チキンゲームがまだ続いていますね。ある方が、これは「いつものシナリオ通りの歌舞伎だ」と言っていました。崖っぷちを落ちそうになりながらチャンバラを続け、最後は大団円で終わる歌舞伎のシナリオだというのです。いいたとえですね。
この愚かな争い、最後は妥協するにしても、そこまで戦い抜いたという言い訳をするため、民主共和双方ともギリギリまでファイティングポーズを取り続けざるを得ない、という事情が大きいからでしょう。
たとえデフォルトが起っても、格付け会社はすでに「これはオカネがなくてデフォルトしたのではなく、手続き問題によるテクニカル・デフォルトだ」と認定することを示唆しています。
テクニカル・デフォルトとは、本当にお金がなくて払えないのではなく、議会承認などの技術的問題だけの理由によるデフォルトであることを指します。
では一般の投資家にとってテクニカル・デフォルトが起った場合、どのような影響があるのでしょうか。私は何も影響はないと思っています。
えっ?なんで? と思われるでしょう。
理由は簡単。米国債のデフォルトとは、「米国債の利払いもしくは元本の償還ができない場合のみが定義上のデフォルト」だからです。つまり6月1日にカネ繰りが詰まったとしても、米国債はテクニカル・デフォルトにもならず、ただ滑って転んだだけのスリップダウンにするからです。
なんだか禅問答の様ですね。解説します。
さきほど申し上げたとおり、米国債のデフォルトとは、アメリカ政府が期限までに「利払いもしくは元本償還ができなかった時」だけに適用されるので、財務長官のイエレンおばさんは米国債投資家への利払いや償還は約束通り実行し、その他の日常的歳出を減らすか止めればいいだけだからです。
アメリカ政府の支出額のうち利払いや元本償還など微々たるもの。それに比べ通常の歳出額は膨大です。例えば社会福祉関連支出や公務員給与、ウクライナ支援を含む膨大な軍事支出や途上国援助支出、年金支出などがあります。それらを一部をカットするくらいで利払い・償還費は簡単に捻出できます。ちなみに利払い費は全歳出額のわずか6%程度にすぎませんし、償還額もそれを上回る程度です。
もちろん米国民にとって年金や公務員給与の支払い遅延、政府サービスの一部停止は大問題です。しかし米国債のデフォルトはたとえテクニカル・デフォルトに過ぎなくても、世界の金融市場に与える影響は甚大ですし、国際的信用を損なうことになります。デフォルトの定義などの知識を持たない投資家が大半ですから、世界中がパニックに陥りますので、イエレンおばさんは決してそのような愚かな決断はしません。
財務長官はそうでも、大統領は様々な公約を果たせなくなるため、次の選挙を控え簡単に歳出先延ばしや削減はできないのです。共和党もしかり。政府機関の閉鎖や年金支払いの遅延などが起れば、国民の不満は一気に共和党に向かう可能性が大だからです。
一方、米国債投資を考えている方にとっては、もしこの騒ぎが高じて利回りが上がったら、それこそ「絶好のチャンス到来」です。このところまた若干ですが長期債の利回りが上昇し、良い投資チャンスが続いています。しかし不思議なことにドルは下げるどころか、上げています。その理由は利上げによるものだと説明されていますが、一部は日本など海外勢の米国債投資への準備でドルを調達しているからかもしれません。そして投資をしてすぐにデフォルト問題が解決すれば、瞬間的に債券価格は上昇するに違いない。
この債務上限問題、私はこの政争を一貫して愚かだと言っていますが、債務上限の仕組み自体は評価しています。なぜならそのタガがないと、日本のように政府は使いたい放題になり、単なるチキンゲームではなく、本当の崖に向かって目をつぶったままアクセルを踏み続けることになるからです。
以上、愚かなる米国債デフォルト騒ぎ、アップデートでした。
先生も御身体に気をつけてまたご教示くださればと存じます。
こんにちは。
昨日先生の新刊が自宅に届きました。
週末にじっくり読ませていただきます。
これからもこの問題については、解説をアップデートするようにします。
読み終えましたら、是非感想をお聞かせください。
2月から5月にかけて、株式から8割米国利付債にシフトしました。6月5日に新刊手元に届きます。楽しみにしています。
実はあの本は電子版になっていまだに売れ続けていて、私の小遣い稼ぎになってくれています(笑)。
資産運用の本が12年も売れ続けることなどほぼありえないのですが、一つには米国債がとても大事な投資対象であること、そしてブログでフォローを継続していることがポイントだと思っています。
「米国債は永遠です!」