日本では嵐のような国会騒動がアベチャンの勝利に終わり、一件落着となりました。私はサイバーサロンというところに、以下のような主旨の投稿をしています。
タイトル「安保法制、私は騙されない」
集団安保賛成派の主旨は、「中国や北朝鮮のような脅威が迫っているのに、のんびり憲法談義をしている暇はない」というものです。
私は賛成派の人達に以下の問答を投げかけました。
林;集団的自衛権が発効したら、だれと一緒に日本を守るのか
回答;世界最強のアメリカだ
林;だったら今の日米安保と同じではないのか
回答;・・・・・
どなたからも有効な回答はもらっていません。あるわけもないのです。タイトルである「私は騙されない」の主旨は、迫りくる脅威は日米安保で事足りるし、集団的安保といってもアメリカと協定を結ぶなら同じだ。賛成派は日米安保を忘れて政府の誘導に乗ってしまっている。そんなことに私は騙されたくないのです。
そもそも日米安保は日本一国で国を守る個別的自衛権の行使ではなく、集団的自衛権行使の変形です。「変形」と加えたのは、普通は相互に義務が生じるのですが、日本だけが守ってもらう片務協定だからです。それが、「日本が存続の危機にあるとき」という条件付きながら、今度からはアメリカを守る必要が生じるのです。そのどちらが抑止力として有効かは、判断が付きかねます。
問題は、そのような50歩100歩のことで、日本が法治国家であることを放棄することです。私は法治国家に暮していたい。
どうしても必要なら、日米安保が守っていてくれるのですから、正々堂々憲法をじっくりと見直すべきです。もちろん自衛隊も憲法で認知すべきだと私は思っています。今後憲法学者を中心に違憲訴訟を起こすことにするそうですので、それをじっくり見守りましょう。
さて、バブルとM&Aの話題に戻ります。
前回は保険業界のあきれた横並び海外M&Aを批判しました。一方、もっと笑える買収もあります。横並び買収や高値買収を論評する立場にいるはずの報道機関による買収の件です。世界で大きな批判を受けたのは、日経新聞による英フィナンシャル・タイムズの買収です。
アメリカのブルームバーグ社の記事を引用します。
「日経がFTグループの企業価値を2014年の売上高の約2.5倍(1,600億円)と評価しているのに対し、ワシントン・ポストは売上高を60%下回る価格で(アマゾンの)ベゾス氏に売却 された。FTの買収額はFTの営業利益の35倍に達するが、ベゾス氏が支払ったのは、EBITDA(利払い・ 税金・減価償却・償却控除前利益)の17倍にすぎない。 」
ブルームバーグは二つの指標から日経の買収を相当な割高と批判しています。一つは売上高と価格の比較で日経の買収額はFTの売上の2.5倍、アマゾンのベゾス氏の買収額は0.4倍と6倍の開き。もう一つは営業利益額の倍率で日経は35倍も払い、ベゾス氏は17倍と2倍の開きがある。海外買収をはやし立てる日経新聞が自らも模範を示したようですが(笑)、むしろこれぞ高値買収の見本と世界では笑われているのです。
日経新聞は理由を「FTのデジタル・ビジネスを学びとるため」と説明しています。日本とイギリスにあっては本社や印刷工場やデリバリー・システムを統合して合理化するなどということはできません。デジタル・ビジネスのノウハウに1,600億円も払う必要はあるのか。世界一流のコンサルティング会社に100分の1の16億円も払えば、かなり高度なノウハウくらい簡単に手に入ると思います。この買収、文字通りの「高い授業料を払う」ことになりそうです。
M&Aは失敗ばかりでなく成功例もあり、それにより大きく成長した企業があります。典型例は永守氏率いる日本電産です。優秀な技術を持ちながら経営に失敗した企業を買収し再生する形のM&Aで成長してきました。しかもほとんど失敗がありません。
LIXILはもともとトステム、イナックス、新日軽、サンウエーブの合併企業から出発し、世界的ブランドのグローエやアメリカン・スタンダード社などを買収し、発展してきました。しかしここに来て買収企業が破綻し、今けつまづき中になっています。今後円安下での海外案件は、黙っていても以前の1.5倍の買収額になるので、要注意です。
最後にやはりバブルの足音の例として、どうかと思われることが3つありますので、指摘しておきます。
その1.日本のメガバンクによる海外融資拡大
保険会社と同じく、国内市場の成長性不足を補う目的で、どんどん海外融資をふやしてきました。それも特に新興国に集中しています。その結果がどうなるか、まだ結論には至っていませんが、FRBの引き締めが1年以上前から見えていた中での融資拡大です。
その2.商社のエネルギー開発
すでに失敗と結論が出てしまっています。大手がこぞって海外に巨額の投資を行いました。以前シェールガス・オイルの話の中で、住友商事の巨額損失について指摘しましたが、その他の大手商社も今回のエネルギー価格の暴落で同じ様に深手を負っています。
その3.日本の大都市不動産投資
先週発表された全国地価調査で、都市部の上昇を報道ははやし立てていますが、すでにJ-REITのインデックスが株よりも早くピークを打ち、下落基調に入っています。著書でも指摘しましたが、世田谷のマンションの11階にある私の家の窓から見える都心方面の空はスカスカで、供給力余力は無限です。うちの周りの大きな住宅はどんどん取り壊され、マンションと老人ホームに変わりつつありますが、それとてまだまだいくらでも開発可能です。
以上のようにバブルが各所で散見され、その一部がはじけ始めていることを、今後も注意して見て行きましょう。
次回は、Owlsさんからご指摘のあった日本国債の格下げに関して書く予定です。
このところの企業の海外買収熱や
金融機関の海外融資熱は日本市場が
成長性なんて無いことがわかってたのに
今頃言い出して慌てて対応し出したということなのでしょう。
前もって何故やらんかったのかと(笑)
格付け会社の評価も首を傾げる場合もあるのですが、
S&Pは経済成長ができてないということを指摘する共に、
日銀が出口戦略に移行する時は金利上昇で財政が
悪化するはずだということも格下げ理由にしていたようです。
日銀に出口なんてあるのかと遠回しに指摘してる印象を受けました。
まだ市場は物価が上がらないことばかり注目し、
追加緩和の時期がどうこうなんて話が多いですが、
そろそろ日銀に出口なんてあるのかという話も
出始めてる感じがします。
今回の企業買収については、藤巻さんは以下の見解ですが、如何でしょう
「ちなみに、今年は日本企業による海外企業のM&A(吸収・合併)が続出している。
(中略)
私は、日本企業が「自社を守るために外国企業という外貨資産を買っている」とみる。個々の経営者が、鋭い嗅覚で、円だけを保持する危険性を感じているせいなのではなかろうか?
これほど日本の財政状況が悪いのだ。個人であれ、国であれ、企業であれ保険の意味でドル保有を増やしておくことは、極めて重要だと思う。いざという時に、政府・日銀・民間が今、保有している合計約4.6兆ドル相当の外貨が日本人を守る。危機が顕著になっていない現在、荒唐無稽に聞こえるかもしれないが。」
以上が私が円が少しでも高くなればドル買い介入をして外貨資産を増やせと主張する理由だ。「円が急騰したので、為替安定のために為替介入した」とのエクスキューズが簡単だからだ。ドル売り介入でドルの外貨準備を減らすのは愚の骨頂だ。危機が来たとき、その時の行為を「な~んにも考えていなかった」と大きく非難されるだろう」
以上ですが、林様のご見解は如何でしょうか。
回答;世界最強のアメリカだ
林;だったら今の日米安保と同じではないのか
今の日米安保が将来にわたっても変わらず維持されるという前提であれば、上記ご意見ももっともだと思います。しかし、林先生が「日米の経済情勢が将来にわたっても変わらず維持されるとは思っていらっしゃらない」にも関わらず、日米安保は維持されると考えていらっしゃるのであれば、違和感を感じざるを得ません。
共和党候補のトランプ氏が「安全へのただ乗りは許さない」と言っているようですが、これは必ずしも氏だけの持論ではなく、アメリカ国民の総意であるように感じます。アメリカの流れが変わってきている以上、日本の流れも変えないと、将来の日米安保は崩れていくでしょう。
藤巻さんの国際分散投資の考え方は、もちろんそのとおりだと思います米国債に投資をお薦めしているのもその趣旨からです。そのことは藤巻さんも昔からおっしゃっていました。企業は早くからかなりそうした分散投資を進展させている様子がみられました。
しかし今回私が指摘している一連の金融機関によるM&Aは今年になっていきなり横並びで始まったものです。まるで申し合わせたように。しかもタイミングとしては最悪の株高・円安の時です。売る方は高値での売り抜けですから、ほくそえんでいることでしょう。
逃げる様で申し訳ないのですが、政治議論はこのブログではしないことにしています。理由は数字で説明できる金融経済と違い、泥仕合になるからです。
一方的に林だけが意見表明をしているのはズルイということになるかもしれませんが、日本にこれだけ大きな変化が生じる局面ですので例外的に私の考え方をこれまで何回か述べさせていただきました。
林は金融経済だけではなく、一応政治も関心を持って見ているぞ、という表明でもあります。どうぞご理解ください。
回答有難うございます。
小生、今年になり米国金利UPを想定し、
ドル転を始めました。(米ドルMMF)
来年後半辺りには、米国債を購入したいと考えております。(金利1%UPを想定)
毎回毎回がブログを見る楽しみ且つ勉強させて頂いております。感謝しております。