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バイデンの大きな過ち

2021年05月17日 | バイデンのアメリカ

   パレスチナ人が押し込められているガザ地区にイスラエル軍が空爆し、すでに子供を含む約200人もの命が犠牲になっています。空爆により大きなビルが破壊される様は、信じられない光景です。しかもそのビルの一つはイスラエル側はハマスの拠点だと主張していますが、海外メディアの多くが報道拠点として使用しているビルでした。その空爆を「当然の報復だ」とバイデンアメリカ大統領が言い放ちました。私にとってはまさかの愚かな発言です。何故おろかなのか、

  今回のパレスチナ人の暴動の直接的原因はイスラエル側にあるからです。一つは東エルサレムの居留区にいるパレスチナ人をイスラエルの入植者が強引に締め出そうとする侵略行為。もう一つはエルサレムという中立地帯にあるイスラム寺院への立ち入りを、イスラエルがバリケードで阻止したこと。

  投石とロケット砲という素朴な抵抗に対して、いつものように軍隊の組織だった「空爆で反撃したのは正当な行為だ」と断定したバイデンには驚きます。

 

  私が家内とエルサレムを訪問したのは2011年1月の「アラブの春」の直前、12月の平和な時でした。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地が集まる聖地は、緊張の中にも静かな空気の流れる場所でした。

  そもそもエルサレムという宗教上非常にデリケートな場所は 、1947 年に国連総会がエルサレムを国際管理下に置くと決定し、関係国や各宗教や政治組織はそれに従っていました。その後も国連総会は1980年に安全保障理事会決議478に基づき、聖地エルサレムへの外交使節団の常駐を控えることを呼びかけました。

  この国際的合意をトランプが無視して、17年にエルサレムにアメリカ大使館を移転させるという暴挙に出ました。選挙での得票だけを考える愚かなトランプの選択を、バイデンは元に戻すものだと思っていたのに、いま正反対の行為に出ています。

  国連は現在のガザ地区の状況を憂慮して安保理を緊急開催し非難決議を出そうとしましたが、イスラエルを支持するアメリカの反対により共同決議を出すことができませんでした。

  いったいバイデンは何を考えているのか。選挙中にはパレスチナ支援を表明していたのに、なぜ変身したのか。今さらイスラエルを支持しても、トランプ支持のユダヤ系アメリカ人の支持など得られるはずはないのに。バイデンの決断を世界も疑問視し、身内の民主党議員も反対に回る人が出始めています。トランプのメチャクチャな外交をブリンケン国務長官とのコンビで着々と正常化しつつあったのに、これでは元の木阿弥です。

  ブリンケン自身は両親ともユダヤ系ですが人権擁護派で、トランプ時代からイスラムのロヒンギャの人権を擁護すべきと表明し、就任後も現在のミャンマーの状況はジェノサイドだと主張しています。しかし今回のイスラエル支持ではユダヤの血が騒いだのかもしれません。

  見るに堪えないイスラエルの空爆を放置するバイデンにはあきれるほかありません。

  このバイデンの中東政策をアメリカ国内ではどうとらえているか。現時点では多くの有力メディアは私と同様、パレスチナの人権問題を憂慮したトーンになっています。これによりバイデンの支持率がどうなるかは、もう少し時間を経て世論調査を見る必要がありますが、これ以上バイデン政権がイスラエルを煽らないことを祈ります。

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