を混乱の渦に巻き込んだリーマンショック、ギリシャ国債のデフォルト騒ぎから始まったユーロ危機。いずれも債券の破綻が危機のきっかけだった。債券を知らずに世界は語れない。

何故債券が混乱を引き起こすのか?

② 債券は債務のバブルを作り出す道具だから
      バブルは債務が増えると膨らむ。債券は個別のローン契約と違い簡単に売買可能なため、債務の膨張を助長しやすい

③ 日本も国債発行により容易に債務を膨張させてしまった
先進国・途上国を問わず、財政が債券発行に頼り過ぎ過剰債務のバブルをふくらませている


2. 日本国の債務はバブルになっているのか

① 各国との比較
・GDPに対する債務残高の比率;日本 約2.1倍、米国 約1.0倍
   ギリシャ1.6倍、イタリア1.3倍、ドイツ0.6倍
・名目GDPは債務返済の源泉
消費額 X 消費税率 = 税収
経済成長しない日本の債務比率は増加の一途

② 今後の債務の見通し
日本の財政の収支均衡は見通せない
来年度予算;支出総額97兆円―税収など45兆円=52兆円国債発行 
実際には借換え国債を含む国債発行額=174兆円
52兆円の赤字を消費税値上げだけでまかなう税率は25%
   52兆円 ÷ 2.7兆円(消費税1%分)= 約20(%)
     現行5% + 増税20% = 25%

消費税の値上げは消費にマイナスのインパクトを与え、デフレをより昂進させる。米国シンクタンクのシミュレーションでは、財政を均衡させる消費税率は35%。

③ デフレ脱却とは、金利上昇を通じて金融危機をもたらす
金利上昇はどれだけの破壊力を持つのか。
残存する日本国債 平均年限は7年、平均利率は1.3%
郵貯・銀行・生保などの国債保有額;500兆円程度


シミュレーション

a. 政府目標の名目成長率3%が達成されると、市中金利は3%程度になり、金融機関は破綻する
単価100円、金利1.3%の7年物国債の利回りが3%になると、
価格は10%下落
500兆円の10%は50兆円・・・すべての金融機関の資本が吹き飛ぶ(全国の金融機関株主資本合計60兆円弱)

b. イタリア国債のように金利が7%になると、価格は30%下落し、日本全体が壊滅的打撃を受ける
500兆円の30%は約150兆円・・・これが金利7%のインパクト

★まとめ
政府・日銀・経団連などが望むデフレの克服と成長軌道への復帰とは、金融機関の破綻を意味する・・・・これが債券を知る人の視点


④ 迫りくる経常赤字、円高克服の帰結とは
円安が始まると外貨への投資が増加
日本国債投資に向かうはずの預貯金が底を突くのが早まる
財政破綻の引金になる

 ★まとめ
 円高克服の帰結も日本国債売り



3.経営者の資産運用

会社の資産、個人の資産を想定内の財政・金融破綻から守る
仕事でストレスを溜める経営者、資産運用はストレスフリーで

① 世界の投資の常識;債券をベースに、株式はリスク投資
    世界の証券残高;債券は株式の2倍
    日本の証券残高;債券は株式の4倍

② 債券投資のリターンのすごさ
投資開始年初に100を投資すると、2010年末までにいくらになったか

例1.80年に米国債に投資すると2010年末にはドルベースで23倍に
なった。ドルが当時に比べ3分の1になっても8倍残った。
例2.2000年開始だとドルで1.9倍、円に直しても1.55倍になった。

★まとめ
外貨建て債券投資は、円高に負けなかった



③ 銀行・証券は何故安全な債券投資を薦めないか
・「投資とは株式投資」という日本独特の観念にはまり込んでいる
・手数料収入につながらない(証券銀行の得は投資家の損)
・債券投資をしたいと言えば、100%「債券投信」を薦めてくる
・債券投信の大半は詐欺的商品
・彼らが薦める商品で儲かった会社・個人はない
・仕組み預金、仕組み貸付は言語道断

④ 債券のABC
・100で買ったものが100で満期をむかえる(償還される)
・決まった金利が半年ごともしくは毎年もらえる
・途中、価格変動するが、満期まで持てば決まった額が返済される
・リスクは発行体の倒産、外貨建ては為替リスク
・複利で運用したければ、割引債に投資(日本国債にはない)
・投資額は一般的には10万円程度から
・途中の売買は自由
・購入時も、毎年の手数料もない
・売買時の価格差が証券会社の利益

⑤ 何に投資すべきか
・米国債
・国際機関(スーパーソブリン)の発行するドル建て債券

代替は?
・豪ドル建て債券(国債もしくはスーパーソブリン債)
 オーストラリア財政はドイツ並みに安定
 為替変動は激しいが、金利は高い


★まとめ
想定内の日本の財政・金融破綻から資産を守る
経営者はストレスフリーの債券投資に徹するべき
米国債投資のリターンは円高をはるかに凌いだ



参考書;「証券会社が売りたがらない、米国債を買え」 by林 敬一
2011年8月ダイヤモンド社


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円高トラップに嵌まり込む日本  24.じゃ、どうしたらいいの? その⑦

2012年03月05日 | 資産運用 


 外人が半分も保有している米国債は本当に安全か?

という質問を受けましたので、それにお答えします。

・日本国債は9割以上を日本人が保有しているので安全だ
・米国債は半分を外人が保有しているので危ない


実に素朴でもっともに見える議論なのですが、これは大きな間違いです。
一つ目の議論が間違っている理由を説明します。

 こうした議論をする方にこんな質問をすると、答えに窮します。それは

「日本株は3割近くを外人が保有するので、危ないのか?」

という質問です。

  外人が投資をする理由はリスクに見合ったリターンがあるからです。日本株が3万9千円の時代、外人は日本株に投資をしませんでした。その時、PER(株価収益率)が60倍でした。むしろカラ売りを仕掛けていたくらいです。私のいたソロモン・ブラザーズはその代表選手と言われていました。しかしその株価が半値、八掛け、二割引となるにつれて外人投資は増加し、現在では保有高は3割近く、日々の売買高では6割くらいが外人の売買です。外人の投資は、「リスクとリターンの比較」だけで行う冷徹な投資です。株価が9千になった今、PERは15倍、国際標準の株価レベルです。バブル時代と較べると、

  株価  3万9千円 → 9千円     4分の1になった

  PER  60倍 → 15倍         4分の1になった


  投資できる国際標準レベルの15倍になったので、日本株を外人が買っているのです。

  それは株だけではありません。ゴルフ場もいい例です(またゴルフか、笑)。

日本人が300億円、400億円をかけて1つのゴルフ場を造っていたバブル時代、外人保有のゴルフ場はありませんでした。それがバブル崩壊後、10億・20億で買えるようになると、200か所300か所と外人保有のゴルフ場が増えました。リスクに見合ったリターンが期待できる価格になったからです。ゴルファーなら誰もが知るアコーディア・ゴルフがその代表選手です。母体はゴールドマンサックスで、彼らはすでに日本のゴルフ場を135か所も買って、立派な上場会社として運営しています。そして今年1月に破綻した太平洋クラブ(20カ所近いゴルフ場を所有)の支援スポンサーになったので、さらに20か所くらいは傘下のゴルフ場を増やすでしょう。

  日本株投資、ゴルフ場投資と日本国債投資に何か違いがあるのでしょうか???

「外人が持っていないので日本国債は安全」という方に、この質問に回答してほしいものです。

「日本国債は日本人だけが保有しているから安全だ」、日本のジョーシキを持つ識者の言っている議論は間違っています。危ない日本国債を1%を切るリターンで買う外人投資家はいません。彼らは売って損するために買うのではありません。得するために買うのです。それが国際標準の視点を持つ投資家の「常識」です。日本の専門家は愛国心に燃えて、世界標準を知らないのです。私は愛国心は持っていても、自分の資産運用は愛国心ではなく、計算機をたたいて行います。


では2つ目の議論です。


「米国債は半分を外人が保有しているので危ない」


これも実に素朴で間違った議論です。この裏にもうひとつある議論は、

・米国は経常赤字なので、外国からの投資に頼らざるを得ない
・アメリカ人は借金漬けで、日本人のように貯金がないので、米国債を外人に買ってもらっている


という議論です。ではこれらを検証してみましょう。

  まず「経常赤字」の議論ですが、赤字分の決済を外貨で行う国では、たしかにこうしたことは言えます。しかしアメリカは赤字分の決済をドルで行うので、外貨不足にはなりません。I-Sバランスの難しい議論は、ここでは避けます。

  「借金漬け」の議論ですが、アメリカの家計の金融資産もGDP対比でみると日本人に劣らずあるのです。別にみんながみんな借金漬けではありません。そしてアメリカ人はものすごく寄付を行います。寄付を受けた慈善団体の基金を家計に加えるのが一般的に言われるアメリカ人の金融資産です。それらを合計すると金融資産はGDP対比で日本に匹敵するのです。

 じゃ、なんで米国債は外人が半分も買っているのか?

・アメリカ人にとっては他によい投資対象があるから
・リスクとリターンが見合うので外人が買うから


これが理由です。

  米国債は世界のフトコロに頼れるけど、リターンのない日本国債は日本人のフトコロにしか頼れません。

  日本国債が暴落すれば、外人はきっと勝負してきます。イタリアと同じように金利が7%になれば、国債価格は平均で30%くらい安くなるので、外人投資家が出動してくるでしょう。

つづく
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円高トラップに嵌まり込む日本  23.じゃ、どうしたらいいの? その⑥

2012年03月01日 | 資産運用 

  金利を予想するには、米国の財政事情を見る必要があります。財政事情は国債の発行量を左右するからです。

  「リーマンショック後の米国経済が比較的好調なのは、政府がバラマキをしているからで、それが続かなくなると経済も停滞する」と言う議論があります。経済が停滞してしまうと金利も現状から上には行きづらくなります。米国の財政政策は日本のようにバラマキを継続しているのでしょうか?それを見てみましょう。

  リーマンショックが起きたのは08年の秋で、その後米国政府は09年の予算から景気テコ入れのため、赤字を覚悟で財政出動をしています。その結果、累積債務の対GDP比率は大きく上昇をはじめました。

  政府の累積債務は一般的にGDP対比で60%程度であれば優等生と言われます。ユーロへの参加条件のハードルも累積赤字は60%以下、単年度赤字はGDPの3%以下が基準でした。粉飾していたギリシャを除けば、ユーロの発足時、他の参加国は達成もしくは条件付き達成をしていました。米国は01年までは60%程度で優等生。それが01年の9・11以降、ブッシュの戦争により70%程度に増加しましたが、たいした増加ではありませんでした。

  しかしリーマンショック後は財政出動により累積債務はGDPの100%くらいまで急増してしまいました。ちなみに日本は今年度末で210%近くになります。

  次に累積ではなく、最近の単年度収支を見てみましょう。

  米国政府の予算は毎年2月に教書として発表され、10月スタートで翌年の9月までです。教書の年号は10月スタートのため今年が2013年会計年度と、日本より1年進んだ年号になっています。そして数年先までの複数年度の予算を作っています。ここでは14年度まで見てみます。

  米国政府財政の毎年の赤字、対GDP比率

10年度   11年度  12年度   13年度  14年度
10.0%   8.8%   8.5%     5.5%   2.7%


  10年度予算教書は、リーマンショック直後のため非常に大きな赤字予算でしたが、その後漸減しています。バラマキが続いているわけではありません。これは赤字増加を抑える枠が法律上決められているためでもあり、日本のように野放図な財政拡大ができないような仕組みがあるのです。

  さて米国債の需給をみるため、国債発行の実績と見通しを検証してみました。赤字発行は続くのですが、全体としては拡散方向ではなく、収束方向だ、ということがわかります。このことは金利に対しては上昇を抑制する力になります。よほどの景気拡大とインフレがないかぎり、見通せる将来で金利の大きな上昇はないと思われます。

  こうしたことから私は10年物米国債の金利は、今後1年くらいのレンジで見ると、上昇しても3%台がいいところでなかなか4%まではいかないと思っています。

つづく
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