雪風ファンドさん、いろいろお調べいただき、ありがとうございます。おもしろいチャートが見られますね。
雪風ファンドさんからいただいたコメントは、みなさんもご興味があると思われるテーマですので、それに対する私の見解をお伝えいたします。
いただきましたのは以下のご意見とテーマです。
>林さんはマネーを信用しきっておられるように感じられますが、死角はないでしょうか?数年単位よりも長いスパンで考えれば、円にしろドルにしろ商品指数に対しては減価している期間の方が多いです。マネーの歴史は減価の歴史と言っても過言ではないでしょう。商品は確かに表面的には金利を産みませんが、長期ではマネーの側が減価していくのですから、実質的に金利を産んでいるように考えもいいように思います。
そしてご自身で示された数値に関しては、以下の通りひとつづつ回答いたします。
1.超長期の商品インデックスのインフレ調整後チャート
こうしたチャートをよく見つけられましたね。しかしこのブログの結論は、超長期では複数商品のインデックスは的か傾向にあり、思うような結果は示されませんでしたね。
2.インフレ率の米国債イールド比較
このチャートにある債券は、Bondではなく、短期のT-Bill(3カ月から1年物)のイールドを比較しています。超長期のお話をしているので、超長期のイールドを使用するべきで、比較対象としては適格性に欠けます。今ですとT-Billの12カ月は0.14%、30年物は3.71%で、インフレ率は1.4%。もちろん瞬間風速は意味がないのですが、およそこうした図式は継続しています。
短期金利<インフレ率<長期金利
3.2ドルだった原油に投資する
第1次オイルショックの(73年)前に2ドルだった原油を買って、140ドル台の市場最高値まで保有して売れたとしましょう。40年間で70倍です。これは逆算しますと年率11.2%です。これなら長期債Bondにも勝てますね。30年債の平均利回りは9%ほどで、40年間で60倍です。しかし原油をどう貯蔵するのでしょうか?品質保持は?果たしてピークで売り抜けられるでしょうか?まあ100ドルであれば売却可能としますと、10.3%です。
4.100ドルだった金に投資する
ちょうど73年オイルショックあたりの金価格が100ドルでした。それがピークで1,900ドル、つまり19倍です。これでは60倍の長期債に勝てません。
そして、
>マネーの歴史は減価の歴史です
という雪風ファンドさんのご指摘は、マネーに付きものの金利を考えなければそのとおりでしょう。しかし金利はインフレ(マネーの減価)に連動しますので、マネーの減価を補うようにできているのです。
もう一つ、「インフレヘッジを株式投資で」という考え方もあります。そうしたものを40年間のザックリした年率換算で並べます。参考のためにバークシャー・ハサウェイも入れますと、
・アメリカのインフレ率 4.3%
・米国債30年物 9%(30年債の発行は77年以降、10年債平均は7.5%程度)
・日本のインフレ率 2.6%
・原油 10.3%(2ドルが100ドルで売れたとする)
・金 7.6%(1,900ドルのピーク、現在値だと6.5%)
・S&P500 9.4%
・バークシャー 19.7%
いかがでしょうか。こうして見ると、マネーの減価がインフレ率であるとすれば国債で十分に対応は可能です。それを凌駕する商品は原油くらいですが、投資は非常に困難です。
商品への長期投資が何故一般的に行われていないかと申しますと、以下のような理由によります。
・現物のほとんどは賞味期限がある上、保管料が莫大にかかる
・先物インデックスなどは3カ月、6ヶ月で精算しないといけないので、長期投資に向かない。最近出てきた商品ファンド投資は長期投資も今後可能かもしれないが、リスクも非常に高い。
最後にまとめますと、
>林さんはマネーを信用しきっておられるように感じられますが、死角はないでしょうか?
マネーの信用力はもちろん変化し、移ろいます。しかしそれは相対的問題です。現在から将来の世界では、すべてのマネーが同時に信用を失うことはない、というのが私の見解です。
信用を失った通貨は売られ、代わりに信用力を持った通貨が買われます。数十年後まではわかりませんが、円、ドル、ユーロであれば、どれかが買われ、どれかが売られるでしょう。そしてその代替として時折通貨と同様に流動性に心配のないゴールドも代替的に買われることがあると思います。
>インフレ調整後では株式のパフォーマンスが最も良いので、バランスを考えれば、やはり、さまざまな金融商品でポートフォリオを組むというのがよさそうですね。
かならずしもそうとは思えません。私の著書の256ページに30年間の比較表がありますので、参考にしてください。債券投資は高い金利で買うと、ずっとそのままの高金利が継続しますので、とてつもないよい結果をもたらします。30年債は金利が高かったので23倍です。その間のS&P500は10倍でした。
また、債券以外は株式も含めて将来に渡る予想ができないので、どうポートフォリオを組むのかの回答を見出すのは困難です。私にはその自信はありません。
以上が雪風ファンドさんの商品投資のアイデアに対する、私の見解です。面白いスタディーでした。
なお、日本株や日本債券、金を含むさまざまな長期投資の30年間の結果比較は、先ほど引用した私の著書にありますので是非参考にしてみてください。
> ・米国債30年物 9%(30年債の発行は77年以降、10年債平均は7.5%程度)
>・原油 10.3%(2ドルが100ドルで売れたとする)
>・金 7.6%(1,900ドルのピーク、現在値だと6.5%)
>・S&P500 9.4%
>・バークシャー 19.7%
しかし、これらの数字をじっと見ていますと、期間収益を産むもの産まないものと色々ありますが、唯一米国国債のみ利息を複利運用されたものを掲げられているように見えるのは偏見でしょうか。
例えば、S&P500であればファンド形式のETFがあり、また、バークシャー株であれば期中にそれぞれ何らかの配当が期待できますが、これらを計算に入れていないのがちょっと気になります。また、原油や金は値上がり益を複利原価して理論的に計算することは可能と考えます。
それよりも重要なのは、日本国籍を有する限り投資の結果得られた期間収益や値上がり益に対しては、原則課税され、そのタイミングがそれぞれ異なりますから、話は一層複雑になります。
こうしたなかで果たして米国国債が一番有利とは言い切れないのではないでしょうか。
商品ETF投資については、もともと「主食」にはならないものの、「おやつ」程度に良いだろうと思ってきましたが、おかげさまで問題点等についても理解が深まったように思います。
私の専門は不動産ですが、幅広い金融商品について学んで行く所存ですので、引き続き宜しくお願いします。
ご心配なく。
例えばS&P指数が40年で100から1000に値上がっていれば、その間は何パーセントの複利なのかというように逆算しています。
税金は考慮しません。すべての投資商品は課税されるので、大した差はないと考えましょう。
しかし、考えるに、米国国債には毎年利払いがあり、その都度課税されますが、この小口現金を同じ条件で複利運用することは事実上できません。もちろん銘柄に拘らなければ小口投資も可能と考えますが。
一方、S&P500のETFには毎年配当が支払われ、この課税後の小口現金を同じETFの小口化商品に再投資可能なのに、こちらについては元本のみのバリューを複利現価していては、どこか片手落ちではないか、という疑問です。
S&Pへの投資についてです。
バークシャー・ハサウェー社のアニュアル・レポートの冒頭には、毎年同じ表が載っています。1965年以来の配当込S&P500とバークシャーのパフォーマンスです。
2012年までで
S&P500 年率9.4% 累計伸び率 7,344%
BRK 年率19.7% 累計 586,817%
以上です。笑うきゃないですよね!