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商品相場の下落について

2015年08月17日 | 商品相場

  ある友人から、「原油価格がこんなにも低くなっているけど、世界経済は大丈夫なの?」という質問が寄せられました。原油価格だけでなく、商品相場は全体的にかなりの下げを演じています。そして原因としては中国経済の減速が言われています。 

  今回はその質問への回答がテーマですが、本日は日本の4-6月期のGDPが発表されました。結果はマイナスの1.6%で大方の予想通りです。何故そんなひどい数字になっているのか。それはひとえに消費の低迷によります。これまで多くのニュースでは賃金の上昇と株価上昇により消費者のマインドがよくなり、百貨店で高額商品が飛ぶように売れ、中国人の爆買いも衰えを知らないといっていました。しかしそれらがほんの一部の現象にすぎないことが明らかになりました。日本経済の実態は、円安と消費税の値上げで苦しむ庶民が自己防衛に走っている姿が真の姿であることが浮き彫りになったのです。このことをまず念頭にいれてください。

  さて今日のテーマに戻ります。以前私はこのブログで、世界経済を見るに当たっては、株式相場・債券相場・為替相場の他に商品相場を見ておくべきだと申し上げました。商品相場には様々な指標があるので何を見たらよいか判断に困ると思いますが、私は日経新聞の月曜版にインデックスを含めてまとめて掲載されているので、それが見やすいですよと示唆しています。商品全般のインデックスを見ると、このところの下落ぶりの全体像が見て取れます。個別では主に原油・石油製品、鉄・銅・アルミなどの原材料、そして一見経済のスローダウンとは関係なさそうな食料品にまでに及んでいるのがわかります。

  ではこのところの原油価格の下落を始めとする商品価格の下落で、日本を始めとする先進国経済は深刻な打撃を受けるのでしょうか。私はそうは思いません。これまで原油価格の下落に際して申し上げていたとおり、打撃どころか商品相場の低迷は天の恵みです。本当に困っているのは誰か?

  日銀です。まあ、政府・日銀のコンビと言ってもいいかもしれません。このところ政治の分野ではやることなすことうまくいかず、支持率を順調に下げ続けている安倍政権ですが、株式・為替の市場と、政権に同調し計画経済化により回復している企業収益だけは政権に味方し続け、アベノミクス最後のよりどころになっています。経済全体は4-6月期もGDPがけっこう大幅なマイナス数字になったため、企業収益と全体の動きには大きなギャップが生じています。政府・日銀、そしてその提灯持ち連中が言い続けた「トリクルダウン」など起こっていません。トリクルダウンとは、例えば所得上位の人の所得が増えれば、自然に下位にも恩恵が回って来るはずというものです。

  ところが我々庶民はアベクロコンビにより始まった理不尽な物価高による不幸の連鎖に苦しむ結果、自己防衛から消費を抑えてきました。それがGDPのマイナスにつながっているわけです。しかしこのところのガソリンなどの価格下落により、ちょっと一息つくことができています。この先も商品相場全般の低迷は、我々の味方をしてくれるものと思われます。ただし、昨年のように突然トチ狂ったクロちゃんが緩和策を打って大幅な円安にでも振れない限り。

  一方、困り切った日銀のクロちゃんですが、最近日銀内で秘策を練っています。自分達が目標としてきた物価の定義からエネルギー分を取り除いてしまおうという姑息なミエミエの秘策です(笑)。みなさんも今度ゴルフでOBに打ちこんだら、パートナーの見ている前でOB杭を動かしてセーフだったことにしてはいかがでしょう(爆)。物価からエネルギー価格を除くなどということは、統計そのものの意味を失わせる言語道断の行為です。日銀はすでにその数字をウォーミングアップなのか、発表し始めているのです。

  クロちゃんの「2年、2倍、2%」の約束は、「物価なんて言うものは資金供給さえ2倍にすれば簡単に達成できる」というどこぞの威勢のいいお兄さんのようなええかっこしーから出たものです。それが間違った以上は素直に認めたらいかがでしょう。あのお兄さんもすでに降参したのですから。

  そもそも物価は一国だけの経済・金融環境でどうにでもできるという発想自体が間違っています。世界経済がこれだけ連動し、中国がくしゃみをしただけで、日本はハナ風邪くらい引くかもしれないほどです。もともと金融緩和は日本のクロちゃんから始まったものではありません。日銀も前総裁の白川氏が緩和を相当推進していたし、アメリカのFRBも超緩和政策を取り続け、欧州中銀もそれに同調しています。そして中国しかり。これだけ世界の大どころがそろい踏みしても、上がらないものは上がらないのです。

つづく

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2 コメント

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日銀の秘策歓迎しますw (888)
2015-08-17 23:48:27
いましがたWBSで、マイナスGDPも余裕の市場というニュースで日銀の追加緩和期待のようなコメントがありました。緩和策を期待するとはとんでもない。個人でできる防衛策としてドル買&米国債シフトを進めます。
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888さんへ (林 敬一)
2015-08-19 16:46:29
>マイナスGDPも余裕の市場というニュース

どうも今日は雲行きが怪しく、余裕はなくなりつつあるようですね。
返信する

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