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もしトランプが大統領になったら

2016年05月11日 | アメリカアップデート

   私はトランプは大統領にならないと断言していますが、「もしなったらどういう世界が来るのか示唆してほしい」というリクエストが友人から来ました。それを以下にお示ししますが、最初に私はヒラリーの支持者でもないことを言っておきます。

  経済政策・金融政策はどうだとか、外交政策はどうだとかの詳しい項目ごとのヒラリーとトランプの主張分析はその道のアナリストがすでに数多く示していますので、そちらにお任せします。そうした観点とは全く違う観点を私からはお示ししたいと思います。

  トランプがアメリカ大統領になるなど、想像するだに恐ろしい世界ですが、ついでに私が今の世界の政治の趨勢をどう見ているかをお示しするよい機会だと思い、それを披露させていただきます。

  まず名前を羅列しますので、そこからみなさんも私の観点をご想像ください。

  プーチン、習近平、金正恩、エルドアン(トルコ大統領)

これにすでに死亡した

  ベネズエラのチャベス、リビアのカダフィ、イラクのフセイン、死んでいませんがカストロ

  きのう選挙に勝ったフィリピンのトランプと言われるドゥテルテも参加の可能性ありでしょう。

  そうです自己中心の独裁的政権です。私にはそこにアベチャンも参加したがっているように思えるのです。

  プーチン、習近平、金正恩、エルドアン、この4人くらいであれば世界は対処可能ですが、そうした独裁政権の片棒をアメリカ大統領トランプが担ぐという恐ろしい世界がやってきそうだというのが私の見立てです。

  しかも彼は片棒を担ぐどころか、先頭に立ってリードしかねない。プーチンからは早々にトランプに対する期待と支持の言葉が発せられています。

  似た者同士が同盟を結ぶと言えばそうかという程度です。独裁者は簡単には並び立たちませんが、今でも時々この連中が集まっていることがあります。ブッシュが「悪の枢軸」と呼んだ同盟が、より大きく強固に「巨悪の枢軸」となって現れるのでしょう。

  そして私の見通しでは、「アベチャンが加わるかもしれない」。アメリカがあれだけ「やめろ」と言っていたロシア訪問をG7の前に堂々と行い、プーチンに会ってしまうのがアベチャンです。

  ロシアのプーチンは憲法で禁止されている3選を、自分の3度目の就任の間にメドベージェフを差し挟んで実現。しかもその前には4年の任期を6年に変更もしています。憲法の精神は「独裁者を作らないために3連続を禁止している」のに、姑息な手段でかわしてしまったのです。

  トルコのエルドアン大統領は憲法を改悪して大統領権限を強めようとし、首相のダウトオールと衝突。首相は先週遂に辞任を表明。しかも独裁者の典型である言論の自由を強権で弾圧し、ツイッターやフェースブックの停止までも画策しています。

  言論の自由への制限は北朝鮮や中国の専売特許ではありません。ロシアやトルコでも正々堂々弾圧は行われていますし、日本でもNHK会長にアベチャンの息のかかった人間を置き、先日も会長のトンデモ発言に社内は猛反発。加えて高市総務相が放送法での規制を言明して、言論界から猛反発が出ている状況もあります。

  「ホントはひどい日本の言論弾圧」、の客観的証拠を見てみます。1985年にパリで設立された世界のジャーナリストによるNGOである「国境なき記者団」が毎年発表している「世界報道の自由度ランキング」です。いい加減なものではありません。

上位にはまず北欧諸国が並びます。そして一気に下位にいくと、

香港 69位、日本72、ロシア148、トルコ151、中国176、北朝鮮179

最下位はエルトリア 180位

  日本は民主党政権下の2010年では11位にいましたが、アベチャンになって16年にはなんと72位まで下がりました。中国の支配下になって強権による弾圧を受けている香港より下位であるとは、嘆かわしい事態です。

  日本の現状を見ると、別の深刻な問題があります。憲法問題です。憲法はそもそも政権が独裁に走らないために存在するにもかかわらず、アベチャンはまず内閣が憲法解釈を変更するという三権分立の否定というありえない暴挙を実行。その次にはどこから見ても違憲である安保法制を強行採決して施行。立憲民主制を日本から葬っています。このままだと「この選挙は消費税先延ばしを問う選挙だ」と掲げて支持を得、勝てば憲法改正に走るという前回の解散選挙と同じ手口で2匹目のドジョウを狙う可能性があり要注意です。

  繰り返しますが、私は民主党支持者でもなければ、ナイーブな非武装中立論者でもありません。

  独裁政権枢軸だけでなく、ヨーロッパ各国の地方選挙では極右の台頭が著しく、こうした動きが世界の地政学的リスクを増幅させるのは間違いなさそうです。

  日本を含めこうした独裁政権の色彩を帯びた想像するだに恐ろしい世界が来かねない。それが私のトランプ当選後の恐怖のシナリオです。トランプはヒラリーとの1対1の対決では少し角を削ってみせるでしょうが、ひとたび大統領になったら、本性をむき出しにします。

  報道などではもしトランプが大統領になったら、ということで彼の「反グローバリズム、保護主義、金利下げ、低所得層の減税」などがキーワードとして並んでいますが、経済問題などしょせん小さな問題で、独裁政権諸国が自国優先の勝手な政策に走り始め、戦後に営々と築いてきた先進国間での平和と秩序など一夜にして吹っ飛びかねません。そうなると自由主義をベースにした金融市場は大混乱をきたすのは間違いないでしょう。

  とまあ、大げさな言葉を並べたてて恐ろしさを誇張した感はありますが、全く荒唐無稽とは言えない可能性があるのです。

  しかしトランプは勝てないので、アメリカは火種にはならないし、むしろ火消しの側に立つでしょう。

  むしろBREXITのほうが大ごとで、英国が難民問題などを争点にEUから離脱すればEU崩壊の導火線となり瓦解しかねません。そうすると中国のスローダウンとEU崩壊の2本立てとなり、世界の経済や金融市場には大きな脅威になると思われます。

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1 コメント

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日産、三菱の筆頭株主に (シーサイド親父)
2016-05-13 11:21:17
久しぶりにテレビで見るカルロス・ゴーンさんは満面の笑みで若返って見えました。

「ASEAN企業地図」という本の中に、2014年のフィリッピンの自動車販売台数が載っていました。

 トヨタ  105,636台(45.0%)
 三菱   49,297台(21.0%)
 フォード 20.423台(8.7%)
 ISUZU 14.085台(6.0%)
 HONDA 13,381台(5.7%)

フィリッピンはこれからモータリゼーションが起こると予想されていますので、今回の日産と三菱の資本業務提携はグッドタイミングだったと思われます。
これで三菱の販売チャンネルを利用して、将来日産の車を販売することも可能になるでしょう。

新大統領ドゥテルテがやや心配ですが、ASEAN域内ではまだまだ日本企業の底力は強いようです。
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