「リーマンショックのない単なる原油の暴落など全くこわくない」というのが前回のまとめの言葉でした。しかしその前の回では、
「金利上昇の最大のリスクになるのはこの物価だろう」とも言っています。
正反対のことを言っているようですが、実際には矛盾しているわけではなく、世界経済にとっては「リーマンショックのない単なる原油の暴落など全くこわくない」。しかしアメリカの金利にとっては物価がとても大きな要素だと言っているのです。もちろん両者は連動している部分がありますので原油の暴落の行方もアメリカの金利にとっては大きな要素の一つです。
では私が原油価格の動向をどうみているかです。このお題はもちろん私の力量にはとてもそぐわない大きな問題ですので、参考程度に聞いておいてください。
そもそも10月の商品相場下落の記事で指摘していたように「商品相場は世界経済の動向を先取りする鏡」という側面を持っています。そして商品相場は基本的かつ長期的には実需による需給で決まります。私には50ドル台に沈んだ相場は行きすぎているように思えます。OPECもさすがにあせっているでしょう。ましてやリーマンショック後の40ドル台はもちろん行きすぎです。世界経済はそこまで沈んでなんかいません。
最近は商品相場に賭けるファンドが影響力を持ってきたため、相場を動かす力は無視できません。それが今の相場を形成しているように思えます。しかしファンドは所詮振幅を増大させる要素であって、長期では中立です。株式ファンドとはちょっと違う側面を持っています。というのは、株式ファンドは短期売買を繰り返すタイプもあれば長期で現物を保有するタイプもあるからです。商品ファンドは現物の保有コストが大きすぎるため、ほぼすべてが先物取引で短期決済をします。つまり買ったものは売るし、カラ売ったものは買い戻すのです。長くても3か月とか6か月がタームになります。動かなくなると手仕舞いするのがファンドです。
では今の原油相場のうち実需部分がどれほどで、ファンドやヘッジなどの仮需部分がどれほどか、それはわかりませんしどこまで下げるかもわかりません。先物での建玉は統計が出ているものも一部にはありますが、個別契約でのヘッジなどの統計はないのです。例えばシェールオイルの開発事業者は、大きな賭け事をしている博打うちばかりではありません。彼らも開発コストと販売価格が見合うようにするため、先渡し契約やオプション契約で販売価格をヘッジしています。とても難解なので深くは立ち入りませんが、20日のブルンバーグの大手開発事業者に関する記事では、「15年度の生産量の85%は一定の販売価格帯(上値と下値が限定されるので襟を意味するカラー戦略と呼ばれます)で契約済のため大きな影響はなく、価格の暴落は長くは続かないという見通しも持っている」というものでした。
日本の新聞報道などで言われるシェールオイルの開発コストが平均65ドルくらいだから、それを下回れば事業者の発行するハイイールド債のデフォルトが多発する可能性があるというような記事は、しっかりと開発事業者のヘッジ手段まで読みこんだものとは思えません。ですので割引いて考える必要があるのです。
もう一度基本に立ち返れば、「原油価格下落は消費国経済には大きなメリットで大不況の防波堤だ」とみておいて間違いはないということです。ただし、物価の上昇には足かせになります。それは日本もアメリカも同じです。
では、金利見通しのまとめに入ります。これまで申し上げてきたことをおさらいします。
米国債の需給要因に大きな影響を及ぼす要因と金額を付けられるものは付けますと、
① FRBの買いがストップ(36兆円、金利には大きなプラス)
② 来年なかばにFRBの政策金利上げ開始(金利には大きなプラス)
③ 海外投資家のうち産油国からの買いが減少する可能性があり売りに回ることありうる(ロシア保有分12兆円、OPECなどの保有分31兆円、金利にはプラス)
④ 連邦予算の赤字削減による国債新規供給の減少(10兆円、金利にはマイナス)
⑤ 雇用の順調な増加(金利には大きなプラス)
⑥ 物価の落ち着き(金利には大きなマイナス)
⑦ 世界の中央銀行の政策、日本は緩和継続か増強、中国緩和、欧州緩和策増強見込み(おしなべて金利にはマイナス)
とても大雑把ですが、上記のような要素が上げられます。それぞれの要因の中で特に私が大きいと思っている要素には「大きな」という形容詞を付けました。それは何と言ってもFRBの政策スタンスと雇用そして物価です。
「金利上昇の最大のリスクになるのはこの物価だろう」とも言っています。
正反対のことを言っているようですが、実際には矛盾しているわけではなく、世界経済にとっては「リーマンショックのない単なる原油の暴落など全くこわくない」。しかしアメリカの金利にとっては物価がとても大きな要素だと言っているのです。もちろん両者は連動している部分がありますので原油の暴落の行方もアメリカの金利にとっては大きな要素の一つです。
では私が原油価格の動向をどうみているかです。このお題はもちろん私の力量にはとてもそぐわない大きな問題ですので、参考程度に聞いておいてください。
そもそも10月の商品相場下落の記事で指摘していたように「商品相場は世界経済の動向を先取りする鏡」という側面を持っています。そして商品相場は基本的かつ長期的には実需による需給で決まります。私には50ドル台に沈んだ相場は行きすぎているように思えます。OPECもさすがにあせっているでしょう。ましてやリーマンショック後の40ドル台はもちろん行きすぎです。世界経済はそこまで沈んでなんかいません。
最近は商品相場に賭けるファンドが影響力を持ってきたため、相場を動かす力は無視できません。それが今の相場を形成しているように思えます。しかしファンドは所詮振幅を増大させる要素であって、長期では中立です。株式ファンドとはちょっと違う側面を持っています。というのは、株式ファンドは短期売買を繰り返すタイプもあれば長期で現物を保有するタイプもあるからです。商品ファンドは現物の保有コストが大きすぎるため、ほぼすべてが先物取引で短期決済をします。つまり買ったものは売るし、カラ売ったものは買い戻すのです。長くても3か月とか6か月がタームになります。動かなくなると手仕舞いするのがファンドです。
では今の原油相場のうち実需部分がどれほどで、ファンドやヘッジなどの仮需部分がどれほどか、それはわかりませんしどこまで下げるかもわかりません。先物での建玉は統計が出ているものも一部にはありますが、個別契約でのヘッジなどの統計はないのです。例えばシェールオイルの開発事業者は、大きな賭け事をしている博打うちばかりではありません。彼らも開発コストと販売価格が見合うようにするため、先渡し契約やオプション契約で販売価格をヘッジしています。とても難解なので深くは立ち入りませんが、20日のブルンバーグの大手開発事業者に関する記事では、「15年度の生産量の85%は一定の販売価格帯(上値と下値が限定されるので襟を意味するカラー戦略と呼ばれます)で契約済のため大きな影響はなく、価格の暴落は長くは続かないという見通しも持っている」というものでした。
日本の新聞報道などで言われるシェールオイルの開発コストが平均65ドルくらいだから、それを下回れば事業者の発行するハイイールド債のデフォルトが多発する可能性があるというような記事は、しっかりと開発事業者のヘッジ手段まで読みこんだものとは思えません。ですので割引いて考える必要があるのです。
もう一度基本に立ち返れば、「原油価格下落は消費国経済には大きなメリットで大不況の防波堤だ」とみておいて間違いはないということです。ただし、物価の上昇には足かせになります。それは日本もアメリカも同じです。
では、金利見通しのまとめに入ります。これまで申し上げてきたことをおさらいします。
米国債の需給要因に大きな影響を及ぼす要因と金額を付けられるものは付けますと、
① FRBの買いがストップ(36兆円、金利には大きなプラス)
② 来年なかばにFRBの政策金利上げ開始(金利には大きなプラス)
③ 海外投資家のうち産油国からの買いが減少する可能性があり売りに回ることありうる(ロシア保有分12兆円、OPECなどの保有分31兆円、金利にはプラス)
④ 連邦予算の赤字削減による国債新規供給の減少(10兆円、金利にはマイナス)
⑤ 雇用の順調な増加(金利には大きなプラス)
⑥ 物価の落ち着き(金利には大きなマイナス)
⑦ 世界の中央銀行の政策、日本は緩和継続か増強、中国緩和、欧州緩和策増強見込み(おしなべて金利にはマイナス)
とても大雑把ですが、上記のような要素が上げられます。それぞれの要因の中で特に私が大きいと思っている要素には「大きな」という形容詞を付けました。それは何と言ってもFRBの政策スタンスと雇用そして物価です。
投稿の削除をありがとうございました。つい誤字や脱字を含んだコメントを投稿してしまいます。気を付けます。
金利のお話しを一生懸命に読んでいます。
基本的に10年債、3パーセント越えを辛抱強く待つスタンスですが、時間がかかるようならその間にこの前のような為替の「揺らぎ」があるようなら、円ドルの売り買いをしてみようかな?とも。MMFは来年中は非課税ですし、D和証券は2千万/ショットは為替手数料はかかりませんので…。でも為替を読むのはなかなか難しいものです…ね!
いいえ、実感通り値上がりしています。物価全体の指数はマイナスではなくプラスですから。しかもかなり大きく。
しかし政府目標の2%は消費増税分を引き算します。その上で2%まで「上昇していない」と言っているのです。引いた残りが目標通り「2%にはなっていない」ということです。
我々が払っているのは3%の消費税値上げ分を含んだ税込なので実感も実際も値上がりなのです。
日本は物価が上昇してないことになってますが、
食品や日用品はしっかり値上げされています。
さて、そもそも何の物価が上がってないのかは
意外と知られていません。私もよくわかりません。
生活実感と統計の乖離が激しい感じがします。
アメリカもそれほど物価上昇してませんが、
第3四半期は+5%という素晴らしい経済成長。
日本は2四半期-成長という惨憺たる結果。
何故か日本は経済成長よりも物価そのものが重要視。
そして国債買取の枠を超拡大してしまいました。
こっちが目的だったのでしょう。
これからもみなさんが本当の投資とは、そしてリスクとは何か、しっかり伝えていくつもりです。
それが世の中にまかり通るオレオレ詐欺まがいの投資によって不幸になる人をなくす道だと思っています。学校で教える機会をいただければいつでも喜んで教えます。もちろんボランティアで!
Owlsさんがおっしゃっるとうりですね!ついこの前ねギリシャでのピットコイン騒ぎや今のロシアの取りつけ騒動、そしてブラジルの物価高など所詮、我国日本では起こるはずのない他人事なのでしょう。深々と座り込んだソファーの下から既にキナ臭い煙が出始めているのを感じている国民はそう多くはいません。円の過度な信頼にクワバラ…クワバラ…。
日本人の性質もあるかもしれませんが、
預金が絶対安全だと思うのは、ほとんどの人が
通貨の価値が下がるという経験がないからでしょう。
多少の為替変動はあっても、ここ40年以上は概ね円高傾向。
円の現金を持っていれば自然と購買力が上がってきました。
低金利でも実害がなかったわけです。だから危機感も感じることがなかった。
問題なのはそれが永久じゃないのに、変化に気がつかない人が多いからでしょう。
ロシアなんかは通貨が暴落した記憶がまだ生きているのとは反応が違うのかもしれません。
概算要求で100兆円越え、調整しても97~98兆円と全く身の程に合わない予算を続けるようです。
真面目にやたら貯金をしてしまう国民性が、銀行などの金融機関に国債を潤沢に買う資金を提供して国の借金を増幅させ。
金利が上がらなくても、文句も言わない素直な国民性が、低金利で借金漬けになる現状を招き。
ついには国債金利と言う「温度計を破壊」して超短期金利はマイナス圏。
タダ真面目ではダメなんですね。しっかり勉強をしておかないと。
それに気付かない多くの国民。ちょっと前の私もその一人でした。
中高生には金融の勉強は誰も教えてくれません。これも問題なのかも知れません。
林さんの様な方の存在は、とても貴重です。今後も応援をしております。