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地政学上のリスク 3  大統領選挙結果

2016年11月10日 | 地政学上のリスク

  みなさん、たくさんのコメント、ありがとうございます。今後もトランプ勝利のことでは、みなさんからのご意見をうかがいたいので、大歓迎です。

  トランプの勝利は私にとってもちろん大衝撃でした。

  実は昨日、大学のクラス会ゴルフで一日ゴルフ場にいたのですが、この歳になるとクラス会同窓会の飲み会やゴルフなどがとても多くなります。でも大学のクラス会ゴルフはちょっと珍しいかもしれませんね。同期会、同じクラブやゼミのゴルフもあるので、春と秋のシーズンはゴルフの回数が多くなります。

  きのうは開票が始まる時間の朝スタートして、午前のラウンドが終わりランチのためクラブハウスに戻ると、開票が半分ほど進んでいてトランプがリード。「えっ?」とは思いながらもカリフォルニアやフロリダなどの大所の結果が出ていなかったので、期待をこめて午後のラウンドに出発。快晴だったのですが風が強くて午後はスコアを崩して終了。ハウスに戻るとテレビでトランプ勝利の結果を放映中でした。

   大ショック!

  それがいつわらざる心境です。BREXITよりも直接影響があるので、より大ショックでした。トランプ自身、「オレの勝利はBREXIT プラス、プラス、プラスだ」と言っていたのを思い出しました。

   その後日本株とドルの暴落を見て、株や為替で勝負している人たちはさぞ大変だろうと思いました。

 

   さて、一昨日のこのブログのタイトルは「地政学上のリスク2、ポピュリスト独裁者たち」でした。今週末の私の講演会の内容もそれに沿ったものですので、紹介させていただいています。

   今日の記事もその一環で、講演会当日に配布する簡単なレジメをそのまま掲載します。私は講演会では内容の項目だけを掲げ、そのペーパーをどうぞメモ用紙に使ってくださいという程度のものを用意します。

   以下は今週初めに主催者の方に送付した原稿です。


タイトル「日本のゆくえ」

1.大統領選挙から何を学ぶか=地政学上のリスクが世界経済に影を落とす

・世界同時多発ポリュリズム   

・ドゥテルテ、エルドアン、プーチンなどの独裁的ポピュリスト台頭

・欧州での反EU右派台頭   

フランス=極右ルペン、ドイツ=ドイツのための選択肢、オーストリア=自由党、ポーランド=法と正義

 

2.ポピュリストや極右台頭の原因

・海外からの脅威

 イスラム系移民・難民、テロリスト流入、輸出攻勢、

・国内要因

 経済格差の拡大が生む閉塞感、ホーム・グロウン・テロ

・反グローバリズム・反移民政策

 自国優先ポピュリズム、トランプ現象、BREXITなど欧州の反移民

  ⇒EUTPPなど統合や貿易自由化への反発、自国優先主義

 アメリカの反移民はもともと存在した問題だが、欧州での反難民が重なり、不満のはけ口になった。大統領選後もこうしたトランプ現象継続か。


 3.国際秩序の変化

・アメリカの覇権に対するロシアと中国の挑戦、特に中国の台頭は脅威

・中東の混乱がもたらした欧州連合の弱体化

・新たな地政学上のリスク

 中国国内のイスラム系民族問題・・・新疆ウィグル自治区

・ロシアを巡る旧ソ連邦中央アジア

 

4.地政学上のリスク、日本への影響

・中東に加え、アフリカリスク(駆けつけ警護)

・中国の太平洋進出、一対一路政策・AIIB、北朝鮮支援

・海外から見た日本のリスク・・・安倍政権の右傾化

対抗措置として防衛力強化や国際秩序への貢献で日本は間違ってはいけない

 

5.個人は何にどう備えたらいいのか

・超緩和政策の破たん→財政破たん

・円リスクのヘッジ

以上


  選挙結果を見た主催者の方から、「内容は変更される可能性があると思いますが、いかがでしょう」と問い合わせが入っていました。しかし私は、「いえ、変更は全く必要ありません。でも1つだけ加えるとしたら以下の1行を加えてください。」と回答。それは項目1の

>ドゥテルテ、エルドアン、プーチンなどの独裁的ポピュリスト台頭

の下に、「ポピュリズムの大本命トランプも参加」

  それだけの変更をもって土曜日の講演会に臨みます。

  それにしてもNYの株価上昇とドル高、そしてみなさん待望の米国債金利2%は驚き第2弾ですね。欧州株がすでにその予兆を示し、日本株の先物も切り返してはいました。そしてなんといってもそれらに先行してドル円があっという間に戻していました。トランプショックで、

   「安全な日本円が買われたが、危険になったので売られた」(笑)

  今日はここまでです。

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12 コメント

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エスタブリッシュメントの無能、敗北 (トランプタワー)
2016-11-10 11:56:06
日本も同じような指導者が登場する、安倍さんなどまだまだ大甘。
マスコミや既得権を謳歌した連中は、悲鳴を挙げ始めた。新しい時代の登場に乾杯したい。
amazonから転載、その1 (まんぼう)
2016-11-12 00:00:32
私の知人は8月半ばに米国債の金利が急低下したときに割引債(2028年満期)を大手証券A社の店頭で売りました。単価は57.82です。一方、この時の客にとっての買値は61.19でした。この売値と買値の差が実質的な手数料です。

証券会社が仕入れてきた米国債を客に売るわけだからサヤを抜かれるのは仕方ありませんが、株や日本国債よりはるかに高い売買コストです。ちなみに私が昨年夏に大手証券B社で手持ちの割引債(2023年満期)を売ったときは、客から見た買値が62.25、売値が60.25でした。売値と買値の差を明示している証券会社は皆無に近いから、コスト比較なんてできません。(自分や知人の経験を照合すると、おそらく某巨大証券が一番客にとって不利だと推察されますが)。

それなのに、この本のカバーには、米国債は購入手数料「なし」、売却手数料「なし」と堂々と記載しています。本文中にも「買った米国債はいつでも自由に時価(市場価格)で売却可能です。売買手数料はかかりません」(第4章。193ページ)と書いてくれています。あきれるばかりです。

「証券会社が売りたがらない米国債を買え」というタイトルで、著者は個人投資家の味方で証券会社に厳しいというポーズを取っていますが、米国債に投資した経験のある者からすれば、証券会社の外国債の販売担当者の回し者のような気がしてなりません。個人投資家のためを思うのならば、売値と買値の差、つまり実質的な手数料をサイトなどで広く公開しようとしない証券会社の姿勢を取り上げるべきでしょう。

著者は売値と買値の差なんて百も承知なのにねえ。証券会社が「米国債には売買手数料はかかりません」などとPRしたら、金融庁がほうっておかない。ダイヤモンド社からの出版ですが、週刊ダイヤモンドの記者なら、こんなインチキは書きませんよ。
amazonからの転載、その2 (まんぼう)
2016-11-12 00:02:23
昨年までは為替が円安に進めば大きなメリットがありましたが、そこにも課税されるようになってしまうと円破綻時の保険という意味合いととりあえず外債の中ではもっとも安全な米国債投資であれば、損をすることはないのかなあという感じです。ただ本当に破たんしたときにさしあたって、日本国で生きていくうえで必要のない外国の生の債券は没収されてしまうことはないのだろうか。また素朴に思うのは為替手数料と分かりにくい相対取引、そして債券が充実している野村や大和の毎年の安くはない口座手数料を考えるとそんなに旨味はないかも。
amazonからの、転載その3 (まんぼう)
2016-11-12 00:06:47
本書は、「日本の財政はやがて破綻、日本国債は暴落し、急激な円安が進行する。一方米国債は世界一安全である」という思い込みに基づいた論考であり、その前提そのものが間違っているため、論理は破綻している。

まず著者は為替リスクを考慮していない。円安進行した場合のメリットのみ強調しているが、以下の通り、経済理論上円高に進行することは自然であるため、完全なミスリードである。

理論上2国間の為替レートは、両国の期待インフレ率により決定する。日本はデフレ環境下にあるため、相対的に期待インフレ率の低い日本円が買われる(即ち円高が進行する)のは当然である。また理論上内外の金利差は為替レートの変化によって相殺されるため、日本国債への投資と米国債への投資の期待リターンは等しい。一方円をベース通貨とする日本の投資家にとって、外貨へ投資することは単にボラティリティを高めるだけである。

また米国債がもっとも安全である、という思い込みも極めて危険である。評者も日本の財政が全く問題ないとは言わない。しかし(民間部門を含めた)日本は世界最大の債権国であり、毎年膨大な経常黒字を稼いでいる。行き場のない円が銀行等を経由して日本国債へ流入が継続することは自然である。

その一方で米国は世界最大の債務国であり、毎年膨大な経常赤字を計上し続けている。それでも米国債の金利が上がらない(=債券が暴落しない)のは、米ドルが「世界の機軸通貨」であるからである。ただし昨今その地位も危うくなっており、一体いつまでそれが持つのか疑問である。だからこそ、通貨米ドルは売られ続けているのである。

また米国債が安全であることの根拠として格付機関のレーティングが高いことを挙げているが、格付機関の評価なんていい加減なものである。AAAの評価であったサブプライムローンが破綻したことは記憶に新しい。

本来星一つ、と言いたいところであるが、高いリスクを内包した投資信託やEB債の否定を行っていることを評価して、星二つ。

全く余談であるが、このような間違った思い込みに基づき物事を断言することは、今TPPへの推進を声高に叫ぶ人たちに共通する特徴であることも付け加えておこう。
ちっちゃいなぁ (AXEL)
2016-11-12 02:12:54
それって手数料なんですかねぇ?
別に1回買って最後まで持ち切るつもりなんで、そんな証券会社のサヤ抜きなんて気にもしないですけどね。私は林さんのブログと本を読んで、今年初めて米国債27年を買いましたが、インフレ率だぁ、為替だぁ、口座手数料だぁ、そんなこと気にもならないですよ。
ほっとけば元本が倍近くになって戻ってくるんですよ。正直預けたことも忘れるくらいストレスフリーです。笑
満期で償還されたドルを海外旅行で使うもよし、円に換えて孫におもちゃを買ってもよし。
27年前に買ったときの為替レートを覚えてちまちま計算したり、27年のインフレ率を計算して、実際のもうけはいくらだ!なんて考えませんよ。倍になったドルが手元にある。これが重要なんです。
そんなちいさいことにとらわれいたら、何もできないと思いませんか?

Unknown (お腹が空いた)
2016-11-12 09:40:48
面白いですね。

実質的な手数料をないかのように本に書くのは、情報発信者の能力不足、過失、故意が疑われます。

「生きていく上で必要ない」と評価されるかは分かりませんが、過去の預金封鎖の例を見ると銀行や証券会社で買った金融商品が未来の破たん国家から没収される可能性は否定できません。このあたりは、政治家や官僚の言質をとっておきましょう。

証券会社が利ザヤを稼げるのに米国債投資が国内で普及しないのは、調子のいい言説がかえって警戒感を抱かせている可能性があります。

情報交換が盛んになって一般人が相対的に物事を見ることができるようになった今時、特定の金融商品一本に投資しようというのは流行りません。米国債を流行らせたいなら、複数の金融商品と組み合わせた資産運用モデルを提示すべきでしょう。どの金融商品をどの比率で運用したらどのくらいのリスク、運用コストを負うのか。これくらいは、明示しないと他と見劣りします。

最近、投資信託の信託報酬額が下がる傾向が著しいです。証券会社は単価より顧客を抱え込もうとしているように見えます。米国債投資が顧客にとって有利なら、それを提案して顧客を抱え込む良い手段となりそうです。しかし、そういう動きが盛んだと言えるでしょうか。そもそも米国債投資がどれほど投資家に有利なのか、もう一度考え直すと良いのかもしれません。

米国債投資が有利だとして、その有利さを理解するのに多くの知識を要するとしたらどうでしょう。そんな分かりにくい金融商品を大勢が利用するでしょうか。国内で少数の人しか利用しないとなると、サービスのかかる単位あたりのコストは他の金融商品より割高になりそうです。逆に普及の進み具合が定量的に把握でき、実際右肩上がりなら、今後コストが下がりそうだという希望が湧きます。よって、国内における米国債投資の普及状況(販売額)を折れ線グラフで確認したいところです。それが確認できない、もしくはしにくいとしたら、それは事実上、米国債投資における1つのブラックボックスと言えるでしょう。
最後の砦はオーストラリア? (Jake Jack)
2016-11-12 18:06:22
トランプ勝利後、債券市場が崩れてきましたね。
債券バブル崩壊にはずみがつきそうです。

米国でも今後は、財政拡大政策がとられるようならば
インフレに突入しつつある経済状況もともなって
ドル安と債券安が進行しそうです。

ところで、皆様はオーストラリア国債については
どうお考えでしょうか?
かっては高利回りで知られた国債でしたが、
今後は政治状況の安定、地政学の面での低リスク、
財政面の健全性からも注目されると思います。

是非とも、皆様のご意見を伺いたいです。
Unknown (Owls)
2016-11-12 19:34:55
こんにちは

オーストラリア10年国債の利回りは2.5%程度でしょうか?

豪ドルは比較的安く手に入るのですが利回りはもう少し欲しい気がします
2018年まで長期金利2%台はないとも言われていたアメリカ長期金利が
あっという間に2%を超えてしましました

目先の中国景気も日本人のイメージほど悪くないともいわれています
だとするとオーストラリアも金利が上がる可能性もあるのではと思います

私なら豪ドルだけ買って少し様子を見ようと思います。
債券の投資先としては魅力的かなと思います
地政学上のリスク 3  大統領選挙結果 (DayDreamBeliever)
2016-11-12 22:30:28
米国で今後、財政拡大策取られるなら、むしろドル高方向になると思いますが...  でもそれはトランプ次期大統領がそもそも望まなかったこと。 つまり、公約事態に整合性がない、支離滅裂そのもの。

そもそも、トランプの「公約」を百㌫真に受ける必要はなかったのではないでしょうか。 彼は物議をかもす言説を弄すことで、注目を浴びるとともに、不満を持つ国民の感情に訴えることで支持を取り付ける戦術をとったようです。 その証拠に、勝利宣言では人が変わったように大人しくなり、オバマと会えば、しおらしく「オバマ大統領閣下は good man ! 」と持ち上げ、オバマケアを否定するのかと尋ねられれば そんなことはない、素晴らしい政策だという。 結局、副大統領、共和党有力者、トランプの家族を含む側近チームが政治を動かしていきそう。 そうすると、いまクリントン支持派がトランプを Not my presidentと抗議運動が各地で行っていますが、早晩、トランプ支持者だった国民も「公約」を反故にするトランプを Not my president と同様に騒ぎ出し、トランプ自身、identity を失う。  定見のない人間が大統領に選ばれてしまって一番びっくりしてるのは本人かもしれない。 オバマを私的アドバイザーにしたりして --- このような仮説を立てることができそうではありませんか?
資産バランス感覚が最重要かと (ぽんぬき)
2016-11-12 22:32:49
こればかりは個人の資産レベルと、株や債券に対する個人の知恵によって変わってくると私は考えます。答えは簡単には出ない気が。
ただ、自分の納得する形での資産分割法は有用なはずです。先行き不透明であればあるほど。いわゆる通貨のバスケットです。
>jake juckさん
オーストラリア国債に関して、私も考えていました。今は金利高くないにせよ悪くない選択肢と考えます。米が内向きになり中国がアジアで存在感を示せば、必然的に資源国オーストラリアも潤う。賢い選択かと。

色んな著者の本を読むと、A資産額に応じて通貨の分散(債券含む)、そしてB自分のこれだと思う株銘柄を長期保有(バフェット氏がこの手法だったかな?)、Cもしくはその2つにゴールド等の現物や投信を加えた複合投資、というのが資産運用的にみて有用であるように感じます。
米国債というのはすぐ売った買ったの世界ではなく「自分のムリない範囲額で長期かつ満期まで持てば有効ですよ」という性質のものであり手数料云々を気にするような短期投資には向かないものであると私は存じています。投資する人を選ぶ金融資産なのでしょうね。

結局のところ資産バランス的には、円、ドル、豪ドル、好きな国内外の株、ゴールド保有というのを自分流の比率で持っておけば良いんじゃないかと自己流で考えています。私はそんな額はありませんけど…

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