ぽんきちさんからコメント欄にご質問をいただいた件への回答です。驚くほど大きな投資金額ですので、安全第一のアドバイスになっています。
ぽんきちさんの状況説明は2つのコメントになっていますが、読みやすいように一つにまとめさせていただきました。
ぽんきちさんの質問と状況説明
【質問】
・マンションの建替時期を諸般の事情により、2037年から2031年に前倒しすることにしました。11年後の建築単価、消費税率など変数が多いですが、投資額(税込、撤去費用を含む)は、5億から5.5億。自己資金は3億から3.5億と見込んでいます。
・今後投資する米国債の償還期限も、それに合わせて早める必要がございます。
・ブレークイーブンポイントは、ざっと計算すると、95円前後。
・これまでは、円から直接米国債を購入していましたが、108円前半ぐらいのレベルからドルを定期的に購入し、その後米国債の金利が上昇したタイミングで、ドルを米国債に変えようと考えています。
・以前よりもブレークイーブンポイントがあがった為、米国債投資の割合を下げ、その分他の投資を考えましたが良い案がないため、『バッターボックスに立たない』戦略
でいこうと考えています。
・先生のご意見をいただければ、幸いです。
いただいた以上の情報をもとにコメントを差し上げます。
自宅以外の不動産投資について私はあまり賛成しません。特に最近のアパート経営などは行き過ぎの警戒警報が出ていると思っています。しかしぽんきちさんのケースは別です。相続を受けた不動産が収益資産であればキャッシュフローをエンジョイし、当然その後の相続もスムーズに行うべきだと思います。
ぽんきちさんは以前から熱心に勉強されていましたね。ドルの為替レートと金利レベルをもとにブレークイーブンの為替レートも計算されていて、とてもしっかりとされていると思います。
さて、2031年といいますと、今から11年後です。そこに合わせた投資をお考えとのことですが、108円くらいからドルを定期的に購入し、金利が上昇したタイミングで償還を31年に合わせて米国債に投資とのこと。
では大事なアドバイスを差し上げます。最も重要なアドバイスは、
「償還を一時期にするのは危険だ」
ということです。「そんなこと言われても資金ニーズがそこにあるからしたかない」という反応が返ってきそうですが、どうぞゆっくりと以下のアドバイスを確認してみてください。危険の理由をたとえで解説するなら、「31年時点のドル為替投機に近い」からです。
31年に資金需要が必ずある、そして絶対に円に換金するという場合、その資金を投資対象資産の一時売却でまかなうことは危険です。ぽんきちさんの投資対象が仮に一般投資家のように株式だとしましょう。相場がその時どうなるかわからないので、きっと株式投資ならしませんよね。
たまたまぽんきちさんの投資対象が米国債と言う安全資産に限定されていて、償還日に償還金額が確定しているから、相対的安全資産と考え投資をされようとしています。でも為替変動のリスクは大きいため投資期間中常にブレークイーブンポイントを意識せざるを得ないと思います。もし31年が接近してきた時点で為替レートがブレークイーブンを下回ってきたらどうでしょう。気が気じゃなくて夜も寝られないかもしれませんよ。
少なくともこのブログのテーマであり私の主張である「ストレスフリーの資産運用からは程遠い投資だ」ということになります。
それでもバッターボックスに立った以上、何回かスイングはしたい、ファールでもしょうがない、というのであればそれを止めることまではしません。その場合のアイデアは後ほど。金利が低いとはいえブレークイーブンポイントは100円を切っているのですから。ちなみにみなさんのためにその計算を示します。単純化のため投資期間は10年とします。
現在の10年債金利は1.6%程度で、このレベルで10年債に投資すると、ブレークイーブンの為替レートは単利で計算すると以下のようになります。
1.6% X 10 年=16%・・・100円に対して累計16円の金利を得られる
そこでブレークイーブンは、
108円-16円=92円・・・ここまで円高になっても金利分で相殺されるから、ブレークイーブンだ、ということです。
これに累積金利16円の源泉分を考慮すると3円程度引かれるので、16円引く3円は13円。
103円-13円=95円
ブレークイーブンはぽんきちさんの書かれている95円程度になります。特に複利の運用が可能なゼロクーポン債ですと10年でも単利とは違いが出ますので、厳密には証券会社の外債投資のサイトにある計算結果を参照してください。円の金利がゼロと仮定すれば、為替レートが95円以下にならない場合にはという限定付きですが、米国債投資に一応勝機はあります。
<大胆なアドバイス>
では、ストレスを感じながらもボールを打ちたいということであれば、以下のような手もあります。大胆な提案ですので、頭の体操用に見てください。
前提条件は資金のほとんどをローンでまかなうのが可能なことです。
かつローンの金利が少なくともドルの長期金利より低いことがよりベターな条件です。この場合、長期とは31年償還の11年ではなく、超長期の30年物、つまり償還は2050年を想定しましょう。
さきほどのブレークイーブンポイントの単純計算を30年物でやってみると、
108円―(2.1% X 30年)=108円―63円=45円
累計金利が63円分にもなるのでブレークイーブンは45円になり、世界はかなり変わって見えますよね。これは長期であるため掛け算が30倍になることと、そもそもの超長期金利が高いことによります。
2031年の建て替え資金ニーズにかかわらず超長期物に投資をするのです。そしてたまたま31年に為替レートや債券相場がかなり有利、つまり途中の売却で相当な利益が出る、あるいは損はしないのであれば売却してローンを早期返済します。もしその時点でたまたまのラッキーがなければローンをそのまま継続します。そして将来の大きなキャピタルゲインを狙いましょう。ドルの元本はこんなに金利が低い2.1%でも1.9倍程度になります。なにより30年の間に日本財政の破綻やインフレが来た時には保険の役割が果たせることになります。
ぽんきちさんとしては上記のアドバイスを元に、どの程度までローンを借りられるか、どの程度までの長期債投資をするか、またローンと自己資金の割合や売却タイミングなどはご自分の将来設計に沿って考え、結論を出していただきたいと思います。できればみなさんの参考のために、およその方針が決まったら教えてください。
以上が私からのアドバイスです。さらにご質問があれば遠慮なくどうぞ。
これに近いアドバイスやシミュレーションについては、次回の著書でも書いてありますので、みなさんも参考にしてみてください。自分年金の作り方に特に多くのページを割いています。
いつもお世話になります。
詳細なお返事をいただき、ありがとうございました。
また方針がきまりましたら、コメントを差し上げます。
新刊楽しみに待ってます。
108+63%で68 =176 1.6倍じゃないんですか?
>ドルの元本はこんなに金利が低い2.1%でも1.9倍程度になります。
2.1%の金利で30年複利運用すると1.9倍になります。
100が190程度になります。
そこまでの計算は単純化のため単利の四則演算で示しましたが、実際にはぽんきちさんはじめ多くの方の運用はゼロクーポン債で複利運用をされますよね。ですので1.9倍となります。
なお、しまさんの書かれている108というのは1ドルの現在の為替レートです。
私のここでの趣旨は、少なくともドルベースでは、100は30年で確実に190になるということです。
円建てでは為替の変動しだいで、どうなるかわかりません。
わかりづらくて、申し訳ありませんでした。
お答えありがとうございました。
いつもお世話になります。
会社の決算業務でバタバタしていたため、
今後の方針については詰めきれていません。
大胆なアドバイスは、やはり虎の子の金で
あるため採用は難しいです。
米国債投資については、割合を下げ、かつ
償還時期の分散化に留意します。
米国債投資が威力を発揮するのは、建替前
よりも建替後のような気がしてます。
というのは、無事建替ができたら、早期に
金融機関からの借入金を返済し、その後は
30年目の大規模修繕、50年目~55年目の
次の建替を見据えて、毎月超長期のトレジャリー
ストリップスに定額で投資するつもりだから
です。その際にも償還時期の分散化には充分
注意します。
>米国債投資については、割合を下げ、かつ償還時期の分散化に留意します。
そうですね。それがよいと思います。
>米国債投資が威力を発揮するのは、建替前よりも建替後のような気がしてます。
というのは、無事建替ができたら、早期に金融機関からの借入金を返済し、その後は
30年目の大規模修繕、50年目~55年目の次の建替を見据えて、毎月超長期のトレジャリーストリップスに定額で投資するつもりだからです。その際にも償還時期の分散化には充分注意します。
超長期債の本来的な運用にかないますね。
こちらも賛成です。
また変化などがあれば、お知らせください。
はじめまして。
ブレークイーブンの計算ですが、本記事では108円から100x16%(63%)を差し引いておられますが、先生の著書の113ページでは108x16%(63%)を差し引く考え方になっておられます。
もちろん計算は単純化されたものと理解しておりますが、どちらの考え方がよりよいか教えていただければ幸いです。
新刊楽しみにしております。
ご質問の件ですが、今回のブログでの計算は、単に10年物米国債金利で稼げる金利の累積により、ドルレートがどこまで低下したらブレーク・イーブンになるかを計算しています。
ところが著書ではそうではありません。11年当時は円建ての日本国債に投資すると10年物でも1,18%の金利を得られました。113ページの30年と10年の比較は、それぞれの年限で得られる日米の金利差でシミュレーションをしています。
つまり金利差の累積と単に10年物米国債で得られる金利だけの比較とでは、考え方も計算方法もまったく異なります。
ではいまは何故日本国債と米国債の金利差を考慮しないのかと申しますと、日本国債を買っても金利はゼロなので無視しました。
とても分かりにくいのですが、要は今回のシミュレーションと著書のシミュレーションは異なる目的を持って異なる計算をしているということです。
日本がゼロ金利であるうちは、今回の計算でよいと思います。
この回答でもわかりづらいかもしれませんね。
であれば、証券会社のサイトにあるブレークイーブンのシミュレーションを利用されるのが一番確かです。
上記<大胆なアドバイス>のシミュレーションで計算結果が大きく違ってしまいましたので質問させていただいた次第です。
この部分について、新刊の中でもご説明いただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。