ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ななしさんへの回答 その4 ノックイン債の仕組み解説

2011年06月01日 | 資産運用 
>とんでもない仕組みだったんですね。
>おバカな私。ひえ~~って感じです。

ななしさんだけが知らないのではなく、みなさんが知らないのです、ご安心を(笑)。でもそれで勝ち続けるななしさん、たいしたもんですね!

 前回は、「ノックイン債とは、投資家が保険会社にさせられて、不特定の保険加入者の保険を引受ける仕組み」だ、ということを説明しました。
 今回は、それをアレンジする証券会社が何故絶対に儲かるかを説明します。
仕組みは実はとても簡単なんです。投資家のななしさんは、2%の金利を見て、マーこんなもんかと思って、黙ってもらいましたよね。それは普通預金や定期預金のマイクロキューベルトみたいな金利に較べると、「10倍-100倍ももらえる、ヤッター!」という感じだと思います。でも実はこれがとてつもなく安い金利なのです。
 金利つまり保険料ですが、本当の保険料は10%だと知ったらどうでしょう。ななしさんは「ヤラレター!」と思いますよね。でも金利としか較べないシロウトの投資家にはその妥当性が判断できないので、こんな詐欺的保険料で保険の引受けをしてしまうのです。
 この仕組みを作る証券会社は、保険料の妥当な額は10%だと知っています。この10%を証券会社がおいしくいただいて、債券の発行体はわずかなおこぼれを頂戴して、喜んで債券を発行しているのです。

<本当の姿>
保険加入者(不特定の市場参加者)の保険料支払額;10%
本来の分配; 投資家(保険会社)10%
 まー、アレンジャーとして証券会社に0.2%くらいあげて、投資家は9.8%でもいいかもしれません。


詐欺的分配;投資家(保険会社)2%、証券会社7.8%、発行体0.2%で合計10%

 という具合に証券会社は大儲けするのです。ななしさんが賭けに勝って2%を確保できたと言って喜んでも、証券会社は痛くも痒くもありません。この両者のモラズハザード、何故問題にならないのか、金融庁がおバカだからでしょうか?でもいずれは問題にしないといけませんよね。
 もっともこの保険料10%という数字は、私が勝手に置いている数字ですので、実際はこれより少ないかもしれませんし、多いかもしれません。でも数%は間違いなくします。
 ソニーのように個人情報の流失により会社の信用を大きく傷つけられたり、東電のように倒産の危機が迫っている場合、株式を保有していて保険を掛けたいと思う機関投資家はたくさんいます。そうした人達が不特定の保険加入者で、それを見つけるのは難しいことではありません。

 証券会社は債券を引受けて販売する場合、普通ならもらえる手数料はせいぜい0.2-0.3%程度ですが、これを仕組めばその10―20倍くらいなんなくせしめることができます。

 私は保険の仕組みでこうしたノックイン商品を説明しましたが、おわかりいただけましたでしょうか。ノックイン債の投資家は、保険屋をやらされているのです。これが保険料の妥当性を判断できないシロウトを騙す、詐欺的商品の本当の姿です。
 本来はこの商品は、オプションの理論で説明されます。保険料はオプションのプレミアムと呼ばれ、その%の妥当性はオプションの理論式で算出可能です。

 ななしさんいかがでしょう、この解説で証券会社の儲けの仕組みもおわかりいただけましたか?

「値上がり分は1銭の得にもならず、値下がり分はすべて損失になるノックイン商品」、今後も購入しますか?

絶対にしませんよね(笑)

次のご質問の豪ドル預金、私は知りませんので、銀行のサイトで見てみますね。でも仕組み的にはオプションをかませて作る、似たようなものだと想像します。つまり預金とは名ばかりのFX投資でしょう。
コメント (1)
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